シルフィー対アティシア
「私と手合わせ、ですか?」
「ええ、是非」
アティシアはニコリと笑ってシルフィーを見つめる。
しかし、目は笑っていない。
「ちょ、ちょっとあなた。先生の妹さんだがなんだか知りませんが、いきなり授業中に」
シャルロッテが止めに入るが、シルフィーがそれを阻止する。
「いいでしょう。私もさっきあなたに抜かれたのが気になっていましたから」
「ふふ。嬉しいわ」
シルフィーが俺の方を向く。許可がほしい、ということだろう。
俺は頭を掻きつつため息をつく。
「好きにすれば?」
「先生! そんな投げやりな」
シャルロッテが噛みついた。
「あれは言い出したら聞かないんだ。つーか。ここにいる奴らは言い出したら聞かないのばっかりじゃねーか。好きにさせろ」
シャルロッテはそう言われると唇を尖らせながら渋々と下がった。
クレアもステアもセリスも二人を興味深げに見守る。
「お兄様、合図を」
「んー、じゃあ始め」
俺の気のない掛け声とは裏腹に二人から緊張感があふれ出す。
「せぃ!」
最初に仕掛けてのはシルフィー。
得意の突きを繰り出す。
アティシアはそれを躱し、そのまま懐へ、一瞬驚いたシルフィーであるが、すぐに腕を縮こませてこれを阻止する。
一旦距離を取ろうとするシルフィーだがアティシアはこれを逃がさない。追撃する。
それをシルフィーは連続突きで突き放す。
これでは間合いを詰められないと感じたのかアティシアは一旦距離を取った。
「ほぉ」
俺は感嘆の声を上げた。
あのアティシアがねぇ。昔、共に稽古に励んだ仲だが成長したのは体だけではないようだ。
「やりますね」
「ええ、あなたも」
二人はお互いに笑いあう。
それも一瞬の事、二人はまた再び激突する。
速さ、力、技、そのすべてが高水準で装備されているのがシルフィーだ。
速さのみではステアが上、力ではクレアやセリスが上だろうが、バランスは一番優れている。
恐らく、アティシアがシルフィーを選んだ理由はそこのある。
アティシアもシルフィーに近いバランス型。
二人のスタイルは非常に噛み合っている。
二人はそれから何度となく切り結ぶ。
二人の剣戟は華麗さがあった。
いつからか皆その二人の戦いに見入っていた。
「では、これはどうです! 百花繚乱!!」
「これは!」
ここで出すか。
シルフィーが開発した必殺技。百花繚乱。
得意の刺突を何度となく繰り出す超連続突き。
いわばステアのちょっぱや切りの突きバージョン。
並みの技量の持ち主であれば串刺しだ。しかし。
「まさか、お兄様は命力まで授けているとは驚きました。しかし、命力にはこういった使い方もありますよ」
アティシアは連続突きをすべて躱している。
俺ですらステアのちょっぱや切りをすべて躱し切ることはできず、いくつか受けながら捌いた。
それと同等の突きをすべて躱すとは。
それを可能にするのはアティシアの目だ。
「目に命力を!」
アティシアは目に命力を集めることでとんでもない動体視力を実現させていた。
それでもその目に体がついていくのは大したものだ。
「そこ!」
アティシアは突きの一つを選んで上に跳ね除ける。
そのまま懐に入り、勝負あったと思った時。
シルフィーもまたさらに一歩踏み出した。
アティシアの剣の根元を胴に受けたが、一番ダメージの少ない止め方だ。
そのまま細身の剣をアティシアの首のそばに置いた。
「それまで!」
俺の掛け声で二人は剣を下げた。
「やりますね。大丈夫ですか?」
「ええ、当たる瞬間あなたが力を緩めてくれましたから」
それがなければ反撃は難しかったとシルフィーは言う。
二人はお互いを認めると互いに握手を交わしたのだった。




