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ステアのもわっと

前話。37話、少し追加しました。

「うわーー! もわもわする!!」


 あたしステラ16歳。

 学武際が無事終わり、数日が過ぎた。

 あたしは学武際で見事に優勝を成し遂げ、さらにスティーグ先生にも勝利するという大金星を飾った。

 しかし、あれ以来あたしの心を悩ませていること一つがある。


『ああ、お前の勝ちだ』


 意識がなくなりかけて崩れ落ちる寸前に聞こえたスティーグ先生の声。

 いつものぶっきらぼうの声と全然違って、すごく優しい声だった。

 その上、倒れるあたしを抱き留めてくれて、あたしは安心して気を失ったんだ。

 だけど、あれ以来あの時の事ばかり何故か思い出してしまう。

 考えないようにしようとしても、頭の隅っこに常にあるんだ。

 これって、まさか、こ、こここ。


「うがー! そんなわけあるかー!」


 あんな、あたしによくセクハラして、ぶっきらぼうで性格最悪のあの先生にあたしが、そんなことになるはずがない。

 そりゃ、ここまで強くなれたのは先生のおかげだし、意外に面倒見がいいと思うこともあるけどって、なんで良い評価になってんだよあたし。

 これはあれだよ。素行の悪い生徒が子猫とかに優しくしてるのを見るとそのギャップでキュンと来ちゃうような――


「って! キュンってなんだー!!」

「・・・お前もかステラ」

「きゃ!!」


 あたしが頭を抱えている時に、背後から聞こえてはならない人の声がした。

 い、今あたし、『きゃ!!』って言った? うおーー似合わなねー。あたしに『きゃ!!』なんて似合わねー!

 恐る恐る振り返るとそこにはスティーグ先生がいた。


「せせせせせせ先生!?」

「・・・シャルロッテがたまにそんな感じになるし、最近ではクレアもたまに妙にもじもじする時があると思っていたんだが、ついにお前もかステラ」


 あたしは顔が真っ赤になった。

 この場面を見られたこともそうだけど、シャルロッテ先輩は完全に恋する乙女の顔してるし、最近はクレア先輩もなんとなくそうだし、それとあたしが同じってことは、それってつまり・・・


「そ、そんなことあるわけないじゃないですか! バーカバーカ!」

「・・・いい度胸だこら。せっかく牧場に連れて行こうと思っていたのにやめるぞ?」

「嘘です嘘です。ごめんなさーい」


 そう、先生がここにいるのは偶然でもなんでもなく、あたしと普通に待ち合わせをしていたからだ。

 あたしは学武際で優勝したご褒美に以前、食べさせてもらった極上のステーキをもう一度ご馳走してもらえることになったのだ。

 だけど、ここでまた問題が発生した。

 今回、牧場に連れてってもらえるのは学武際で優勝したご褒美だ。つまり、行けるのは優勝したあたし一人だってこと。

 先生と二人で食事だなんて。こ、これってなんかデ、デートみたい。


「あうーー! 何考えてんだあたしぃ!」

「・・・ああ、それな。ほんと何考えてんだお前?」


 先生は呆れた顔であたしを見ている。

 うう、あれはいつも暴走気味のシャルロッテ先輩を見る時の目だ。いつもはその光景を微笑ましく見ているあたしだけど、今はあたしがあんな状態なのか!?


「ごほん! 先生。覚悟はいいっすか? 今日はあたしは食べまくりますからね。なんといってもご褒美なんですから、覚悟してくださいね」

「まっ、約束だからな。でも、いいのかそんなに食うと太るぞ?」

「レディーにそうゆうこと言わない!」

「レディーねぇ」


 な、なんだよう。そりゃあたしはちょっと女の子っぽくないって言われる時もあるけど、それでも顔立ちとかそれなりに自信あるんだけどな・・・


「今日は生意気にもお前が俺に一撃入れた褒美だ。いくらでも食え」

「う、うん」


 ちょっと調子狂うな。もう少し悔しがったりするかと思ったんだけど。そりゃ、全然本気じゃなかったのはわかってるけどさ。なんかあたし一人が子供みたいじゃん。


「えへん! あたし一人だけだと思って油断してますね先生。今日のあたしはリミッター解除で食べまくりますよ」

「ああ、それなんだけどな」


 先生が後方を見る。あたしも首を動かして先生の後ろを見てみると。なんだか、ぞろぞろ人影がやってくる。


「あれ? みんな」


 現れたのは特別クラスのいつものメンバー。ミラさんにアドルフ先生までいる。


「ごめんねステラさん。やっぱりあのお肉の味が忘れられなくて」


 クレア先輩が代表するように説明し、全員首肯する。

 ミラさんとアドルフ先生はあたしらが前回行った時のことを散々自慢するので、ぜひとも食べてみたいとのことだ。


「ええ~。皆行くの? あたしの頑張りは? ご褒美は?」

「わたくしは自腹で払いますわ」

「一人だけ、あのお肉、ずるい」


 なんでもスティーグ先生の寄付のおかげで、先生と一緒に行けば、料金をぐっと安くしてくれるということで、あたし以外はみんな自腹で行くそうだ。

 確かにこれならばあたしの『ご褒美』としての名目は立つけど。

 はぁ。先生と二人っきりだと思ったんだけどな。ちょっとがっかり。ん? がっかり・・・


「って、がっかりってなんだ~!!」


 あたしの突然の大声にみんな驚いている。でも、あたしはそれどころじゃない。

 うう~。ちがーう。これが恋なんてあたしは絶対に認めなーーい!

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