サウナ男性編
スティーグとアドルフは黙って腰にタオルを巻いて、サウナ室に入った。
暑い。
スティーグはサウナ経験者であるが、ここのサウナはかなり暑い。
温度計を見る。
百十℃。
かなりの暑さである。
サウナの作りは女性用のサウナと同じ。
三段に分かれている。
スティーグは当然のように一番上の段に座った。
「何故上に座る?」
「上の方が暑いんだ。熱は上に溜まるからな。まあ、お前は初心者だろ? 下の方にいればいいんじゃねーの」
「む・・・」
そう言われたアドルフだったが、黙ってスティーグの隣に座る。
スティーグは細目でそれを眺めていた。
無理しやがると思いながら。
それから、男達二人は無言。
じっくりと蒸されていく。
スティーグは目を閉じて呼吸を整えた。
そして、暑さを一身に感じる。
(ああ、いいな)
サウナは辛いもの。
この後の水風呂、外気浴を気持ち良くするだけのものだと思う者もいるが、スティーグはサウナ自体も結構好きなのだ。
この暑さが、じっくりと蒸されていくのがいいと感じる。
スティーグは黙ってこの暑さを感じていた。
動いているのはサウナ室専用の時計のみ。
後は何も変化がない。
ゆっくりと、身体が熱せられていく。
十分ほど経った頃だろうか。
(そろそろ)
スティーグは腰を上げてサウナ室から出ようとした。
スティーグは自分のルーティーンを決めている。
サウナに十分前後、水風呂に二分程度、外気浴に十分程度。
これを一セットとしている。
これに従おうと思ったのだが、
「もう出るのか? 惰弱な」
思わぬところから、声が飛んできた。
「あ〝?」
「おっとすまない。聞こえてしまったか」
「俺を惰弱とか言ったかコラ」
「すまんな。初心者の私がまだ耐えているのにもう出るのかと思ってな。いや、サウナは我慢比べではない。自分のペースで楽しめばいい。私はまだまだ耐えられるがな」
アドルフの煽りにスティーグは目を細める。
本来アドルフはこんな嫌みを言う性格ではない。
だが、アドルフは忘れていないのだ。
あの卵かけご飯事件のことを。
自信満々で出した卵かけご飯をあっさりと知っていると言ったスティーグに心折られてしまったアドルフ。
いや、自分だけならばまだよかったのだ。
問題はそれを婚約者のエリーゼにも知られてしまったこと。
無邪気に「どうでしたか?」と聞いてくるエリーゼに真実を伝えるのがとても辛かった。
あの時のエリーゼの顔を忘れられない。
わかっている。
スティーグは何も悪くない。
これはアドルフの逆恨みだ。
だが、どうしても、そう、どうしても何か嫌味の一つでも言ってやりたい。
そんな、心境だったのだ。
スティーグは目を細めて階段を降りる。
てっきり挑発に乗ってまだいるのかと思ったが、自分のルーティーンを守るつもりなのか。
そう思ったがそうではなかった。
カンカンに熱せられたサウナストーンに柄杓で掬った水をぶっかけたのだ。
ジューと言う音と共にもうもうと舞い上がる水蒸気。
それを三度ほど繰り返した。
「何を?」
「ロウリュウって言ってな。こうやって熱い蒸気を室内に送ってるんだよ」
すると間も無く、上段にいるアドルフの元にとんでもなく熱い熱波がやってきた。
思わず顔を顰めるアドルフ。
「む、うぅ」
「おやおや? 限界か?」
「笑止。この程度なんでもない」
「そうかよ」
そう言ってスティーグも元の位置に座る。
「・・・出ないのか?」
「はっ! 誰が出るって言ったよ。お前こそ出ないのか?」
「まだまだ耐えて見せよう」
「ふーん」
スティーグはニヤリと笑い、アドルフは黙殺する。
そして、我慢比べが始まった。
サウナに入って十五分後。
「・・・どうした? 限界か?」
「ふっ、お前こそ」
二十分後。
「そろそろきちぃだろ?」
「・・・お前がな」
三十分後。
「・・・」
「・・・」
そして。
「バッカじゃないの!!」
二人は脱水症状を起こしてのびているところを発見された。
マジで命の危機だった。
ミューリはカンカンに怒った。
サウナを愛するからこそ、二人の入り方は容認できないのだ。
「アドルフさんまで一緒に何してるんですか?」
「・・・面目ない」
ミラに嗜められ、アドルフは小さくなっていた。
スティーグは子供みたいにそっぽを向いているが。
「もう怒った! あんた達二人は夕飯抜き!!」
「おい、そりゃーねーだろ!」
「うるさい!!」
この後二人は、ずっとミューリに説教されていた。
サウナは我慢比べではありません。
自分より先に入っている人や同じタイミングに入ってきた人がいると、こいつよりは長くいようと思ったりもしますが、自分のルールを守って入りましょう。
作者は大体十二分を目安にしていますが、割と長い方だと思っています。
皆さんはどれくらい入りますか?




