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ハロウィンの夜に

作者: 神島 葵

彼女できたことない僕が精一杯考えて書いた恋愛短編です。

「ねー!! 明日ハロウィンだよ? 仮装しようよ! どっかいこうよ!」


 そう言いながら前田(まえだ)夏美(なつみ)は俺の肩を掴み左右に振り回してくる。

 思ったよりも力強かったので頭がくらくらする。


「仮装とかめんどい」


 俺、竹下(たけした)夏倉(かぐら)は答える。

 左右に振られるのが辛くなってきたからだ。

 夏美は机の正面に来て俺をじっと見つめる。


「むー! 夏倉(かぐら)って読み方変えたら夏倉(かそう)じゃん? 仮装したくないのかね?」


 意味の分からない理屈と変な語尾を使いなかなか引き下がろうとしない。

 あまり年間行事に興味のない俺はハロウィンで仮装なんて面倒だと思ってしまうのだ。


 キーンコーンカーンコーン。

 昼休みの終了のチャイムが鳴り響く。

 

「ほれ、夏美、自分のクラス帰れよ」

「もー!」

「あ、今日バイトあるから」

「ちぇーだ」


 頬を膨らませ拗ねたそぶりを見せながらしぶしぶ教室を後にする。

 

「教科書とノートだせー」


 5時間目の授業が始まった。

 教科は俺の中では眠たく成る授業トップ3に入る世界史だ。

 

「ハロウィンか……」


 眠たくなるのでさっきのことを考えることにした。

 別に夏美とどこかに行くことが嫌なわけではない。

 仮装をしたくない。

 なぜか俺の中で変なプライドが生まれてしまっていたのだ。

 確かに今年だけは仮装してもいいような気もする。

 なぜなら、来年は大学受験でそんなことしている暇がないからだ。


 ふと夏美の仮装姿を想像してしまった。

 夏美は女子ではかわいい部類に入ると思っている。

 想像でもかわいかった。


「ふふっ!!」

「おい、竹下!! なに一人でニヤニヤしてるんだ? 気持ち悪いぞ?」


 クラス全員に視線が一斉に俺に向けられる。


「すいません。なんでもないです」


 夏美の想像をしたら思わず声が漏れてしまった。

 失敗したなと思いながら机に視線を落とす。

 恐らく恥ずかしさで顔が真っ赤になっているに違いない。


 いつもくっそ眠くなる授業なのに眠くならない。


「やっと終わった。」


 授業が終わると素早く鞄に荷物を詰めバイトに行く準備を整える。

 バイトに向かいながら俺と夏美の関係について話すことにしよう。

 『付き合っている』と思った人もいるかとは思う。

 答えは否だ。

 

 親同士が仲がいいこともあり付き合いが長い夏美にとってはただの幼馴染みだ。

 俺は違う。

 授業中に夏美のことを考えてしまうくらい好きだ。

 気持ち悪い? そう思うなら勝手にそう思ってくれ。

 片思いの形は人それぞれだ。


 心の中では「好きだっ!!」って何回でも叫べるんだが、この長い年月をかけて積み上げてきた夏美との今の関係を壊すのが怖いこともあり思いを伝えられないでいる。


 俺は懐かしそうに微笑む。

 確か夏美を女として見た、好きになったのはあの日から--。

 駅のホームに着いた俺は空を見上げ思い出す。


 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


「やめてよ!」

「うるせーよ!」


 小学3年の俺は砂場に突き飛ばされた。


「俺らに歯向かった罰だ」


 クラスにいたイジメられっ子を庇ったら俺がイジメの標的に切り替わっていた。

 小、中、高、イジメがこの世からなくなる日は来るのだろうか?

