エルフの森
馬車を走らせようやく辿り着いた。
「さ、ここからがエルフの森だよ」
ミューリが先頭に立つ。
ここからは彼女を先頭に立たせて進むことになる。
「エルフの森は別名迷いの森。あたしが案内しないと迷うからね」
この森はとても迷いやすい。
そういう構造になっているのだ。
人が迷わないようにするにはそれこそ飛んでいくなどの方法を取るしかない。
スティーグは複雑な思いで森の入り口に立っていた。
ここまでは一人でたどり着いたのだ。
改めて思い返してみると、神獣と戦った場所からここまでそれなりに離れている。
よくあんな満身創痍で足を引きずりながらここまで来たものだ。
自分の生命力に感心してしまう。
森に馬車で入ることは出来ない。
馬車を置いて、馬だけ連れて進むことになる。
「行くわよ。逸れないように着いてきて」
ミューリはそう言って森の中に入っていく。
一行は黙ってついて行った。
それからスティーグ達は黙々と歩いた。
木々の間の木漏れ日から薄っすらと光が差し込んでくる。
淡い光が照らす森は幻想的ですらあった。
しばらく進むと、川からのせせらぎが聞こえてきた。
ステラが誘われるようにそちらに向く。
「ねえ、ちょっと川で休憩しません?」
森歩きは結構疲れるのだ。
慣れているミューリや規格外のスティーグはそうでもないだろうが、他のみんなはそれなりに疲れている筈である。
「そうだな。少し休むか」
「いぇーい」
ステラは嬉しそうに駆け足で行ってしまった。
他の面々もそれに続く。
川に辿り着くと、皆、バラけて腰を下ろす。
ステラやセリスなどは靴を脱ぎ、川の水に足をつけて涼んでいる。
さらさらと流れる水の音。
木漏れ日の光が川の水に反射して煌めいている。
小鳥の鳴き声が聞こえてきて、思わず目を閉じて音色に耳を傾ける。
なんだかゆったりとした心地よい時間だった。
ここで休憩したのは正解だ。
が、この音色が突如として破られる。
草の茂みを無視して突き進んでくる物音が聞こえてきた。
獣か魔物か。
即座にステラとセリスは靴を履いて腰を落とす。
果たして、現れたのは女性のエルフだった。
こちらも驚いたが、あちらも驚いたようで息を止める。
動揺して、目をギョロギョロと動かしていたが、メンバーの中にミューリがいるのを見ると、抱きつくように飛び込んできた。
「ミューリ!」
「落ち着いて! 一体どうしたの?」
「大変なことになっちゃって!」
「落ち着いてってば。ゆっくり話して」
「う、うん・・・」
エルフは胸を押さえて呼吸を整えている。
よく見ると服があちこち破れて、軽傷を負っている。
只事ではなかった。
「オークよミューリ。オークの集団が女を攫って行ったの!」




