息を吸うように
エルフの里にやって来た翌日。
起床して思い思いに過ごしていた仲間達の泊まる家にミューリがやって来た。
「おっはよう!」
「ミューリさん。おはようございます」
代表してミラが挨拶する。
「皆んなもう朝ごはんは食べた?」
「はい。もう食べたわ」
エルフの食事はやはりというべきか、木の実や果物が多かった。
後は狩りで狩ってきた獣肉。
エルフも肉を食べるのかと思ったが、そういえばミューリも普通に肉を食べていた。
エルフの一番の武器は弓。
狩猟に最適な武器。
そう考えればエルフが獣肉を食べるのも不思議ではない。
「そっかそっか! じゃあ今日は何をしようかしら? 一応注意点もあってね」
「注意点?」
「うん。・・・そういえばスティーグは?」
ミューリは辺りを見渡すがスティーグの姿がない。
「スティーグなら散歩って行ってどこかに・・・」
「行っちゃったの!?」
あちゃ〜、とミューリは額に手を当てた。
ミラは不安そうに尋ねる。
「何か不味いの?」
「あー、うん。不味いっていうか・・・まあ、あまりよくないのよ」
仲間達が集まって来た。
何かあったのだろうか? と。
「あなた達は二度もこの里を救ってくれたし、大体のエルフが感謝してるのよ? でも一部のエルフはそうじゃないの」
仲間達は顔を見合わせる。
昨日は歓迎ムードだったから気が付かなかったが、そんなエルフもいたのか。
「エルフは、まあ、この辺りの種族は一族だけで生活が完結してる交流がほとんどない部族なのね。だから他の種族には冷たいっていうか、排他的なの」
「・・・ああぁ」
そういうこともあるか。
我々は一部のエルフにとっては招かれざる客なのだと思い知る。
「だから、里の外に出る時は一言あたしに言って欲しかったんだけど、行っちゃったか・・・」
「・・・ごめんなさい」
「ああ、いいのいいの。昨日のうちに言ってなかったこっちが悪いし。スティーグは分かってると思ったんだけど、あいつそういうの全然気にせずに動いちゃうからな〜」
確かに。
全員が同意した。
「じゃああたし、ちょっとスティーグ探してくるから」
「私達も行っていい?」
「ん? んー、まああたしがいればいいか。いいわ、来て」
全員が頷く。
スティーグを探すために全員が家を出た。
家を出て探し回ることしばし。
ミューリと離れたらいけないので手分けして探せないのが辛いところだが、四方に目を光らせて捜索に当たった。
そして、ようやくスティーグを見つけたのだが、
「あの、これ、受け取って下さい」
「ん?」
エルフの女性がスティーグに花を渡している現場に遭遇してしまった。
女性のエルフは頬を赤らめて慌てて走り去ってしまう。
「あ、おい」
スティーグが言葉を発したが女性は振り返ることもなくいなくなってしまった。
スティーグは困った顔で花を見る。
今花をもらっても飾るところがない。
間借りしている家に取り敢えず飾るしかないが、もうすぐ旅に出るのに。
スティーグは髪をくしゃりとさせて天を仰いだ。
それを見ていた女性達はそれはそれはすっごい顔をしていた。
ちょっと目を離した隙に。
息を吸うように女を引き寄せる。
ステラはすっごい顔をしながら言った。
「いやいやおかしいでしょう。あの女の人確かダンジョンで助けた人でしょ! アドルフ先生なら分かるけどスティーグ先生って後ろで見てただけだよ? なんでモテるの!?」
そう。
スティーグが昨日戦ったのはオークキングとの一戦のみ。
後はずっと見ていただけなのだが。
「もうスティーグ先生だからとしか」
「主人公補正」
「先生はこの物語の主人公だもんね・・・」
主人公は無意味にモテる。
なんでだよ!? って思っちゃいますよね?




