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セイクリッド・クロニクル4  作者: スタジオぽこたん
第二章 獅子の金十字
8/16

  3


 六大凶殺のセーフハウスで暮らす、マリアの母シルヴィアに挨拶を済ませたレキとマリアは、次に、オリヴィエ侯爵家へ伺った。

 アリオストロと、その恋人であるアンナ嬢が出迎えてくれて、婚約した事や、受勲式の事など、色々と話す事は沢山あった。

 そして、『最後』に訪れたのは、貴族街の東区画に居を構える大きな邸宅だ。

 どこか懐かしさを感じる古い屋敷の主こそが、ニーベルゲン騎士団の団長として知られる《鋼の聖女》フィーネの住まいだ。

 英雄として名高い彼女は、ストラトベル伯爵家の当主も務めており、レキの獅子勲章授与にあたりその身分の保証をしてくれた。

「ここが……母さんの……」

 レキは胸の痛みを抑え、屋敷の門の前に立つ。

 そう。ストラトベル伯爵家は、レキの母アンジェリカの実家であった。

「レキ君……」 

「大丈夫です。行きましょうマリアさん」

 レキとマリアは手をつなぎ、伯爵家の門をくぐった。

 二人を出迎えたのは、家令の老紳士だ。 

「フィーネ様は、現在急な用向きで外出中です。すぐに戻られますので、しばらく応接間にてお待ち下さい」

 レキとマリアは家令に案内された応接間に入り――

 そこで、信じられない『相手』と出会う事となった。

「……………え」

 レキは小さく息を呑んだ。

 部屋にいたのは、美貌の女性。

 揺らめく炎のような炎髪を腰まで伸ばし、慈愛に満ちた緋色の瞳は世界をあまねく照らし出す太陽のように輝く。

 清楚でありながら、淑女としての品格を感じさせる桜色のドレス纏う姿は、レキの記憶の中にある『人物』と一致した。

 だが、

「そんな、そんな……馬鹿な……」

 レキはまるで亡霊を見るかのような真っ青な表情で、片手で顔を覆う。

 花瓶に白い花弁のセラスの花を活けていた女性は、部屋を訪れた来客に顔を上げ、

「――――レキなの?」

 レキの姿を見てとった瞬間、手に持っていた一輪の花を床に落とした。

「ッ」

 女性の声に、レキはビクリと身体を震わせて後ずさりする。  

「レキ! 会いたかったわレキッ!」

 女性は目尻に涙を浮かべると、レキに駆け寄りそのまま抱きしめた。

「ああ、もっとよく顔を見せて、私の可愛いレキ!」

 両手で頬を挟まれ、見つめ合う二人。

「――――か、母さん……なのか?」 

 レキは呆然と呟いた。

 心は違うと告げている。

 だが、目の前の女性は、記憶の中にある母と確かに重なるのだ。

 〝火の一族〟として、特徴的な炎髪も、緋色の瞳もさることながら、その身体から感じる匂いまでが全く同じだなんて事があるだろうか?