 そんなことはまあ置いといて、俺は目に涙を浮かべて砂場の砂を思いっきり握りしめることしかできなかった。

 やり返したらこいつらと同類になると思ったからだ。

 この考えは今もずっと変わらない。

 

「やめなよ!」


 その時、先頭切って俺を助けてくれたのが夏美だ。

 

「なんだよ前田。こんな奴の事庇うのか? さてはこいつのこと好きなのか?」

「そんなのどうでもいいでしょ!」


 否定しなかったことに少し嬉しさを感じたのは今でも覚えている。


「そうよ! イジメてる奴が一番悪い! 最低!」

「調子乗んないじめっ子!」


 夏美と一緒にいた女子も加勢し始める。


「ちっ! 行こうぜ!」


 それ以来、いじめっ子は俺に付きまとわなくなった。

 代わりにいつも夏美がいた。


 夏美は俺のーー、ヒーローなんだ。


 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


「このままでも夏美とは一緒にいられるしな」


 いつもこういう考えにたどり着く。

 いつも安全な道を選んでしまう。


 ちょうど電車も来たので乗り込む。

 電車に乗るとカップルの会話が聞こええきた。


「ハロウィンどうする?」

「お前の家行ってもいい?」

「いいけど。お出かけしないの?」

「二人っきりで過ごしたい」


 彼氏の方が照れ気味に言うと彼女も顔を真っ赤にして頷いた。


「てか、ハロウィンどする~」


 今度は少し離れたところで3人組女子高生が話し始めた。

 俺とは違う高校のようだ。


「3人で仮装して遊び行こうよ。渋谷とか」

「ごめん、うちパス。彼氏と出かける」

「ひゃーいいね。リア充は」

「まーねっ」


 俺はハロウィンという言葉に敏感になっているようだ。

 こんな会話を聞いているうちに最寄りに着いた。

 ここから徒歩10分のところにあるファミレスだ。


「おはようございます」


 挨拶をしてスタッフルームに入る。

 休憩中のスタッフが皆挨拶を返してくれた。


「夏倉~。ハロウィン暇?」

「え?まだ予定はないかな」

「そうか!明日のハロウィンさ、バイトの高2仲間で遊び行こうぜ」


 いきなりだったので予定はないと言ってしまった。

 いや、ないのは本当なんだが……。

 そう話かけてきたのは他校の高2、西岡(にしおか)(つばさ)だ。

 とにかくリーダーの素質たっぷりって感じの奴だ。

 

「わかった」

「夏美ちゃんはいいの?」


 聞いてきたのは翼と同じ高校の2年、浅沼(あさぬま)(あかね)だ。

 セミロングの髪の長さで、元気な女子だ。

 

「あーやっぱ保留」

「ひゅーひゅー」


 茜は肩をツンツンつついてきた。


「りょーかい、あと二人にも連絡入れとく」

「おっけー」

「これたら来てな」

「すまん」


 ここのバイトのタメは俺含めて5人だ。


「じゃーそろそろ行きますか」

「おう」


 3人でフロアに出た。

「いらしゃいませ!何名様でいらっしゃいますか?」

「4人」

「4名様ですね。こちらえどうぞ」


 今日淡々と仕事をこなしていく。


「はあ~疲れた~」


 22時バイトが終了した。


「おつかれっ!!」


 バシッ!!っと同じ時間に上がりの茜に背中を叩かれた。

 茜はニッ!っと笑い見てきた。


「あー夏倉。着替えたら待っててよ」

「へーい」


 更衣室に入ろうとする茜に返事をする。

 俺も更衣室に入り着替える。

 壁一枚挟んで茜が着替えているのかと変態の領域に足を踏み入れそうな想像をしてしまったので慌てて頭を左右に振って振り払う。

 着替えが終わり勝手口で待っていると茜が出てきた。

 俺の家はここから徒歩10分なのだが茜は電車に乗って帰るので駅まで送っている。

 ハロウィンのイルミネーションで彩られた駅前をゆっくり歩く。


「ねー夏倉は夏美ちゃんに告白しないの?」


 唐突に茜が聞いてきた。


「んー、どうだろう。好きだけど勇気が出ないんだ。怖いんだ今の、今まで積み上げてきた関係が壊れるのが。今のままでも一緒にいてくれるし……」

「そっか。もしさ、夏美ちゃんに彼氏できたらどうする?」

「え?」


 今まで考えたこともなかった。

 夏美がいない日常ーー考えられない!

