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共同生活の日常

「――ティーグ、スティーグ。起きて」


 むぅん。誰かが俺を起こそうとしている。

 眠い。俺の体感ではまだ起きるような時間じゃないはずだ。

 眠い。まだ寝ていたい。

 俺はゆさゆさと揺らす何者かを払おうと手を伸ばした。

 ぽよん。


「あん!」


 ん? 何かに当たった。払うことに成功したか。


「あ、あんたは~。何するのよ!」


 バキ!


「ぐぉ!」


 何者かが俺の顔を強打した。

 さすがに飛び起きる。


「敵襲か!」

「きゃあ!」


 ゴチン!


 目の前に星が飛んだ。額と額がごつっと当たった。


「つ~っ。み、ミラ。お前何するんだ!」

「こっちのセリフよ!」


 ミラは額を押さえながらこちらを睨みつけた。

 何でこいつが俺の部屋にいるんだ?


「あたしはただあなたを起こしに来ただけなのよ。それが、へ、変なところを触られて、おでこを思いっきりぶつけられて、いい迷惑よ」

「変なところってどこだよ?」

「っ! 知らない!」


 なんなんだよ一体。

 俺は時計に目をやった。午前の七時丁度だった。まだ俺が起きるには早い時間だ。

 俺は再び布団をかぶり二度寝を決行することにした。


「ちょ、ちょっと。せっかく起こしたんだから寝ないでよ」


 ミラは慌てて俺の睡眠を妨害しようとする。ええい、うるさい。俺は寝たいのだ。

 と、そこにドタドタと足音が聞こえてきた。

 乱暴にドアが開かれ、数人が俺の部屋になだれ込んできた。


「ああ、今日はミラさんに先を越された!」


 ステラを先頭に、クレア、シャルロッテ、シルフィーの順に俺の部屋に入ってくる。


「あ、あなた達」

「抜け駆けは狡いっすよ。ミラさん」

「抜け駆けなんて、いいのよあなた達は。スティーグのお世話はあたしがするんだから」

「いえ、そんなそんな。一つ屋根の下にいる時くらいはあたしが」

「何を言っていますのステラさん。ここはわたくしの家なのですから。スティーグ先生のお世話は当然わたくしがするんですわ」


 ステラの意見をシャルロッテが遮る。ええい、やかましいやつらめ。

 シャルロッテの屋敷に緊急で越してきて一週間。毎日がこんな感じだった。

 シャルロッテの両親であるシュタイン夫婦は事情を聴き、すぐさま俺やミラを含めて特別クラスの生徒とその家族の部屋を用意してくれた。

 さすがに名門貴族の家だけあって、無駄にだだっ広く部屋も文字通り余るほどあったので、全員を住まわすことができた。俺の家ではさすがにこうはいかなかっただろう。

 更にこの屋敷には家令達が多く、住み込みで働いていたため、黙っていても家事はしてくれるので俺は長期休みの間は夢の食っちゃね生活ができると喜んだ。

 喜んでいたのだが、何故かこの女達は何かと俺の世話を焼きたがった。

 朝の目覚めから、食事、掃除、洗濯等々。家令がいるにも拘らず、屋敷の主であるシャルロッテも自らが率先して俺の世話を焼こうとするのだ。

 そんなわけで話は戻り、今日の朝はどうやらミラが一番乗りで俺を起こしに来たようだ。

 そして、どういう理由化はわからないが、誰が起すのか競争している節があり、どんどん俺の起床時間が日に日に早くなっている。

 最初は八時までは眠れたはずなのに、今日はとうとう七時に目覚めなくてはならなくなってしまった。


「お前らいい加減にしろ。俺は起きたい時に自分で起きる。ほっといてくれ!」

「そ、そういう訳にはいきません。正しい生活は朝の目覚めから始まるのです」

「その通りです先生」


 真面目代表のシルフィーとクレアが頷く。すげーめんどくせぇ。

 そういえば――


「今日はセリスがいないな。あいつもまだ寝てるんだろう。お前らもあいつを見習ってもう一回寝たらどうだ?」

「そういえば、セリスさんがいませんわね」


 シャルロッテが頬に手を当てた。

 昨日まではあいつも一緒に起こしに来ていたのだが、さすがに飽きたのだろう。

 襲われた可能性を俺は除外した。

 この屋敷には結界を張ってあるし、外も騎士たちが警護をしている。

 不審者が侵入すれば間違いなく気付くだろうから。

 と、俺のベットがもぞもぞと動き始めた。俺は目を見開き、毛布を引きはがした。


「すーすー」

『な!!』


 皆が絶叫した。セリスである。セリスが何故か小動物の様に丸まって、俺のベットで寝ていたのである。


「せ、せ、せ、セリスさん!」

「にゅむ、ん?」


 シャルロッテが絶叫し、その叫び声でセリスが目を覚ました。


「あれ? 先生、おはよう」

「・・・何やってるんだお前は」

「寝てた」


 それはわかるわ。


「なんで俺のベットで寝てる?」

「先生の・・・はぅ!」


 ようやくセリスは自分の置かれている立場に気づいたようだった。


「あれ。確か夜、トイレに行って部屋に戻って・・・」


 どうやら、部屋を間違えて俺の部屋でそのまま寝てしまったようである。無意識であったために俺の警戒信号にも引っかからなかったのか。恐るべしセリス。


「セリスさん! 事故でもなんでも先生とど、ど、ど、同衾なんて、うらやまけしからんですわ!」


 何を言っていやがるんだシャルロッテは。

 つーかこいつら、もっと狙われている自覚を持てってんだ。まったく。

 まったくの余談であるが、この後、セリスの家族がセリスが部屋にいないと騒ぎを起こしたのだが、それは終わってしまえば笑い話である。

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