「ええ、そうよ。お母さんよ。しばらく見ない間に大きくなったわね、レキ……」

 いいや、違う。

 母は、自分の目の前で八つ裂きにされた。

 八つ裂きにされたのだ。

 バラバラになった母の身体から遺品を探し、血と臓物にまみれた指輪を――指ごと拾い上げたのだ。

 どれだけ似ていようが、この女性は母ではない。

 母を語る偽物だ。

 死者を騙るなど許せない。許せるはずがない。

 そう思っているのに、レキの怒りは湿った薪のように火が付かず、ただ、力なく立ちつくす事しか出来なかった。

 そして、レキの頬には――

「フィーネ! いい加減にして下さい! 悪ふざけが過ぎますよ!!」

 雷鳴の如くマリアの怒声が響いた。

「うふふ、どうかしら? どうかしら? アンジェリカに似ていたでしょうレキ君? って、あら……?」

 レキの母に変装していたフィーネは、悪戯が成功した童女のようにぺろりと舌を出しながら、レキから身体を離す。

 だが、そこで見たのは、治りかけていた心の傷を深く抉られ、辛くて、悲しくて、絶望にポロポロと涙をこぼす少年の姿であった。

「も、もしかして、私……やらかした?」

「当たり前です! フィーネのバカ! 無神経!!」

「ど、どうしよう?」

「どうするんですかっ!?」

 マリアとフィーネは言い争いながら、レキの周りでオロオロするしかなかった。


  ◇


「本当に、ごめんなさいっ!」

 白と青が基調のニーベルゲン騎士団の制服に着替えたフィーネは、向かいのソファーに座った状態で頭を下げた。

 五十年前の戦争で、瘴魔の呪いによって不老となったフィーネは、今も若かりし頃のままの姿を保ってはいるが、ジョセフやアナスタシアと同年代である、

「いえ……」

 と、レキはいうが、その視線は完全にフィーネから外れていた。

「まだ、怒ってるわよね……?」

「別に気にしてませんから」

 レキはそっぽを向いたまま答えた。

「うう、どうするのよ。マリアのせいで、レキくんを怒らせちゃったじゃない……」

「誰がどう見たってフィーネ一人の責任です! そこに直りなさい、部下としてせめてもの情けです。私が成敗して差し上げます」

 洒落にならない冗談でレキを傷付けたフィーネに対し、マリアは冷たい。 

「そ、そりゃ……私だって悪いとは思ってるわ。でも、レキくんだって悪いのよ? 全然挨拶に来ないんだもの。身分を隠しているのは知っていたから、こちらからは何も出来ないし……凄く、歯痒かったのよ?」

 フィーネは指と指をモジモジしながら呟いた。

 拗ねたようにそっぽを向いていたレキだが、フィーネの言葉を聞くうちに、バツが悪そうに頬をかく。

「それは……悪いと思っています。でも、僕の正体が知られたら、母の実家であるストラトベル伯爵家に、いらぬ迷惑をかけると思っていたので……」

 皇帝暗殺を企んだと濡れ衣を着せられ、帝国から落ちのびたばかりの頃は、身辺整理もままならず、身分を隠して暮らすしかなかった。 

「迷惑だなんて思うわけないじゃない。レキくんは忘れているかもしれないけれど、アンジェリカはお乳の出が悪かったから、私が変わりにお乳を上げたんだから。オムツだって何度も変えたのよ?」

 呪いの影響なのか、老いる事がなくとも、子が成せないフィーネは、とても母性の強い女性であった。

 それは自らが作り上げた『騎士団』にも表れている。

 ニーベルゲン騎士団に所属する者の多くは、戦争や災害などで寄る辺を失い、愛する人をなくした者達だ。

 フィーネはそんな子供達を、称号の有無に関係なく引き取り、戦う術と、生きる術を教え、心の傷が癒えて一人で羽ばたけるようになるまで生活を共にする。

 この五十年。フィーネはそうやって多くの子供達を育て、多くの乙女たちを巣立たせて来た。

 《称士戦争》での英雄的な活躍ばかりが取り立たされるが、ニーベルンゲン騎士団は本来、フィーネという偉大な母が守る弱き者達の砦であった。

「そう、だったんですか……?」

 レキは照れるように俯き、、マリアはもっと聞かせて下さいとばかりに瞳を輝かせた。

「アンジェリカに負けないくらい、私も、レキくんを、我が子のように愛しているわ。だから、ようやく挨拶に来るって聞いた時は凄く嬉しくて、久々にアンジェリカの部屋に入ったの。レキくんにあの子の遺品を譲ろうと思って」

「何がどう間違えて、レキ君のお母様に変装する事になったというのです?」

 と、マリアが困惑気味に尋ねた。

「クローゼットの中に懐かしいドレスがあったのよ。まだアンジェリカが幼い頃、私のドレスを欲しがった事があってね。十五歳の誕生日にプレゼントしてあげたわ。余程嬉しかったのでしょう。アンジェリカは週末になればそのドレスを着て出かけ、そして、あの日……ユリウスと出会ったの」