 そう思った。


「夏倉は応援できる?」

「嫌かも、嫌だ。辛い」

「ふふ、そうとう夏美のこと好きなんだね」


 なんか茜の雰囲気がいつもと違うような気がした。


「私も今辛いんだ」

「え?なんで?」


 茜は真っすぐに俺を見つめてくる。

 そして、ゆっくり手を伸ばし俺の服の裾を掴んだ。


「私じゃさ、ダメかな」

「え?」


 さっきから「え?」っとしか言っていない気がする。

 告白、されたのだろう。

 生まれて初めて。

 俺の頭が追い付いていかない。


「私、夏倉が好き。私と付き合ってくれないかな」

「俺はーー。」


 茜はいい奴で嫌いではない。

 でも、俺の中にいつもいるのはーー。


「茜、ごめん。俺はやっぱり夏美しか考えられない」


 茜の真剣な告白に真剣な口調で返事をする。

 茜は一旦後ろを向き、大きく深呼吸してから俺の方を向き直した。

 そして、いつもの、いや、無理して作っている笑顔で言う。


「私ってずるいな……。隙あらば夏倉を取ろうとしちゃうなんて。」

「そんなことないよ」

「ありがとう!スッキリした!わかってたんだけど気持ち抑えられなかった!ごめん!」


 俺は今の茜にかけてあげられる言葉が見つからなかった。


「今日は送ってくれるのここまででいいや。これからもバイト仲間としてよろしく!おやすみ!」


 そう言い終わると俺の返事を待たずに改札の方へ走っていった。

 茜は勇気を振り絞って思いを伝えてくれた。

 俺は何もしないわけにはいかなくなった。


ーー夏美に思いを伝えよう。


 そう心に刻んだ。


「ただいまー!」


 俺はいろいろ考えているうちに家に着いた。


「夏倉、今日スマホ家に忘れて行ったでしょ?夏美ちゃんから電話あったわよー」

「なんて言ってた?」

「夏倉いないならいいって」

「あんがと」


 そう母に告げると急いで自分の部屋がある2階に向かった。

 真っ先にスマホを開く。

 夏美からのlineが100件も溜まっていた。

 びっくりして開く。


「全部スタンプじゃねーか!」


 急用だと思って急いだ自分が馬鹿馬鹿しくなった。

 無造作に一番下までスクロールする。

 すると、最後は文が送られていた。


『私、彼氏できた!!』


 雷が落ちたような衝撃が俺を襲う。

 心の中で焦りと不安が募っていく。

 着信時間を見るとほんの10分前だった。


『は?嘘だろ?』


 夏美が俺をからかっているのだと願いながら送信ボタンを押す。

 手が少し震えていた。


 送信してから3時間。

 あまりにも遅い。

 もう寝てしまったのだろうか。

 頭の中での思考が止まらない。


 結局、明日聞くということにして眠りについた。

 正確には頭が疲れすぎて寝ないわけにはいかなかった。


 朝、昨日考えたせいなのか寝起きが悪い。

 ゆっくり体を起こし、時間を見る。


「寝坊じゃん!!」


 時間を見て間に合うか間に合わないかの瀬戸際の時間で焦り、大急ぎで支度をする。

 1階に降りるともう誰もいない。


「起こしていってくれよ」


 そう嘆き準備を再開する。

 テレビがついていて今日の運勢がやっていた。


『今日、最も運勢がいいのはてんびん座のあなた!ラッキーアイテムは猫耳です!続いてごめんなさい。今日もっとも運勢が悪いのはおうし座のあなた。そんなあなたのラッキーアイテムは黒マントです!今日も良い1日をお過ごしください!』


 夏美が1位で俺が12位かとテレビを消して悔しがりながら家を出た。

 駅に着いたが電車のドアが目の前で閉まって行ってしまった。

 

「はあ、はあ、流石今日の運勢最下位……当たってんじゃん……」


 そう呟き、おとなしく次の電車を待つことにした。

 ホームルームは間に合わないが、1時間目にはなんとか間に合いそうだ。

 スマホを取り出し夏美から連絡が来ているか確かめる。

 来ていない。


 心配になった俺は学校に着くと真っ先に夏美のクラスに行った。

 しかし、今日は来ていないと夏美のクラスメートの告げられた。


『大丈夫か?家行こうか?』


 そう送って1時間目の授業を受け始めた。

 1時間、2時間、3時間と時間は過ぎていくがいっこうに連絡はない。

 そう思った昼休みの終わりまじかににやっと返信が来た。


『会いたくない』


 その一言だけ。

 何時間も待ってそれだけ。

 流石の俺もイライラした。


『勝手にしろ』


 そう送り付け。

 その流れで翼に今日行くと連絡した。


 放課後、集合は翼の家だった。

 

