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スティーグVSゴーゼン

 スティーグとゴーゼンは真っ向から対峙した。

 ゴーゼンは愛剣ツーハンデットソード改を持ち上げると肩に担ぐ。


「噂によると貴様はアドルフに勝ったことがあるそうだな?」

「知ってるのか?」

「くっく。いいことを教えてやろう。あいつがまだ若い頃、剣の手ほどきをしたのはこの私だ」

「ほぉ」

「貴様の剣も中々の切れ味だ。おそらく名のある名工が打ったものであろう。だが、所詮は長剣。我が剣の敵ではない!」


 ゴーゼンは大きく振りかぶると巨大な大剣を勢いよく振り下ろした。


「受けよ!!」


 大剣は威力を代償に隙が大きい武器だ。

 故に振り終えた隙をついて懐の入るのがセオリー。

 これほど巨大な剣であれば、切り結ぶなど愚の骨頂。

 だが、スティーグはあえてゴーゼンの言葉通り、振り下ろされた大剣を自分の剣で受け止めた。

 衝突の瞬間、凄まじい金属音が響き渡った。

 スティーグの足元の乾いた地面に亀裂が入る。

 崩れることなく、見事ゴーゼンの剛剣を受け止めた。


「驚いたぞ。我が剣をまともに受けて折れぬとは。だが、これで終わりではない!」


 ゴーゼンはもう一度剣を振り上げると再び振り下ろす。

 それも連続で、何度も何度も繰り返す。


「まだまだまだまだまだまだーーー!!!!」


 金属音だけが辺りに響き渡る。

 その光景に騎士団は息をのむ。

 常人であれば振り上げることすら困難な大剣を棒きれの様に振り回し、それを何度も叩きつける。

 あまりの苛烈さに、ゴーゼンが味方であることも忘れ、身震いする騎士も現れた。

 スティーグの足元の亀裂は次第に広がり、靴が地面にめり込むのではないかと思われた。

 どれほど、繰り返されただろうか? とうとうゴーゼンが攻撃を止め、一度距離を取った。

 息をする間もない連続攻撃だったため、酸欠を起こしたのだ。

 呼吸を整え、ゴーゼンは汗を拭いながらスティーグを称賛した。


「っはぁ。お、驚いたぞ。私の連続攻撃に耐え抜いたのは貴様が初めてだ」

「そりゃどうも」

「驚嘆すべきは貴様の剣よ。長剣でありながら、私の剣を受け止めきるなど、恐るべき強度だ」

「自慢の剣なんでね」

「だが、貴様の腕はどうかな? もはや痺れてまともに動かすことも叶うまい」


 ゴーゼンは勝利を確信する。

 耐えきった事は予想外だったが、もう一度あの連撃を受けきる力は残ってはいないだろう。

 呼吸を整えたら勝負を決めるつもりでいた。


「こっちのことより、自分のことを心配したらどうだ?」

「何?」


 スティーグは黙って、ゴーゼンの握りしめた剣を指差す。

 ゴーゼンも自分の剣に目をやった。

 愕然とした。

 所々に刃こぼれが生じていたのだ。

 剣に限らず、武器は消耗品であるが、このツーハンデットソード改に限って言えばその限りではなかった。折れることはもちろん、多少傷がついても優れた鍛冶師が研ぎ直せば修復は可能だったのだ。

 だが、これほどボロボロになってしまっては元に戻すことはまず不可能だろう。


「バカな! バカなバカなバカな!! あり得ん! 我が家の家宝が。力も加えず、ただ受け止めていただけの長剣に負けたというのか!?」

「家宝だって言うなら、もうその辺でやめとけ。憐みで見逃してやる」


 ゴーゼンの目が血走った。

 平民からのこれ以上はないほどの侮辱。

 決して許されるものではなかった。


「ふざけるな! 粋がるなよ平民。この剣にかけて、この身に流れる青き血にかけて、誇り高き貴族である私が降参などあり得ん。ありうるかぁーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」


 鎧の上からでも筋肉がみちっと膨張したことが解った。

 振り上げられた大剣は先ほどの疲れをものともせずに、最大の威力をもって振り下ろされた。


「お前のそれは、『誇り』じゃない」


 対してスティーグは剣を下から振り上げた。

 超重量の上からの攻撃に対して、軽量の下からの攻撃。

 どちらが有利かなど、考えるまでもない。

 しかし、そんな常識を一切無視して、スティーグの剣がゴーゼンの剛剣を真っ二つに両断した。


「ただの『傲慢』だ」

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