 フィーネは当時を思い出しているのだろうか、遠い目で壁にかけられたドレスを見やる。

「大切なドレスだからこそ置いていったのかしら? 聞きたくてもアンジェリカはもういない。だから、久々にそのドレスに袖を通してみたの。そしたら、鏡の向こうにアンジェリカがいるじゃない? ふふ、駄目ね。死者の幻影を追ってはいけないとわかっているのに、つい懐かしくなっちゃって、もっと似せられないかやっている内にレキくん達が来ちゃったのよ」

 多くの子供達を育てて来た聖母は、その愛情の深さゆえに、多くの悲しみを背負っていた。

「フィーネ……」

 フィーネが初めて見せる弱さに、マリアは胸を押さえた。

 母を亡くし、父を亡くし、復讐の鬼となったマリアを、騎士団に受け入れて、今日まで導いてくれたのはフィーネである。

「本当にごめんなさい、レキくん」

 と、フィーネはもう一度、頭を下げた。

「もう、怒ってません。それに謝るのは僕も同じです。挨拶が遅れてすみませんでした。それと、その……」

 レキはギュッと拳を握ると、羞恥を堪えて、

「――――た、ただいま……」

 と、小さな声だったが、しっかりとフィーネの目を見て言った。

 フィーネは一瞬、大きく目を見開くと、頬を紅潮させ、瞳に涙を浮かべながら、

「はい、おかえりなさい!」

 心の底から嬉しそうに、微笑むのだった。

 それからレキとマリアの二人は、フィーネと沢山の事を話し、クリサリス王家の成り立ちから滅亡までを聞き、そして、自分達が婚約した事を伝えた。

「ええ!? あなた達、本当に婚約したの!?」

 レキとマリアは声を揃えて「はい」と答え、お互いの手をしっかりと握り合う。

 フィーネは心底驚いたという風に、ぽふっとソファーに持たれると、

「長旅から息子が帰って来たと思ったら、お嫁さんを連れて来た……って感じね。あれ、マリアも私の娘みたいなものだし、むむ、お母さんは複雑だわ」

「これからは、ちゃんと帰って来るようにします」

「ええ、レキ君の言う通り。これからは一緒に帰ってきます」

 レキとマリアは見つめ合い、頬を赤く染める。

「ふふ、見せつけてくれちゃって。でも、おめでとう二人とも。これから辛い事も、苦しい事も沢山あるでしょう。けれど、その何倍もの幸せがあなた達を待っているわ。困った時はいつでも私達を頼りなさい」

