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風呂

「あ〜〜〜〜〜。気持ちいい」


 ステラが湯船に浸かって顔を上げたまま、蕩けるような顔で言った。

 エルフの里の大浴場は広かった。

 足を伸ばさなからば五十人はゆうに入れる程でやはり木製である。

 だからか、木事態がよい匂いを発しており、気分を落ち着かせる。

 現在はスティーグ一行の女性達の貸切となっているため、誰に遠慮することなくお風呂を堪能できていた。


 今日は色々あって疲れたし、汚れもしたので、このお風呂は本当にありがたい。

 心持ちぬるいこのお風呂はいつまででも入っていられる、そんなお湯である。


「ミューリさん、ありがとうございます。こんな素敵なお風呂を」


「いいって。皆んなはそれだけ働いてくれたんだからゆっくりしてよ。ここにいる間はいつでも入っていいからね」


 クレアがお礼を言ってミューリが笑顔で応じる。

 皆んなリラックスした時間を過ごしている。

 そもそもここ最近は旅をしていたのでゆっくりと風呂に入ることなど出来なかったので、このお風呂は正に救いの湯なのである。

 これからまだ旅は続くし、入れる時に入っておきたい。

 魔法で水はいくらでも出せるから、旅の間も身体を拭くことはできたが、湯船に浸かることは出来なかった。

 今のうちに堪能しておきたい。


「それにしても」


 ミューリがクレアを見つめる。

 視線は顔よりも下。

 お湯にぷかぷかと浮く二つの双丘を見つめる。


「おっきいわねぇ〜。何食べたらそんなにデカくなるの?」


「・・・えっと、あの、その」


 クレアは胸を隠すように肩まで浸かる。

 顔が赤いのはのぼせたからではない。


 これに素早く反応したのがシャルロッテである。

 親の仇を見るような目でクレアを睨む。

 クレアの頬に一筋の汗が流れた。

 この汗もお風呂で体温が上がったから流れたわけではない。


「あたし達エルフはさぁ。そんなにおっきくはならないのよねぇ。見てあたしの。ぺちゃんこ」


「わ、わかりましたから。見せつけなくていいですから」


 クレアは気まずそうに視線を外す。


 シャルロッテは自分とミューリの胸を見比べる。

 ぺちゃんこと言ったがそれでもシャルロッテよりは、ある。

 シャルロッテは血涙を流す。


「そんなに大きいと触り心地はどんなもんよ? ちょっと失礼」


「ち、ちょっとミューリさん? きゃうぅー!?」


 ミューリは手をわきわきさせるとクレアの胸に飛びついた。


「ほっほう。なるほどねぇ。弾いてくる。この弾力よぉ!」


「あっ! ミューリさん、変なふうに触らないで下さい! あっ、ち、ちょっと!!」


「いいじゃないの女同士。さあさあ」


「きゃわわ〜ん!!」


 それを遠目で見ていた少女達。


「いいんすか、止めなくて。のせられなくなりますよ」


「何にとは言わないけど困ったわねぇ」


「仕方がない。私が行きます」


 ステラが呟き、ミラが頬に手を当て、シルフィーが動く。

 やっとミューリとクレアは引き剥がされた。

 クレアは顔を真っ赤にして胸を押さえている。


「ミューリさんは、なんというか、クレアが羨ましくはありませんの?」


 シャルロッテがミューリに尋ねた。

 ミューリからは珍しいものを見たという好奇心こそ感じるがシャルロッテが抱くような嫉妬心が感じられないのだ。


「羨ましく? 別に? 胸が大きい小さいなんて個性でしかないじゃない?」


「そ、それは、そう、なのですけど・・・」


 シャルロッテの言葉が萎んでいく。

 なんというか、嫉妬に駆られている自分が酷く小さい人間に思えてくる。

 なんだか無性に負けた気がする。

 シャルロッテは口まで湯に浸かりぶくぶく泡を立てた。







 その頃、男湯では。



「のぞくなよ」


「のぞかねーよ!」


 そうは言ってもスティーグには前科があるのでしっかりと見張っていてほしいと女性陣に言われている。

 アドルフは目を光らせていた。

 スティーグにはその気はないようでのんびりしていた。


 男湯は平和だった。

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