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動揺する生徒達

 西側ゲートの通路に出た。

 この闘技場は円形状になっているので、この通路を回りこめば東側のゲートからベンチに出られる。

 一応目標としてはぐるりと回って東側ベンチからダーウィンスレイブを回収したい。

 簡単にエリザベートがそれを許すとは思わないが。


「どこに行くんだい? まだまだ遊び足りないよぉ」


 現状では絶対的強者であるエリザベートが背後に迫る。




*****


 スティーグが絶体絶命のピンチを迎えていた頃、特別クラスの生徒達は帰路についていた。

 敬愛する教師のピンチなどまるで考えもしていない彼女らだったが、前方から動きやすい恰好をしたシャルロッテが現れたことで、事態は急変する。


「あら、皆さん。訓練は終わりましたの?」

「え、シャルロッテさん?」


 いつものランニングスタイルで現れたシャルロッテに一同は驚きを露わにした。


「え、あれ? さっきまで闘技場にいたよね?」

「はい?」


 シャルロッテは居残りでスティーグに指導してもらっているはずだった。

 それが何故自分達よりも早く、別方向から現れるのか?


「何を言っていますの? 今日はわたくしは先生に言われて、遠出のランニングをしていたんですのよ?」


『はい?』


 今度は特別クラスの面々が眉をひそめ、疑問を口にした。

 シャルロッテが何を言っているのかわからなかった。

 それはそうだろう。つい先程まで彼女も一緒になって訓練をしていたのだ。

 それが、今日一日遠出をしていたなどと信じられるはずもなかった。


「えーと、シャルロッテ先輩。それは冗談ですよね。あんまり面白くないっすけど」

「先生は何も言っていませんでしたの? ステラさん」

「先生が?」


 更に一同は混乱してきた。


「わたくし先生に言われたんですわ。今日は俺が護ってやるから。こほん、俺が護ってやるから! 大事なことなので二回言いましたわ。先生が護ってくれるのでわたくしは皆さんと離れてランニングしていたのです」

「せ、先生はあたし達とずっと一緒でしたよ!」

「・・・はい?」


 お互いに全く話がかみ合わない。何がどうなっているのか。

 シルフィーの提案で、まずはお互いの今日の一日の出来事を話すことになった。

 まず、シャルロッテは朝一番で、スティーグに呼び出され、一人遠出のランニングメニューをこなすように言われたという。

 狙われている現状で単独行動はいかがなものかと訝しんだシャルロッテだったが、『俺が護ってやる』の一言に舞い上がり、一人ランニングに出かけたというのだ。

 だが、スティーグは今日一日、他の特別クラスの生徒達と一緒になって特別クラスの闘技場にいたのだから護れるわけがない。

 その事をシャルロッテに話すと彼女はひどく驚いた顔をした。


「そ、そんな。護ってくれるって言いましたのに・・・」

「そもそも、この状況で先生が私達に単独行動をさせるとは思えませんが」


 シルフィーのツッコみにシャルロッテは押し黙る。

 シャルロッテも少しおかしいと思ってはいたのだ。しかし、『俺が護ってやる』の一言に舞い上がってしまって、周りが見えていなかった。

 セリスは顔色を変えた。


「先生の偽物?」

「そんな! わたくしが先生を見間違えるなどあり得ませんわ!」


 確かにその通りだ。ここにいる特別クラスの五人が、スティーグを見間違えるなどあり得ない。

 しかし、しかしだ。

 クレアはひどく真面目な顔でつぶやく。


「さっきまで闘技場にいたシャルロッテさんはどうみてもシャルロッテさんだった」


 そう、先程まで一緒にいたシャルロッテはどうみても自分達がよく知るシャルロッテだった。

 確かにぎこちない行動をしていたとも今になって思えばそうだったとも思えるが、姿形は間違いなくシャルロッテ本人だったのだ。


「なんだか、すごく嫌な予感がする」

「戻りましょう! 特別クラスへ」


 クレアとシルフィーに促され、全員が頷く。

 自分達の教師であるスティーグが絶体絶命であることを彼女達はまだ知らない。

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