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現れる巨壁

 妖精郷までは馬車で一週間ほどかかる距離にある。

 元々人が寄り付かないような森の中にあるために距離も相当だ。

 しかし、緊急事態な為にそんな悠長にしているわけにはいかない。

 そこで今回はかなり疲れるが、俺達は飛行魔法によって移動した。

 俺一人で四人を運ぶのはさすがに無理だ。だが、今回はアティシアがいる。

 俺と同じく旧人類であるアティシアも飛行魔法を習得していたために、比較的楽に運ぶことができた。

 何故か皆、俺の方に掴まりたがった為に少し揉めたが、一番体重の軽いセリスをアティシアに持ってもらい、俺は残りの二人を持ち上げながら移動をした。

 そんなこんなで、馬車で一週間の道のりを二日で移動し、俺達はいよいよ妖精の里に足を踏み入れることになった。


「四年ぶり、か」


 久々に訪れた妖精の森は以前とはまるで雰囲気が違っていた。

 というのは、動物たちの気配がまるでないのだ。

 そればかりか神秘的な気配。これは精霊の存在も大きいのだが、その気配さえも今はしない。

 するのは物々しい雰囲気、ピリピリした緊張感だ。

 まさに一瞬即発の様相を呈していた。

 なるほど、どうやらそのゴーレムとやらにこの森も相当荒らされているらしい。

 里に入るとミューリは期待のまなざしと歓喜で迎えられた。

 あともう少し来るのが遅ければミューリを待たずに里を捨てなければらならなかったと道行くエルフ達が言っていた。

 なるほど、これは緊急事態だわ。飛行魔法で飛んできたのは正解だったようだ。

 そして、俺達への態度はと言えば、やはり警戒されていた。

 俺を知っているエルフはいただろうが、なんといっても今回は俺には連れがいる。警戒をしない方が無理というものだろう。

 元々エルフは自尊心が強い種族だ。他の種族、それも最も毛嫌いしている人類に助けを求めるのは恥と思っているのだろう。

 怪我をしているエルフもいた(おそらくはゴーレムと戦って敗れた戦士だろう)そのエルフ達の俺達を見つめる視線はいうなれば、敵国に救援を求めなければならなかった敗残兵のようだった。


「ごめんね。助けに来てもらったのに」


 ミューリは申し訳なさそうに俺達に謝った。


「構わんさ」


 元々エルフ達がこれほど人間を嫌うのは俺達旧人類の過ちをただ伝えて嫌悪している向きが強い。

 そういう意味では俺としても付いてきたクレアやセリスにまでこんな視線にさらしてしまうのは若干気が引けてしまう。

 アティシアもそれは理解しているだろう。ミューリに微笑みかけ「気にしないでください」と告げた。

 さて、最長老の家に到着した俺達は早速中に入った。

 最長老と七人の長老達は俺達が来るとザッと立ち上がった。

 若いミューリはさすがに緊張した声で到着を伝える。


「長老様方。スティーグを連れてまいりました」

「おお、ミューリ。よくぞ使命を成し遂げた。そして・・・」


 最長老が俺の方を向く。そして、全員が俺の前に膝をついた。

 んん?


「お越しいただき感謝する。古の王よ」


 おお? どうなってるんだこりゃ・・・


「ええ、古の、王?」


 ミューリも困惑して俺を見つめた。


「精霊達からすべてを聞きました。あなた様がこの世界に来た理由も、あの時傷ついていた訳も、何をなし、我々すべての生命を救ってくれたことも、なにもかもを」


 あー、そうか。精霊達が喋ったか。彼等には寿命がないからな。過去の事も知っているし俺の事も当然知っている。


「そして、今回もこうして我々の危機に」

「なあ、やめてくれ最長老」


 これ以上続けようとする最長老の言葉を俺は遮る。


「これは俺達旧人類の罪だ。俺はそれを償うために来ただけなんだ。むしろ一歩間違えばこの世界は滅んでいただろう。俺こそ命を救ってもらって感謝している」


 最長老は首を振る。


「過去。凶悪な存在を封じた例は星の数ほどあるでしょうが、その責任を果たすためにすべてを投げ打って未来までやってきた例はない。あなたの行いは、とても尊い」


 長老たちは更に深く頭を下げる。

 まいったね。どうもこういうのは慣れていない。背中がムズムズするぜ。

 アティシアが何やらスイッチが入ってしまったようで目元が赤い。どうも俺が感謝されたことがうれしいらしい。

 一人、状況がわからないミューリは困惑していた。


「ど、どういう事なのー!」




*****


「一万二千年前に栄えた人類の王様!」


 簡単に概要を伝えるとミューリはひどく驚いた。まあ、驚くわな。


「じゃあ、スティーグって私よりもおじいちゃんなんだ」

「ちがうわ。俺は時の扉を渡ってきたんだ。まだぴちぴちの二十歳だぞ」

「ふーん。なるほどー。んーでもイメージが、うーん。王様かー」


 ミューリはうんうんと唸り始めた。

 まあ、これであまり態度は変えないでほしいがな。そういうのは苦手だ。

 だが、里の住人の態度は変わった。最長老が最大限の敬意をもって接するようにと言明したからだ。

 敵視されるよりはましだが、こうも態度が変わると落ち着かない。

 今は俺達に用意された家でくつろいでいた。

 ミューリの家では俺達が寝泊まりするには少し手狭だったために用意された空き家だ。

 今日は旅の疲れを取ってもらって、明日にはゴーレムが最後に出現した場所まで行くことになっていた。

 そういえば、気になることがあったな。


「なあ、精霊の森はどうなっている? 精霊達は?」

「ああ・・・」


 ミューリは少し悲しそうに言う。


「多くの精霊達が姿を隠してしまったわ。ここは精霊達が穏やかに過ごせる世界でも数少ない場所なのに」

「そうか」


 精霊達の為にもそのゴーレムをさっさと倒さないとな。

 と、その時扉が叩かれエルフの一人が家に飛び込んできた。


「き、来た! ゴーレムがここにやってきたぞ!」

『!?』


 ついにここまで来たか。

 少し予定が早まったがさっさとケリをつけてしまおうか。

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