大鬼ごっこ大会
「お、鬼ごっこで、特別クラスの生徒を選抜する〜!」
俺は先ほど理事長室でした話を生徒四人とミラやアドルフに聞かせた。
「メチャクチャだ! なんでそんな方法を」
まず、アドルフが意見してきた。
「結構いいアイデアだと思うんだがな?」
「どこがよ」
今後はミラだ。
「スティーグ先生を捕まえるなんてできるんでしょうか?」
クレアが疑問を投げかける。
「そこだな。俺を捕まえることができるようなやつは相当身体能力が高いぞ」
「そんな生徒いるのでしょうか?」
シャルロッテが頬に手を当てて首をかしげる
「先生」
セリスが手を挙げて、俺に詰め寄る。
「あたし達も参加、可?」
「お! 面白いじゃないっすか」
ステアがセリスに賛同する。
「構わないがお前らが捕まえても意味ないぞ?」
「何をおっしゃいます!」
シャルロッテが両手に握りしめ、むんと気合を入れる
「先生に触れるチャンス! いえ、これは立派な修行になりますわ!」
今、聞きづてならない事を聞いたような気がしたが。
「でも、いくらスティーグでも全校生徒から逃げ切れるものかしら?」
ミラは逆に俺が逃げ切るのは難しいと考えているようだ。
「確かに数は多いな。まあ、なんとかなるだろ」
「策があるのか?」
アドルフは俺の余裕の態度に興味を持ったようだ。
俺は鼻で笑う。
「策を考えるのは生徒の方だろうな。どんな手で来るか楽しみだぜ」
******
理事長室で話をした数日後。
急遽、全校集会が開かれ大鬼ごっこ大会のイベントが告げられた。
全生徒参加ということで学武際に続くお祭り騒ぎに多くの生徒が湧いたが、中には不満を持つ生徒もいたとのことだ。
そもそも特別クラスに参加したい生徒以外にはうまみのないイベントだ。
確かに不満の声が上がるのは仕方のないことだった。
そこで特別クラスに編入を希望しない生徒には試験免除の上、単位を修得できるという特別処置をとることになった。
そして、当日。
『さあ、やってまいりました。毎度お騒がせ、スティーグ先生の提案で始まりました、全校挙げての鬼ごっこ大会が開かれようとしています。全校生徒がスティーグ先生ただ一人を捕まえます。生ける伝説と言われるスティーグ先生ですが、はたして全校生徒から逃げ回ることができるんでしょうか? ちなみにわたくしは中継する他の放送部達と共に前日に二時間ほどスティーグ先生を追いかけ回しましたが、まったく捕まえられませんでした!』
まずは最初のスタート地点は学園のグラウンドから始まる。
生徒のほとんどはグラウンドに集まって、俺から一定の距離を取らされている。
しかし、中には校舎内などで隠れて俺を待ち構えている生徒もいるとのこと。
さあ、楽しい鬼ごっこの始まりだ。
『それでは制限時間は今から八時間、16時まで。鬼ごっこ~~スタート!』
ピーっと笛が鳴らされ、全校生徒が雪崩の様に俺に押し寄せてくる。
「はっ! こいこい!」
生徒を引き付けておいて俺は大きく後ろに跳躍する。
「うぇえ! なんだそのジャンプ!」
「た、高い」
そのまま校舎の二階に取りつき、窓から校舎内に侵入する。
「そ、そんなばかな!」
「呆けるな。追えぇ!」
校舎内にも生徒達はいるはずだが、見渡す限りでは見当たらない。
さて、ここに止まるのはまずいだろうし、移動しようか。
廊下の角を曲がるとそこには集団が待ち構えていた。
十数人の集団は目が血走っていて、俺をギラリと睨みつけてくる。
「ふっふっふ。待っていましたよ。スティーグ先生」
「待ち伏せか」
「我々の事は当然ご存知でしょうね?」
「いや、知らねーけど」
集団は揃って驚いた表情をした後に、恨めしそう俺を見た。
なんなんだこいつら・・・
「ふっふっふ。我々は・・・」
次回に続く。
謎の集団の正体とは?




