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みんなで同居生活

「クレアさんが襲われたと言うのは本当ですか!」


 集まった特別クラスの面々を代表するように、シルフィーが質問を迫った。

 そして、心配しているのは他の三人も同じ様だ。

 四人は口々に質問を飛ばし、クレアの安否を確かめた。


「大丈夫だ。怪我も大したことはない。今は家族と一緒だ。数人の騎士が護衛しているし、その中にはアドルフもいるから、まあ、心配ないだろう」


 俺にはあっさりと敗北してしまったが、あれでも軍で一番の実力者だ。あの鞭使い程度なら問題なく撃退できるだろう。


「おそらく敵は隣国カルドニアだ。そして、クレアが狙われたということはお前たちも狙われる可能性があるってことだ」


 ゴクリ。

 皆、つばを飲み込んだ。人から命を狙われるということは、人生においてそうそうない経験だ。戦場や冒険で命を散らすとはまた違う。

 なにせ自分をターゲットにどこから刺客が襲ってくるのかわからないのだ。この恐怖、緊張は想像に余りある。


「お前らだけじゃない。家族も狙われる可能性がある。そんなわけで事が落ち着くまで、お前らには一か所に固まっていてもらいたい。その方が護りやすいからな」


 シルフィーが一歩前に出る。


「お言葉ではありますが先生。私たちはただ護られているだけの存在ではありません。私はまだわずかな期間ですが、先生に教えていただいたことに対する自負があります。我々も戦います」

「お前らの気持ちもわかるし、実力も知っているが、クレアを襲った暗殺者を見る限り、つーか、暗殺者ってのは正々堂々と挑んではこないんだよ。何らかのからめ手で来る。クレアも実力自体じゃ決して相手に劣ってはいなかったが、一歩及ばなかったしな」


 これは恥ではない。こいつらにはまだ毒などのからめ手に対する備えなど何も教えていないのだから。それはこれから学べばいい話だ。

 シルフィーは悔しそうに唇を噛む。


「で、しばらく一緒に生活することになる訳だな。問題はどこに住むかだ。俺の家でもいいんだが」


 俺の家は一人で住むには随分と大きい。なんとか窮屈ではあるが生活できるだろう。


「せ、先生の家にっすか?」

「お、男の方と一緒というのは、その・・・」


 シルフィーとステラが難色を示す。セリスもコクコクと頷いた。

 うーむ。まあ、別にみんな一緒ならそれほど意識しないでもいいと思うんだけどな。


「それでしたら、わたくしの家はいかがでしょうか?」


 シャルロッテが手を挙げた。


「わたくしの屋敷でしたら、ここにいる皆さんとそのご家族が余裕で生活できるだけのスペースがありますわ」

「・・・いいのか?」

「もちろんかまいません。ノブリス・オブリージュ。先生はこの言葉が嫌いでしたね。ですが、わたくし達貴族は、本来こんな時の備えの為に、権力や財力を蓄えているのですわ。今こそ高貴なる者の義務を果たす時です」


 ふん。生意気な。俺はにやりと笑った。


「もちろん俺も世話になるぞ。構わないのか?」

「せ、先生もですか。そ、そうですよね。先生も。あ、では、両親に会っていただかないとですわ」

「ああ、そうだな。世話になるなら一度挨拶に行かないとな」

「あ、挨拶、先生が両親に挨拶・・・」

「・・・ん?」


 なんだろう。こいつと俺の間には意志の隔たりがあるような気がしてならない。

 だが、一応はシャルロッテの家に厄介になることで話が決まったのだった。




*****


「失敗、したのか・・・」


 カルドニア公国、大将執務室は緊張で包まれていた。

 暗殺の任務を任せた暗殺者、イザベラからの連絡が途切れて三日が経過した。

 最後に連絡が合った時、その報告内容は「作戦を実行に移す」というものだった。

 それから連絡が取れないということはおそらくは失敗に終わったということだろう。


「まだ、決まったわけではありませんが・・・」

「楽観はやめよ」

「・・・は」


 大将ユリウスは密偵を軽く睨む。

 この場に同席していた中将アルバートは腕を組み発言した。


「もし、拘束されていたとして、イザベラはこちらの情報を話すだろうか?」

「いえ、イザベラは訓練された暗殺者です。その様なことは・・・」

「ただ、痛みを与えるだけならば耐えるだろうが、拷問はそれだけではないだろう。精神を麻痺させる方法などいくらでもある」

「確かに・・・」

「それにしてもあのイザベラが破れるとなれば、いよいよ侮りがたいですな。スティーグの弟子達は」

「それはまだわからん。スティーグが加勢したとも考えられる」


 アルバートにの意見に静かにユリウスは反論する。

 密偵が口を開く。


「一番怖いのはかの国の、いえ、スティーグの報復でしょう。かの者は敵には容赦がありません」


 その一言に大将執務室は静まり返った。

 一騎当千という言葉があるがあれはもちろん勇猛な将を称えるあくまでも比喩である。しかし、スティーグは違う。それが文字通りの意味なのだ。たとえ単身であってもスティーグが攻め込んでくるとなれば、こちらの被害は甚大なものになる。

 いや、自分達軍上層部を直接狙ってくる可能性もある。


「やはり、大本を叩くしかあるまいな。スティーグを暗殺する」

「できるでしょうか・・・」


 アルバートが不安顔で問い正す。


「考えがある。そして、その適任者もな」

「まさか、あの者を?」

「そうだ。ここで使わずしてなんとする。あの者ならば必ずやり遂げてくれるだろう」


 一難去ってまた一難。

 最強教師スティーグに最大の脅威が迫ろうとしていた。


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