「ありがとうございます」

 と、レキとマリアは頭を下げる。

 これで一通りの挨拶は済んだのだが、レキは一つだけフィーネに尋ねたい事があった。

「フィーネ様、一つお聞きしたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」

「あら、そんな他人行儀な呼び方はよして。そうね……お母さんか、ママが、いいわ」

「え……いや、それは……」

 確かにフィーネは、レキにとって第二の母とも言うべき人だろう。

 だが、頭でそうわかっていて素直にそう呼べるほど、簡単なものではない。

 と、

「だ、駄目ですフィーネ! レキ君のそういうのも『全部』、私のなんですから!」 

 マリアは嫉妬も露わに、レキをむぎゅっと抱きしめる。

「あらあら、マリアも随分と変わったのね。そんなに独占欲の強い子じゃなかったのに。うふふ、愛しの彼には常に自分を見ていて欲しいかぁ。甘い乙女心ね~♪」

「う~っ……」

 マリアは警戒する狼のように、レキを抱きしめ唸る。

 肉体が若いと精神も若いのだろう。

 フィーネはマリアの恋が、自分の事のように楽しい様子だ。  

「それで聞きたい事とはなにかしら?」 

「はい、フィーネ様は、『ラト家』という家名に覚えはありませんか?」

 レキがそう問うた瞬間、これまでニコニコと笑みを絶やさなかったフィーネの表情が、一気に殺気立つ。

「どこで、それを?」

 レキはヴェロニカとのこれまでの経緯を、自分が知りうる限り全ての情報を、フィーネに聞かせ伝えた。

「そう。百年の時を経ても、まだあの家は……」

「何か知っている事があれば、教えてください。今は少しでも情報が欲しい」

 フィーネは立ち上がると、戸棚の中にある金庫から何かを取り出すと、再びソファーに戻って来た。

 テーブルの上に、金庫から取り出した『布に包まれた品』を置いたフィーネは、

「クリサリス王家はとても古い一族だと聞かされているわ。その血脈は、五百年に邪神を倒した英雄の末裔だとも云われているの。ラト家は、そんなクリサリス王家を守護して来た近衛の一族だった。常に王のそばに控え、命を懸けて王を守る忠義の家。でも――」

「彼らは裏切った」

「ええ、そう。百年前に起きたクリサリスとカルネギアとの戦争で、ラト家はあろうことか王を裏切り、その首と共に帝国へ寝返った。こうして、ラト家は史上最低の裏切りの一族として、歴史の闇に消えたわ。ここまではレキくんが、ヴェロニカという子から聞いた話と同じよね?」

「はい」

「ここからはストラトベル伯爵家に残る口伝よ。レキくん。あなたはストラトベル伯爵家の正統なる後継者であるがゆえに、これを聞く事を許します。マリア、あなたも妻となる者としてよく聞きなさい」

 フィーネの言葉に、レキとマリアは神妙の面持ちで頷いた。

「百年前、セイントアークに落ちのびたクリサリス王家の姫は、一人の護衛の騎士を連れていた。彼の名は残されてはいないけれど、彼の騎士はこれから異国の地で、伏して生きていくクリサリスの姫にこう言い残した」


『我らはこれより、王の最後の命令に従い地に潜ります。裏切りの汚名をかけられ、決して誰にも誇れぬ戦いであろうとも、我々は必ず、必ずや姫の元に、クリサリスの栄光を取り戻してみせます。例え何百年かかろうとも、この血にかけて必ず――』


 フィーネはテーブルに置かれた布を開く。

 その中には、流麗な細工が施された鞘に収められた、一本の短剣があった。

「これは?」

「それはストラトベル伯爵家の家宝であり、代々の当主が受け継いできた短剣です。姫との別れ際に、騎士の男が差し出した『誓いの証』だと云われているわ」

 レキはテーブルの上に置かれたアンティークな短剣を手に取って見る。

「抜いてみて」

「――――ッ!? この紋章は!」 

 短剣を抜いたレキは、その鍔元に刻まれた『紋章』を見て驚愕に呻いた。

 隣に座るマリアもまた、小さく息を呑む。

 レキはその紋章に見覚えがあった。

 いや、見覚えなどという生易しいレベルではない。

 この紋章を背負い、この紋章を胸に、レキはこの三年間仲間と共に戦って来たのだ。

「六つの刃が絡み合う紋章。これは間違いなく……僕達〝六大凶殺〟の紋章です。ですが、どうして百年前の騎士がこれを?」

「その紋章こそが、ラト家の家紋なのよ」

「!?」

 レキが真に驚愕したのは、この瞬間だった。

 点と点が線で繋がり、一筋の光明が見えた。

 だが、真実にたどり着くには、まだ幾つもの矛盾を乗り越えねばならない。

 パズルのピースはいまだ欠けたままであった。

「私は今日まで、この話を百年前の騎士が、滅びた国の姫に語った優しい嘘だと思っていたわ。憐れな姫に、生きる希望を与えるためだけに吐かれた優しい嘘だと。いつの日にか必ず栄光を――そんな願いが叶うはずはない。これまで何百という国が滅び、何百という国が新たに生まれて来たもの。でも、今日……レキくんの口からラト家の話を聞いて、私は確信したわ」 

