表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/520

必死の抵抗

 俺はエリザベートに向かって手をかざした。


「体が動かなくても、お前なんぞ、魔法で、一発だ」

「やってみな?」


 まさか?

 俺はいつものように魔法を使おうとするが、全く発現しない。

 普段ならば念じるだけで、すぐさま発現できるのだが、魔力を自然界につなげるための回路が完全に切断されてしまっているような感覚に襲われた。


「ああ、ちなみにあのクッキーにはしびれ薬を、お茶には魔封じの秘薬を入れておいたよ」


 やってくれた。

 シャルロッテの姿をしていたので全く警戒していなかった。

 変身魔法なんて存在自体、想定範囲の外だったわけだし、今さら後悔しても遅いのだが、今から思うと間抜けすぎる。

 俺は更に念じる。

 もっと初級の、簡単な魔法だけでも発現できないか?

 頭が焼切れるほどに強く念じて、それはついに発現した。


 ぽっ。


 ろうそくに火が灯るくらいの小さな炎だった。


「!! 魔法が 発現しただと」


 それでもエリザベートは驚愕した。

 魔封じの秘薬を飲んでいるのだから、大きかろうと小さかろうと発現事態しないと思っていたようだ。俺には無条件で精霊が力を貸してくれる。まあ、自分で蛇口を捻るのと、誰かに頼んで捻ってもらうようなものだ。それでも少数の精霊しか呼びかけられないが。

 このままこいつが警戒して出直してくれればいいのだが。


「・・・ふ。それでもそれくらいの魔法が関の山のようだね。脅かしやがって」


 そううまくはいかないか。


「どう、かな。油断してると、火傷する、ぜ?」

「強がりを!」


 再び、エリザベートはナイフを投擲する。

 先ほどと同じように転がって回避するが。


「甘いよ!」


 それを読んでその先にも投擲してきた。

 体を横にして模造剣を盾代わりにするが、浅く当たってしまった。


「がっ」

「くく。惨めだね。体も動かせず、魔法も子供が使うような初歩的な物しか使えない。最強の魔人も随分落ちぶれたもんだ」

「大きな、お世話、だ」


 なんとかこいつの後ろにあるベンチからダーウィンスレイブを取りに行きたい。

 あれがあればこいつ一人屠ることなど容易いのだが。

 俺の視線に気づいたのか、さっと後ろを振り返るエリザベート。助っ人が来たとでも思ったか。


「なんだい? あ、そうそう。あの剣だな」


 やばい、気づかれた。なんてマヌケだ、焦りで視線を送っちまった。


「知っているよ。あの剣が大戦の時にどれほどの猛威を振るっていたか。あんたを片づけた後に持って帰らせてもらうよ」


 大収穫とばかりに笑うエリザベートだが、それは無理だ。

 あの剣を使えるのは世界でただ一人、俺だけだ。他の人間が使ってもそれはただの剣でしかない。あるいは持ち上げる事すらできないかもしれない。

 教えてやる義理はないがな。

 しかし、気づかれた以上、今の状態でこいつの後ろに回りこむのは難しい。いよいよ進退窮まったか?


「行かせないよお。そんな状態でもあの剣を握られたら厄介だから、ね!」


 更にナイフと投擲してくる。

 風の結界を試みるが、うっすらと薄い膜のようなものしか張ることができない、あっさりと貫通し、俺にナイフが迫る。


「ぐ」


 数本は模造剣で防いだが、肩に一本当たってしまった。


「ハハハ! 愉快。最高のサンドバックだよ!」


 エリザベートは腰からダガーを引き抜いた。


「簡単に殺しはしないよ。じわじわとい痛ぶってやる。イザベラの仇!」


 エリザベートが斬りこんでくる。

 よし、なんとかここで。

 俺はあえて状態を崩し、エリザベートが斬り込みやすい場所を作ってやる。

 うまく誘いに乗って突きを放つエリザベート。

 狙いは左脇。ギリギリで何とか躱す。少し浅く脇腹が切られたが、気にしている余裕はない。俺は突き出された右手を腕と脇で挟み込んだ。


「な!」


 驚愕するエリザベートを余所に、俺は腕に力を込める。体は思うように動かず、力もあまり入らないが、それでも世間一般の常人にしてみれば十分な力のはずだ。腕を固定し、俺は右手をエリザベートの首へと伸ばす。ここで首を掴むことができればチェックだ。


「う、うおおおおおおおおおおおおおお!!」


 死にもの狂いで蹴りを放ったエリザベートに吹き飛ばされて、惜しくも首を掴むことを逃した。

 だが、無理やり引き抜いた右腕にはそれなりのダメージを与えたはず。


「はあはあはあ! こ、この死にぞこないが」

「残念」


 俺はべろりと舌を出す。これでこいつは無理に近接に攻めてくることはないだろう。今ので決められなかったのは痛いな。接近戦に活路を見出したかったんだが。

 吹き飛ばされた拍子に俺は西側ゲートの辺りにいることに気づいた。

 相手が動揺しているうちに俺は足を引きづりながら、西門ゲートをくぐって、競技場から撤退する。


「はん。どこに逃げようってんだい? 逃がすとでも?」


 走ればすぐに追いつくだろうに、エリザベートはあえてゆっくりと俺を追ってくるようだ。

 やはり先ほどの攻撃で警戒しているのか?

 なら、少しでも長く付き合ってもらうぜ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