プロローグ
初めまして、直井 倖之進と申します。前作の『指切り』からお越しいただいた方は、今作もよろしくお願いいたします。
プロローグ
最後のテレビ放送は、実に素っ気ないものだった。
「日本時間の二月五日、午前十一時三十六分。皆さんもご存知のとおり、月が地球に衝突します。人類の生存率は、ゼロパーセント。つまり、絶望的な状況下にあると言えます。しかし、私は、皆さんと奇跡的な再会ができると信じて疑いません。五日後の二月六日、東の空から昇る朝日を、共に見ようではありませんか。それまで皆さんとは、一旦、お別れです。長らくのご視聴、誠にありがとうございました」
アナウンサーのこの言葉を最後に、テレビの映像は、それが消えているのと同じ状態、真っ暗になった。
そして、今日。その二月五日を迎えた。奇しくも、私の三十五回目の誕生日である。
これで地球も終わりなのかと思うとまんじりともせず、私は、夜通し書斎に籠もって日記に目を通していた。文字が書けるようになってから、作家として生計を立てている現在まで、一日も欠かさず自分の生活を綴ってきた私の人生録とでもいうべきものだ。
今年の一月三十一日までを読み終え、二月一日のページを開くと、私は一度大きく伸びをした。それから、机の引き出しを開けてピルケースを取り出した。ケースの中身は、この日のために知人の薬剤師から貰っておいた強力な睡眠導入薬だ。これを飲めば、三十分以内に深い眠りへと誘われるのだそうだ。
私は、室内の壁掛け時計に目をやった。時刻は、午前九時だ。
「まだ薬を飲むには早いな」そう思った私は、ピルケースを引き出しに戻し、再び日記に目を落とした。
この作品、途中での切り方が難しく1話が長くなったり短くなったりするかと思います。申し訳ありません。