「確信ですか?」

「ええ、百年前の誓いは、決して優しい嘘ではなかったと」

「…………」

「もちろん真実は誰にも分らない。この百年の間に、崇高なる願いは別のものへと変わってしまったかもしれない。人の心はうつろい行くものだわ。目的のための手段が、手段のための目的に変わるのは往々にしてある事よ。だから、なにが真実かは、あなた自身の目で確かめなさい」

「迷った時は『槍』に聞け……ですね?」

 レキがそう言うと、フィーネはきょとんとした顔でマリアを見やる。

 マリアは、「えっへん」という顔で誇らしげに胸を張った。

「ふふ、素敵よ。あたな達ならどんな試練だって乗り越えられる。頑張りなさい。未来は、あなた達が作るのだから」

 フィーネの言葉に、レキとマリアはコクリと頷く。

「フィーネ様、これを」

 レキは懐から、木で作られた小箱を取り出した。

「これは?」

「母の形見です。きちんとした埋葬をして上げたくて、これまで保管していました」

 小箱を開けると、中には二つに割れた『エンゲージリング』があった。

「そう。アンジェリカの……」

 フィーネは小箱を大事に両手で包むと、胸にギュッと抱きしめ「おかえりなさい」と呟いた。


   ◇


 アーデンブルグ中央霊園。

 王都にある大きな霊園は、多くの樹木に包まれた美しい景観の墓地で、歴代の王族や貴族を始め、優れた功績をおさめた偉人、賢人から、偉大な英雄などが祀られている。

 赤い煉瓦が美しいアーケードから中に入れば、戦乙女の石像が出迎えてくれる。

 石像の足元には色とりどりの献花が供えられていた。

 霊園は平和記念公園を中心に、八つのブロックにわけられている。

 その一画に、ストラトベル伯爵家の墓石があった。

 母アンジェリカの指輪をフィーネに渡したところ、レキとマリアはこの場所へと案内された。

 そして、

「ここに父さんが……」

 フィーネの口から、父ユリウスが、この墓に眠っている事を教えられたのだ。

 《黒騎士》ユリウスの遺体は秘密裏に回収され、火葬の後にストラトベル伯爵家が責任をもって預かる事となったらしい。

「さあ、レキくん。アンジェリカをユリウスと一緒に眠らせて上げて」

 墓石の下にある納骨棺が開かれると、そこは純白の遺灰が敷き詰められていた。ここにレキが持ち帰ったアンジェリカの指輪を埋葬する事になったのだ。 

「……母さん。父さんが待っていてくれたよ。もう、寂しくないよ」

 レキは灰の上に、ソッと指輪を置いた。

 いずれ一緒の墓に。

 ユリウスとアンジェリカは最愛の息子に見守られながら、今ここに再会を果たしたのだ。

 これでもう二度と、永遠に離れる事はない。

「ぐすっ……」

 マリアが泣いている。フィーネもまたその頬を濡らしていた。

 そして、レキの瞳からも涙がこぼれ落ちる。

「父さん母さん。僕にも好きな人が、愛する人が出来たんだ。僕はその人と共に、これからの生を歩む事に決めたよ。長い別れになるだろう。でも、いつかまた会える日が来る。どうかその時まで、僕達を見守っていて下さい」  

 と、その時。

 何処からともなく二羽の蒼い鳥が現れ、レキ達の周囲を羽ばたくと墓石の上にとまった。

 二羽は番いの夫婦なのだろう。

 仲睦まじい様子で互いの羽を擦りあわせると、飛び立ち、再びレキ達の周囲を羽ばたいたのち――空の彼方へ消えていった。

 セイントアークでは、蒼い鳥は死者の生まれ変わりだと云われており、レキとマリアとフィーネは、いつまでも鳥が去った空を見上げるのであった。


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