教え子4人
「滅茶苦茶です!!」
理事長室で校長は理事であるベネデットに詰め寄ると開口一番で叫んだ。
「こちらに何の相談もなく始業式の最中に特別クラスのメンバーを発表し、しかもよりによって!!」
握りしめた拳を宙で振りながら校長は叫ぶ。
「選抜理由が容姿ですぞ。容姿!! 他の生徒に示しがつきません」
「いやはや。困ったものですな」
ベネデットはハンカチを額に当てて弱り果てていた。
最初からやってくれた。何か仕出かすと思っていたがいきなり。それも肝心要の選抜メンバーをこんな方法で決めてしまうとは。
「しかしですな。どのように選ぶかはスティーグ先生に一任してしまっていますので」
「取りやめてもらいましょう。いえ、あの男の教師としての赴任自体を取りやめるべきです」
もっともだ。本来であればこんなことは常識では許されない。しかし、あの男は常識の外の存在なのだ。
「しばらく様子を見ます」
「理事長!?」
「私は、いえ、この国はずっとあの男がほしかったのです。教師という形であれ、彼をようやく手に入れた。そう易々と手放すことはできないんですよ」
「ぐ、む」
スティーグの戦歴は校長もよくわかっている。問題児であることも。しかし、しかし。それを認めてしまっていいのか?
「もしかしたら、あの四人をしっかり教育する可能性もあります。様子を観ましょう」
あまりにも不安なスタートに二人は頭を抱えてしまった。
「それで、あの四人の経歴を見せていただけますか?」
「あ、はい。こちらにあります」
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四人の美少女は廊下を歩き、特別闘技場を目指していた。
この闘技場は本来であれば、大きな大会や催しの時に使われるものだが、普段はほとんど使われていないので、此度スティーグ特別クラスの教室として使われることになったのだ。
ピンク色の髪も少女が口を開く
「特別クラスって何するんだろう? 楽しみだね」
彼女の名はクレア。
座学の成績はトップ。真面目で品行方正。所属クラスの委員長。実家は武器屋をしている。身分は平民。いつかは自分も家業を継ごうと考えているが、そのために騎士や冒険者の気持ちを知りたいと学園に入学。現在16歳。満17歳。
金髪の少女が反対意見を言う。
「そもそも特別クラスってなんですの? それにあんな形で指を指されて決めるなんて。なんだが随分といい加減じゃありませんこと?」
彼女の名はシャルロッテ・フォン・シュタイン。
座学。実技どちらも学年の五指に入る優等生。正義感が強く、生真面目な性格。家は有力名門貴族。自他共に認めるお嬢様。いずれは騎士魔法使いとして軍に所属を考えている。現在で17歳。
青髪の少女が同調する。
「スティーグ先生って強いけど、人格に問題があるってい噂っすよね」
彼女の名はステラ。
成績は学年で中くらい。両親は冒険者であるため自分も漠然と冒険者になるんじゃないかなーっと思っている。流され易い今時の女の子。今年で16歳。
最後に黒髪の子が無言でうなずく。
彼女の名はセリス。
成績は下から数えた方が早い。あまり喋らず、他人とのコミニュケーションを取るのが得意ではない。両親は小さな教会の牧師。めざすは冒険者。現在15歳。満16歳。
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「上級生の二人はともかく、下級生の二人は・・・」
お世辞にも特別クラスに向いているとは言えない。というか、上級生が容姿端麗で本当に良かったと思うベネデットと校長であった。
「とにかく、一先ず様子見ですな。進捗が見られないようであれば、メンバーの変更を要求しましょう」
しかし、二人は後に思い知らされる。
この四人が世界を救う救世主となるということに。
しかし、それはまだ先の話。