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プリンスナイツ

 月の出た夜。

 スティーグは王都から少し離れた街道を歩いていた。

 いつものように特別クラスの授業が終わり、帰路に着こうとしたところ、自分を見つめる視線を感じたのだ。

 スティーグはこの気配を知っていた。

 以前、小物の貴族ラッセンを暗殺した時に感じた気配であった。

 その気配はスティーグが気づくと、少しづつ距離を取りながら移動し始めた。

 付かず離れず、一定の距離を保ちながら王都から離れた街道に誘導したのである。

 当然、スティーグはこれが罠であるとわかっている。

 事前にリセリアからエリックが不穏な動きをしていると連絡をもらっているのだ。

 だが、虎穴に入らずんば虎子を得ず。敵の誘いに乗ることでこの膠着した状況を打開できないかと考え、あえて乗ることにしたのである。

 しばらくすると、ある施設にたどり着いた。

 そこはおそらくは軍の演習場であった。

 スティーグが到着すると気配はフッと跡形もなく消え去った。同時に、複数の人間が施設内から現れたのだ。

 その数ざっと二十人強。

 全員、鎧を身に纏っていた。

 それは非常に洗練された作りをしており、一目で最上級の鎧であると見分けがついた。

 その中で、ひと際大きい男が前に出た。

 大きい。二メートルはあろう巨体であった。

 それに鎧の上からでも解る鍛え抜かれた体つき。鎧に見合う実力者だと解った。


「く、くくく。よく来たなスティーグ」

「応よ。誘いに乗ってやったぜ」

「罠と知ってのこのこやってくるとは飛んだ間抜けだな。では名乗らせてもらおう。我々はエリック王子直属の騎士団、通称『プリンスナイツ』! 私はその団長を務めるゴーゼンである」


 スティーグは目を丸くした。


「お? 言っちゃっていいのかそれ? 王様に言いつけちまうぞ」


 するとゴーゼンは膝を叩きながら笑い始めた。


「おかしいこと言ったか?」

「くっくっく。いや、すまんな。あまりにも考えが違うものでつい笑ってしまったぞ。貴様、まさかここから生きて帰れると思っているのではあるまいな?」

「思ってるけど」

「バカめ! 既に貴様は包囲されている。逃げ場はない!」


 ゴーゼンにしてみれば、スティーグがここから生きて出る方法は逃げの一択しかないと思っていた。自分達が倒される事などそもそも考慮にすら入れていない。

 周りの騎士達も釣られて笑い始めた。

 スティーグはそのことが可笑しかった。


「確かに、これは傑作だな。バカ王子に仕える奴は同じくバカか」


 笑い声がピタリと止み、辺りは剣呑な空気に包まれた。


「どうやら、王子の言っていたことは本当の様だな。身分を弁えぬ、愚かな平民だ」

「ならこっちはこう返そうか。考えの凝り固まった愚かな貴族どもだ」

「全員抜剣せよ!!」


 ゴーゼンの怒号の命令が演習場に鳴り響いた。

 騎士達は一斉に剣を抜き、構えを取る。


「かかれぃ! この愚か者を八つ裂きにしろ!」

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