「おー夏倉来たか!」


 そう言いながら招き入れてくれた。


「お前んち金持ちだったんか」


 大きな家にあっけにとられた。


「夏倉!おっす!」


 元気に声をかけてきた。

 茜だ。

 辛いはずなのに気を使わせないよう振舞っている。

 俺もそれを見習って普通にした。


「おう!茜!」


 茜は微笑んだ。


「あと2人は遅れてくるからまあくつろいでくれ、仮装グッツあるから2人が来た時驚かそうぜ!」


 そう言うと茜にかぼちゃの被り物、俺に黒いマントを配った。

 

「どう?」


 俺は黒いマントを着て2人に聞く。

 2人とも微妙な反応をしやがった。


「そういえばさ」


 そう切り出し、茜もいたが相談せずにはいられなかったから相談した。

 

「え?夏美、彼氏できたの?」

「わからんがそう送られてきた。返信もクソ遅いし、何時間も待たせて『会いたくない』だぜ」

「いや、おかしくないか。彼氏できてそんな夏倉の事拒絶するわけないよ」


 確かに、そういわれればそうだ。


「じゃあ、なんで?」

「夏倉がなんかしたとしか……」


 翼はお手上げですって感じで言った。


「まさか……」


 茜が呟いた。


「早く夏美ちゃん家行って!」

「なんで?」

「たぶん、昨日駅に夏美ちゃん居たの。夏倉には夏美ちゃんのこと写真でしか見せてもらってなかったから昨日は確信はできなかったんだけど今確信した!だから、早く行って!」

「俺はーー。」

「夏倉?もう自分の心に蓋するなよ。自分のしたいようにしてみたらいいんじゃないのか?」

「そうだな」


 二人に背中を押されて夏倉は黒マントを着たまま翼の家を飛び出した。


「行っちゃったな。よかったのか?これで」

「いいの。好きな人には幸せになってほしいもの」

「やっぱお前いい奴だな。俺が好きになっただけはある」

「……!!はあっ!!」


 茜は顔を真っ赤ににして声を上げた。

 翼は意地悪そうに、茜の方を向いて微笑んだ。


 そのころ、夏倉はもう夏美の家のすぐそこまで来ていた。


 なんて言えば、どう行動すればいろいろ頭を巡っていったがそんなの夏美に会ったらわかるはずと吹っ切れたように走っていく。


「着いたぞ」


 夏美の部屋のベランダまで登る方法を幼馴染みの俺だけが知っている。

 庭に植えてある木をうまく登り夏美の部屋の窓の前まで来た。


「夏美!来たぞ!」

「……会いたくないって……いったじゃん」


 夏美の声が震えているのがわかる。


「俺にはお前しかいないんだ。好きなんだ。お前と一緒にいたいだから……」

「私も!!」


 ガラガラといきなり窓が開く。

 目の下が赤くなっている。

 なぜか猫耳を付けている。


「なんで猫耳?あっ!」


 夏美も俺の黒マントを見てピンときたらしい。

 数秒、笑いをこらえながら見つめあい、我慢できずに同時に噴き出す。


「くくくく」

「ふふふふ」


 やっぱり、夏美しかいないと思った。


「てか、なんで私が仮装しよっていったときは拒否してたのに今仮装してるわけ?」

「これは……」


 笑ってごまかす

 俺はてっきりまた拗ねたふりをするのかと思っていたが違った。


「ハロウィン出来ちゃったね!」


 今まで見てきた中で一番輝いた笑顔でそう言われた。


「あー夏倉、顔赤いぞー!さては、私に照れたな!」

「ちっ違うしっ」

「またまたあー」

「てか、部屋入れてくれ寒い」

「はいはい」


 そんなこんなで俺らは無事思いを伝えあうことができた。


 さて、皆さんはどんなハロウィンを過ごしているだろうか。


 皆さんが良いハロウィンを過ごせたことを願ってーー。


『Happy Halloween!!』

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