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それはいつかの物語2

「お、お、お、王様~!!」


 ステアが大声を上げて立ち上がった。


「スティーグ先生って王様だったんですか?」


 クレアが口に手を当てた。

 一同信じがたいといった表情で固まっていた。

 逆にアティシアとしては兄が王として君臨していたのは当たり前のことだったので、ここまで驚かれると地味にショックである。


「あなたがさきほど、『人を導く』仕事をしているといったのはそういう意味ですか」


 シルフィーは納得して様に頷いた。

 スティーグが王ならば国民を導く立場になる訳だ。

 シルフィーはある程度自分の中で納得したようであるが、彼女のスティーグに対する尊敬度はかなり高い。

 それに比べてステラは年の近い兄貴分としてのイメージが強いためにあっさりとは納得できないのだ。

 シャルロッテが頭を掻きむしる。


「ちょ、ちょっと待ってください。先生が王様というのも驚きですが、一万二千年前? なんですかその数字は? 人類が文明を築いたのは二、三千年前と歴史で習いましたわ」

「そう。今の歴史ではそうなっているわね。でも、遺跡をよく調査してみるとわかるわ。明らかに風化の度合いの違う遺跡がいくつかあることに。私たちのムー王朝は今よりも遥かに優れた技術を持っていたのよ」


 ミラは首を傾げる。


「い、一応あたし、ここの学園じゃないけど、学校の卒業資格持ってるんだけど、そんな文明の話は聞いたことがないわ」

「そうでしょうね。遥か古代に栄えた忘れられた文明。人類は優れた魔道技術によって、空を飛びまわる乗り物を作り、ついには月にまで到達した。そんな話、信じられないでしょ?」


『つ、月』


 一同唾を飲み込む。

 アティシアの言っていることが真実なのか、ちょっとセンスのない冗談なのか。それすらも彼女達は分からなかった。


「今の人類を新人類とするなら私達は旧人類と言ったところでしょうか。ただ、旧人類の方が身体能力は発達していたのかもしれませんが」

「なるほど、先生の力の秘密が明らかに」


 セリスは謎はすべて解けたとばかりに頷いた。

 が、アティシアは首を振る。


「兄はその中でも特別です。私もそうですが、当時の王族は才能が傑出していましたから」

「つまり、アティシアさんやスティーグ先生は特別中の特別?」

「じ、自分でそう言ってしまうと恥ずかしいですが、客観的に見てその通りです」


 アティシアは髪をくるくると巻きながらそっぽを向いて答えた。少し照れているらしい。


「まだ謎は残ってるわ。じゃあ、二人は一万二千歳以上? それは旧人類だから?」


 ミラは肝心な部分にメスを入れる。

 質問したミラも本当に二人が一万二千歳だとは思っていない。

 スティーグは自分は二十歳だと言っていた。ミラはそれを信じている。

 ここにいるはずのない二人。今ならスティーグがアティシアを見て驚いた理由も何となく理解できる。ここにいることがあり得ない二人が今ここにいる。


「では、それをお話ししましょうか」




******


「一万二千年か・・・」


 俺の話を聞き、アドルフは何とコメントしたらよいか困っている様子だった。

 まあ、目の前にいる人間が実は一万二千年前の旧人類だと言われてもコメントに困るだろう。


「で、そのお前が何故ここにいる?」

「信じるのか?」

「疑う理由がない。嘘にしては突拍子がなさすぎる」

「あっそ。その当時の技術はすごかったんだぜ。他の種族、魔族を含めてエルフだのドワーフだの他の一族の秀でた所を全部取り入れてそれを改良し凌駕した」

「それほどの!」


 現在では魔力では魔族やエルフ、技術ではドワーフが秀でている。

 そのすべてを凌駕しうる一族、それがまさか人類とは。


「まあ、それじゃあ、もちっと深く話していこうか」

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