表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

二月五日

               二月五日


 今日は、日記を書くまいと思っていた。

 だが、どうしても記しておきたいことができ、今、筆を取っている。

 

 午前九時四十分。二月四日までの日記を読み終えた私は、コンビニの駐車場にきていた。

 最後に、どうしてもここを見ておきたくなったのだ。

 駐車場には誰もいなかった。当然、未来の姿もそこにはなかった。

 だが、いつも未来が座っていた車止めの前に、小さな箱がひとつ置いてあるのを見つけた。

 私は、その箱を開けた。

 懐中電灯の光で中を確かめると、丸いチョコレートケーキが入っていた。

 上面に、ホワイトチョコで何やら文字も書いてある。

 私は、注意深くそれを読んだ。

『おじさん おたんじょうび おめでとう みく』

 未来から私への、バースデーケーキだ。

 私は、ケーキを丁寧に箱に戻すと、家に持ち帰った。


 家に着き、再び箱からケーキを取り出した。

 おや? 箱の底に手紙が入っている。コンビニでは暗くて気づかなかったのだ。

 未来からの手紙は、以下のように綴られていた。


『 おじさんへ

 この手紙がおじさんの所に届くのか不安だけど、読んでくれると信じて書いています。

 猫たちは、とっても元気です。ミーもクーも元気ですが、おじさんが一番元気です。それに、おじさんが一番甘えん坊です。ずっとお母さん猫の近くにいて、離れようとしません。

 お母さん猫は、お家につれてきたら、何でも食べるようになりました。何故、あの時は食べてくれなかったのか不思議だけど、それがあったからおじさんと出会えたんだし、まぁいいかな、と思っています。

 病院を出てたった二週間でしたが、私は、たくさんの初めてを経験しました。

 初めて外の風を受けて、初めて道路を歩いて、初めて猫に触って、そして、初めてのお友だちができて……。

 まるで夢の中にいるような毎日でした。

 あ、そうだ。ケーキを作ったのも初めてです。

 ママと二人で、「おいしくな~れ」って言いながら作りました。

 おじさんのおかげで、私は、ケーキを食べることができました。

 本当に、ありがとう。

 私が初めて作ったケーキ、おじさんも食べてみてください。

 もし、月が落ちてこなかったその時は、またお話ししましょう。いつものあのコンビニで、猫たちと一緒に待っています。

 最後に、私の初めてのお友だち、おじさんへ。

 お誕生日、おめでとう!

                                未来 』


 未来からの手紙を読んだ後、私は数年振りにケーキを食べた。

 もっと甘ったるい味を想像していたが、決してそんなことはなかった。いつの間にか、食わず嫌いになっていたのかも知れない。


 現在の時刻は、十一時。

 これから私は、睡眠導入薬を飲み、眠りにつこうと思っている。

 だが、死を迎えるために眠るのではない。再び目を覚ました時のために、英気を養おうと眠るのだ。

 日記を読み返さなければ、こんな心境になることはなかっただろう。

 今、私の心は、凪ぐ海の如く穏やかだ。

 私には、まだやりたいことが山ほどある。

 飯尾君と仕事がしたいし、卵と牛乳をくれた酪農経営者の夫婦にお礼もしたい。

 そして、たとえ月の衝突が間近に迫っていても、命あることを喜び、精一杯生きるのだと教えてくれた未来に、もう一度会って「ありがとう」と言いたい。

 

 願わくは、明日もこの日記に、変わることなく文章が刻まれていることを……。

 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。直井 倖之進です。

 本人が、純文学のつもりで書いた純文学。本当は、純文学とは呼べないものなのかも知れない純文学。いかがでしたでしょうか?

 私が、純文学を書くようになったきっかけは、今から10年以上前。まだ、小学校の教壇に立っていたころのことです。

 当時、何となくパソコンに向かい、何となく完成させた短編小説。何となく小説賞に応募してみたところ、最終選考候補作となりました。

 それは、私が生まれて初めて書いた小説。その時のジャンルが、純文学だったのです。

 「おや? これはひょっとしたら、そのうちに受賞なんてことになるかも」そんな妄想に近い淡い期待を胸に、私はその後も純文学を書き続けました。

 そして、その中で誕生したのが、この度読んでいただいた『ムーン・インパクト ~月が落ちる日~』です。

 結局、『ムーン・インパクト』もその他の作品も、現在に至るまで受賞を逃しております。

 しかしながら、私に小説を書く面白さを教えてくれた、生涯の趣味を与えてくれた、それだけでも純文学には感謝しているのです。

 これからも、折を見ては純文学を書いていくつもりです。

 さて、次の作品ですが、ジャンルは大きく変わって“ハイファンタジー”。タイトルは『魔界への誘い』です。この最終話を投稿後、『魔界への誘い』のプロローグを載せますので、そちらもよろしくお願いいたします。

 なお、Seesaaさんでブログも書いており、そちらでは小説の更新情報や日々の生活を綴っております。マイページにURLを記しておきましたので、よろしければご覧ください。

 それでは、次作『魔界への誘い』でお目にかかれることを楽しみに、失礼いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