学武際
「もうすぐ学武際ですわ!」
その日の訓練を終え、帰り支度をしている面々を前に、シャルロッテは嬉しそうに言った。
「なんだそれ?」
文化祭的な何かか?
「先生も一応教師なんですから、少しは学園行事を知っておいて下さいませ」
そんなことを言われてもな。俺は職員会議に出ているわけでもないんだから、知る訳がない。
アドルフだってきっと知らないぞ。
「お前も知らないよな?」
「知っている。当然だろう」
なんだ。知ってるのかよ。
「で、それはなんだ?」
「このバレンティア学園で一番大きな催しですわ。学年別に分かれ、誰がその学年で一番強いのかを競う武の祭典ですの」
「つまり武術大会か」
「もちろん魔法もありですわ」
なるほどね。この学園が軍事と関わるだけにこういった催しも開かれるのだろう。
「学年一位には金一封もでるんすよ」
ステラはそれが目当てか。
シャルロッテはかなり張り切っているようだ。
この特別クラスで学んだ力を試したくてしょうがない。そんな感じか。
クレアも意気込みを感じる。セリスはどうか?
「・・・がんばる」
セリスは口数が少ないだけで感情がないわけじゃない。その真剣な眼差しは他の三人と同様にやる気が感じられた。
「残念なのは、学年別ということですわね。わたくし、最上級生ともここにいる皆さんとも戦ってみたかったですのに・・・」
こいつ、若干バトルジャンキーっぽいところあるよな。
おそらくだが、こいつらなら上級生にも十分通用するだろう。だが、普通に考えれば、一学年ならばともかく最下級性と最上級生とでは経験の差が著実にでる。成長期の二年の差は馬鹿にならないのだ。早生まれは損とよく言うしな。
「そうなると、クレアさんとシャルロッテさん。ステラさんとセリスさんが学年で一番のライバルになるのかしら?」
話の内容を聞いていたミラが会話に加わってくる。
「ええ、そうなりますわね。クレアには負けられません」
「ふふ、それはお互い様だよ」
早くも火花を散らす二人。
身びいきではないが、俺が鍛えたこの四人が同学年で他の生徒に後れを取るとは考えにくい。
ワン・ツーフィニッシュを飾る可能性はかなり高いだろう。
「トーナメントだから、いつセリスと当たるかわかんないけどね~」
「全校生徒が参加するのか? いったい何日かかるんだ」
「あーいや、自由参加ですよ。でも、貴族は参加が暗黙の了解みたいになってますし、割と参加率は高いんすよ。ただ、一応教養を深める事が目的で入学して、全然戦いはからっきしって生徒もいるから全校生徒半々てところですかね」
そんな生徒が無理に参加しても祭りが盛り下がるだけだな。
貴族参加は力ある者の義務ってやつか。
「軍もこの祭りには興味を持っている。上層部も見学に来るほどだ」
なんだ。軍もこの祭りに興味があるのか。まあ当然か。将来有望な人材を観み来るのは。それで知ってたのかアドルフ。やっぱり教師関係ないじゃねーか。
「ふん。話は分かった。俺が教えている以上。つまらねー試合は観せるんじゃねーぞ」
「「「「はい!」」」」
*****
話も終わり、特別教室である闘技場から出て、それぞれの帰路につこうとした時。闘技場の外で二人の人物が俺達を待ち構えていた。
ベネデットと校長である。
「何の用だ?」
先日のダンジョンの件もあり、俺はきつめの口調でベネデットを睨みつけた。
ベネデットはびくりと体を震わせつつも用件を切り出す。
「・・・スティーグ先生と特別クラスの生徒達にお話があるのです」
「なんだ?」
萎縮してしまったベネデットに代わり、校長が話し始める。
「実は近々バレンティア学武際という催しが開かれるのですが」
「ちょうどさっきまでその話をしていたところだ」
「話が早くて助かりますな。それで特別クラスのあなた達四人には最上級生の部に参加してほしいのです」
ほぉ。俺は軽く驚いた。クレアやシャルロッテだけではなく。ステラやセリスもか。
「何を企んでいる?」
俺は目を細め、二人を睨みつけるとベネデットが慌てて手を振って弁解した。
「ち、ちがいます。何も企んでなどおりません。ただ、我々は純粋に観たいのですよ。特別クラスの生徒達がどれほどの力を身につけたのか。最上級生相手にも通用するのかどうかを」
ふ、ん。まあ、筋は通っている。ならば俺が口を出すことでもない。
「どうするお前ら?」
「もちろん参加しますわ」
「望むところです」
「・・・超、がんばる」
三人は二つ返事だ。ステラを見ると何か考え込んでいる。
(あれ?セリスもそっちにいくんだったら一年の部って楽勝なんじゃない? ふっふっふ金一封金一封)
「いやー、あたしなどはまだまだ修行中の身ですからね。ここは大人しく一年の部に――」
「そうか。最上級生の部で優勝すれば、この間の牧場に連れて行ってやろうかと思ったんだが」
「もちろんそっちに参加しますよ! あったりまえじゃないっすか!!」
単純な奴。
「おお。参加してもらえますか。これで大会も盛り上がりますよ」
ベネデットと校長はほっとしたようだ。
こうして、特別クラスの四人は最上級生の部にエントリーすることが決定した。




