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静かなる巨人

 新たに現れた集団。

 その名は『シャルロッテさんに踏まれタイ』


 なんだそれは?

「シャルロッテさんの常に凛とした佇まい。ちょっと男を敵視するような厳しい視線。ああ、あの人に踏まれたい。罵られたい。そう思う人間によって組織されたのが、我々なのです」


 もはや、言葉がない。こいつらは俺とは別種と考えたほうが精神衛生上良さそうだ。


「そのシャルロッテさんが貴方のクラスに入ってから何かおかしい!」


 ああ、うん。あいつはな。


「貴方を排除し昔の彼女を取り戻す。みんなかかれー!」


 襲いかかってきた、シャルロッテに踏まれタイ。無論、俺の行動は決まっている。


「失せろ変態ども!」


 ぼかぼかばこん!


 またもや吹っ飛ばされる集団。

 俺は無言で立ち去り三階へ。

 もはや注意を呼びかけられることもなかった。

 しっかし。あいつら本当に人気あるな。

 確かに容姿は抜群だからな。

 そこまで考えた時、悪寒が走った。待てよ、二度ある事は三度ある。更に四度目もあるのでは?


「待っていましたよスティーグ先生。我々は『ステラさんと遊びタイ』だー」

「なんの、『我らはセリスさんを見守りタイ』!」

「星と消えろぉー!」


 ぼかぼかばぼこぼこばこん!


 俺の拳が唸りをあげる。

 廊下を埋め尽くす団体をすべて吹き飛ばした。

 ふぅ。戦いはいつも虚しい。

 そろそろまともな連中を相手にしたい。そう切に考えていた時、階段下から駆け上がる足音が響く。


「い、いたぞ。スティーグ先生だ!」


 グラウンドにいた生徒達だろう。かなりの人数が、駆け上がってくる。

 おっとこれはやばいな。

 逃げようとすると、前方からも生徒が数人現れた。

 いかん、挟まれた。


「チャンスだ! 挟み打ちにしろ」

「なんの!」


 俺は前方にダッシュし、一瞬戸惑いを浮かべる生徒達の前で跳躍。生徒達の頭上を飛び越えた。


「な!」

「しまった」

「狼狽えるな。反対の通路から回り込んでくる奴らもいるはずだ」


 この学園の本館廊下の構造は大きく長方形になっており、ぐるりと回りこめるように作られている。

 じっとしていると前から又挟み打ちにされてしまう。

 一度身を隠す場所はないだろうか?

 何処か適当な教室に入るか? 辺りを見渡していると、時既に遅く前から生徒が十数人駆けてきた。

 しくった。悠長に探している余裕はなかったようだ。


「まとまって飛び込むとまた上から逃げられるぞ。波状攻撃だ」


 うまい。空間を開けて押し寄せ、俺が飛び降りて着地したあたりにも人を配置しようとしている。


「ならば、押し通る!」


 ゆらりと、俺は静かに前に出る。生徒達は我先にと両手を前に突き出して、俺に触ろうとするが――

 ストン。


「え?」


 掌に触ることなく、俺は最初に接触してきた生徒の手首をひねり、軽く投げた。

 呆ける生徒をよそに俺は次々に生徒達を投げながらすたすたと進んでいく。


「な、なんだあれは!?」

「気付いたら地面に寝そべっていたよ?」


 小柄な老人であっても相手と呼吸を合わせ、力を利用すれば相手を投げることが可能。

 合気といわれる武術であり、極めればはたから見ればただ相手に触れるだけで吹き飛ばしたように見えるが、この極意に到達するために道のりは重く険しい。

 ハッキリ言って学生相手に使うのは大人げないが人数というハンデがあるんだし、大目に見てもらおう。

 俺は生徒達を、躱し、いなし、投げながら包囲網を突破した。

 俺の後ろの生徒達は唖然とし、追いかける気力もなくなったのかそのまま呆けながら俺を見送った。


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