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飯テロ。スティーグ生徒に肉をふるまう

 ダンジョン攻略から数日後の事。

 俺達は学園から遠く離れた地で馬車に揺られていた。

 俺達が何故こんな遠出をしているのか?

 ダンジョン探索。では、もちろんない。

 ダンジョンで迂闊にも俺はドラゴンゾンビを倒した時にご褒美をやるとこいつらに約束をしてしまった。

 約束してしまったものは仕方がない。俺は何をやろうかあれこれ考えたが、ひとつ面白い趣向を思いつき、こいつらを連れ出したのだ。


「見えてきたな。あれだ」


 俺は御者台から馬車に乗っている四人に話しかけた。


「あれが、先生の言っていた牧場なんですか?」


 クレアが窓から外を覗きながら質問してくる。

 以前、こいつらを食事に招いた時の事。俺はある牧場から多くの食材を取り寄せていた。

 それがこの牧場である。


「着いた~。ずっと座ってたから腰痛~」


 ステラが馬車から飛び出し、大きく伸びをする。

 牧場はかなりの面積を有していた。

 育てているのはほとんどが牛であるが、鳥や羊もいる。


「空気がおいしいですね」

「そうかしら? ちょっと獣臭くありませんか?」


 対照的な意見を言う、クレアとシャルロッテ。

 セリスは柵のそばにより、羊を興味深げに見つめながら、むしった草を与えようとしていた。


「セリス。今日は別に牧場見学に来たわけじゃねーンだよ。こっち来い」


 手招きでセリスを呼び戻すとセリスはステテテとこちらに走ってくる。

 なんとも小動物みたいなやつだ。

 それからロッジのようなこじゃれた小屋に俺達は入る。

 牧場の中にあるレストランである。


「今日はお前たちに肉を食わせてやる」

「え、お肉ですか? そのためにわざわざ」


 クレアが俺のご褒美を聞いて少し驚く。


「わたくし、お肉はあんまり」

「あたしは好きっすよ」

「あたしも」


 シャルロッテはあまり肉は好きでは無いようだ。ステラはまあ、らしいと言えるだろう。

 セリスは家が教会のはずだが、そのあたりは気にしていないようだ。つーか忘れてた。

 椅子に座ると、ほどなく、厨房から大柄の男が現れた。


「スティーグ様。此度はご寄付ありがとうございます」

「相変わらず流行っていないようだな。経営は大丈夫か?」

「いやはや、きつきつでして。本当にご寄付は渡りに船でした」

「なら、今日は期待していいんだな?」

「もちろんです。五人前で?」

「ああ、頼む」


 簡単な注文を済ませると男は厨房に入っていった。


「先生。この牧場の寄付をしたんですか?」


 クレアが驚く。


「ああ、この牧場は経営難でな。だが、ここがなくなるのは人類の損失だ」

「そんな大げさな・・・」


 俺の発言にステラが呆れる。

 ふふ、今に見ているがいい。

 しばらくすると、じゅうじゅうと音を立てて男がステーキを運んできた。


「お待たせしました」

「うまそうだ。並べてくれ」


 男はステーキを素早く並べると退場。

 テーブルには焼きたてのステーキがうまそうな音を立てて、肉汁を流していた。


「ボリュームありますね」

「200gはあるかしら?」

「なんか、知ってる肉と色合いが違うッすね」

「美味しそう・・・」

「さあ、食うぞ。まずは塩だけで食べてみろ」


 四人はナイフとフォークを使い肉を切っていく。


「あ、すごい柔らかい。ナイフがすっと入ってく」


 クレアが驚く。

 しかし、驚くのはこれからだ。

 四人は期待を込めて肉を口に運ぶ。


「「「「!!!!!!!!!!」」」」


 俺は口に運んだ四人を見てしてやったりと笑う。


「す、すごく柔らかい。というか、お肉が口の中で、と、溶ける!」

「なんなんですのこのお肉! これは、甘味? お肉が甘いなんて!」

「そうだ。これが肉だぁ!!」


 上級生二人にドヤ顔で我ことのように自慢する俺。


「こ、これが肉なら、今まであたしが肉だと思っていたあれはなんなんすかぁーーーー!!!!」

「ゴム肉だ」

「・・・超! 美味」


 再び男がやってきて、俺にライスを提供する。


「スティーグ様はこれでしたね」

「ああ、待っていたぜ」


 俺は肉を口に頬張る。

 たまらん!

 そして、すかさずライスを肉が口に残っているうちに頬張る。

 た、たまらん!!

 肉と米のコラボ。これ最強。

 それから俺達は無言で肉を頬張り、あっという間に平らげてしまった。

 真にうまいものを食する時。人は言葉を忘れる。


「・・・けぷ。美味しかった」

「あら、セリスさん。はしたないですわ」


 セリスに注意を促すシャルロッテ。こうしてみると姉妹のようにも見える。


「でも、この牧場。あまり流行っていないんですね。場所が街と離れすぎているからかしら?」

「それだけが理由じゃねーだろうな。このメニュー表を見な」


 俺はテーブルの端にあったメニューをクレアに渡す。


「えっと、え? ステーキ金貨十枚・・・」

「「え!?」」

「あら、結構なお値段ですわね」


 名門貴族のシャルロッテは置いておいて、庶民の三人は目を丸くする。


「高い! 高すぎるっす!! 数か月は余裕で生活できますよ」

「・・・・・・た、食べちゃった」


 戦く、ステラとセリス。

 まあ、庶民としてはその反応が正しい。

 普通の平民は金貨二枚ほどが、月収でもらえればいい方だろう。十枚はそれほどの破格の値段なのだ。


「お前らが驚くのもわかる。おかげでこの牧場は閑古鳥が鳴いているのさ。だがな、ここの経営者。さっきのおっさんだが、あいつら一族は五代かけて、これだけうまい牛を作り出した。昼も夜も関係なく、経費を度外視で、すべてを牛に捧げているといっても過言じゃない。そして生まれたこの肉のうまさはお前らも味わった通りだ」

「た、確かに、この美味しさにはそれだけの価値がありますわね」

「それでも、金がなくちゃ牧場は経営できないからな。俺が支援してやっているわけだ。ここがなくなるのは人類の損失だからな」

「食べた後で聞いたその言葉には確かな重みが!」


 ステラも納得したようだ。


「・・・先生は、お金持ち?」


 お、セリスが鋭いところを聞いてくるな。


「ああ、この前のドラゴンゾンビから取れたドラゴンオーブな。売ったら金貨千枚になった」

「「「「はっ?」」」」

「ドラゴンオーブってのは超貴重なんだよ。商会でオークションが開かれてな。なんと千枚だぜ。せっかくだから有効利用しようと、ここに寄付した」

「ななななな! なんてことするんすか。みんなのお手柄でしょう! 山分けっすよぉ!!」

「お前ら食ったじゃないか! 金貨十枚食っただろ! いいじゃないか!」

「ぐぅ。汚い。汚いっすーーーーーー!!」


 ステラが納得いかないと俺に食って掛かる。でも、いいじゃないか。金なんて持っているより有効に使った方がいい。それでこの牧場が経営できるなら安いものだろう。なあ?


とあるステーキハウスで奮発してA5和牛を食べた時の感想をもとに書きました。

いや、マジうまかった。

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