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そして決勝戦へ

 医務室に行くとクレアとシルフィーが手当てを受けていた。

 怪我自体はクレアの方が軽傷だろう。ほとんどかすり傷だからな。


「先生」


 医務室に入ってきた俺を見るなり、クレアが俺の胸に飛び込んできた。

 と、とと。おいおい。


「申し訳、ありません」


 何を謝ってるんだ? 負けたことか?

 俺はクレアの頭をぽんぽんと叩いてやった。

 クレアは顔を上げて俺を見る。

 大粒の涙を流すクレアがそこにいた。だが、それでいい。


「よくやった」


 どうも俺の一言でさらに涙腺が緩んだようだ。

 俺の胸で泣きじゃくるクレア。

 うわー、どうすんだよこれ。

 俺はしばらく成すがままにされていたが、シルフィーの怪我が気になって保健医に状態を聞いた。


「肩ははめましたが、骨に亀裂が入っているようですね」


 命力のすべてを込めたクレアの崩断を剣を通してでも食らってしまったのだ。

 この結果は十分予想できた。


「棄権しかないでしょうね」

「そんな!」


 覚悟していたのか、静かに目を伏せるシルフィーに対し、クレアが弾けたように顔を上げ、悲鳴を上げた。


「切り傷や打撲程度なら、薬や治癒魔法でなんとでもなるのですが、骨となると」


 保健医は申し訳なさそうに説明した。


「先生なら!」


 クレアは一縷の望みをかけるような瞳で俺を見つめた。

 うーん。困ったな。


「俺も基本的な治癒系の魔法は使えるんだが、それほど得意ってわけじゃないだな」

「そうなんですの?」


 シャルロッテが意外なものを見るような目をした。

 こいつらは俺が何でもできると思っているようだ。

 俺にだって苦手なものはある。

 ちなみに生のトマトが苦手だ。


「ああ、怪我とかしないんでな」

「あ~そうですわね」


 シャルロッテがなぜか納得したように頷き、その他の連中もそれに続く。

 なんだよ。怪我しないのはいいことだろうに。


「そ、それじゃあシルフィー先輩があたしのせいで棄権に・・・」

「自分を責めないでください。クレアさん」


 再び泣き出しそうなクレアにシルフィーが声をかけた。


「武際で戦う以上、このようなことも、もちろん覚悟しています」

「先輩。でも!」

「むしろ私は嬉しいのです。こんなになるまであなたと戦うことができた。この学園に入学して以来、あの戦いほど充実した時を過ごしたことはありません。ですから、クレアさんも胸を張ってください」

「は、はい! 先輩が正面からあたしと戦ってくれたおかげで最後の一撃を決めることができました。あの場面なら足を使って回り込むなり、方法はあったのに先輩は本当に素晴らしい人です」

「・・・・・・迂闊」

「先輩?」

「は、はい!? もちろんそれもわかっていました。ですが、正面から受けてこそ騎士を目指す者の正しい在り方です。ええ!」


 こいつ、考えてなかったな。まあ、それは言わないでおこう。

 しかし、クレアが負け、シルフィーも棄権となると、この後の試合は盛り上がりに欠けるな。

 このまま順当にいけばステアが間違いなく決勝に進出するだろうが。

 そう考えていた時、会場が湧いた。

 次の試合が決まったのだろうか?


「ステラの試合、かな?」


 セリスが同級生を気に掛ける。

 だが、まだだろう。ステラの試合はもう少し先のはずだ。

 それからしばらくシルフィーの怪我の容体を詳しく聞いていた時、アドルフが医務室にやってきた。


「シルフィー君の怪我の具合はどうだ?」

「アドルフ先生。あの、亀裂骨折だそう、です」


 やはり、どうしても気になるのか。申し訳なさそうにクレアは答えた。


「! そうか。仕方ないな」

「それよか。今は誰の試合が終わったんだ?」

「ステラ君の試合だ」

「は? もう?」


 セリスの勘が当たったか。しかし、早すぎないか、進行。


「あっさり決まる試合が多くてな。先ほどのステラ君が準々決勝を勝ち上がった」


 わぁ! っと、特別クラスの生徒達が喜びの声を上げる。

 しかし、俺は素直に喜べない。あまりにも順当な結果だ。


「本来であれば三日間の予定の武際だったが、今日、このまま決勝戦をしてしまうそうだ」

「早いな展開」


 となると、優勝は九分九厘ステラで決まりか?

 それとも意外な落とし穴があるか、な?


「それで、シルフィー君の怪我の具合を見に来たのだが、そうか。やはり無理か」


 シルフィーがここで棄権となれば、大会は盛り下がること間違いなしだ。

 ふむ。これはなんとかせんとな。けけけ。


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