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反省会

 俺との模擬線が終わってしばらく、生徒達は意気消沈していた。


「完敗ですぅ」

「いえ、勝負にもなっていませんでしたわ」


 俯く上級生に俺は渇を入れた。


「はっ! テメエらがどうにか出来るなんて思いあがりなんだよ。小隊を壊滅できて、お前らをどうにかできないはずがないだろうが。それよりこれからお説教タイムだ。まずはクレア」

「は、はい」

「動き自体は悪くなかったが、その剣はお前には重すぎる。変えるつもりはないか?」

「え、剣ですか。それは・・・」

「何も大剣ていう武器種まで変えろとは言ってない。後ほんの少しでいいから軽い剣に変えろ。それだけでお前の動きは格段に良くなる」

「ほ、本当ですか? ・・・でも」


 そういえば、こいつの実家は武器屋だったか。何か思い入れがあるのかもしれないな。


「その武器は実家で売っている武器なのか?」

「え、はい。そうです」

「なら、家からもう少し手頃な武器を選んでもらうってのはどうだ?」

「わ、わかりました。聞いてみます」


 クレアは驚いた様子でコクコクと頷く。

 ああなるほど。俺が家の事情まで配慮したのが意外だったのか。

 ふむ。どうなるかわからんが、一先ず良しとしようか。


「次、しまパンのステラ」

「サイテーー! この人マジでクズ野郎なんですけど!!」


 何やら周りの視線が突き刺さるが、適当に流す。

 俺がクズ? 超いい奴の間違いじゃね?

 まあいいや。話を進めよう。

 コホンと咳をして仕切り直す。


「戦ってる最中も言ったが、お前の剣は素直すぎる。もう少し変則的に動け」

「素直なのはいいことっす」

「阿呆。動きが読みやすいって言ってんだよ」

「そうっすかね?」

「お前の昨日のシャドーは誰を想定していたんだ?」

「誰っていうわけでは・・・」

「もっと具体的にイメージしろ。あんな右左を順番に出して倒せる敵がいるか」

「変則的。変則・・・」


 ステラは首を捻りながらうなり出した。


「チッ。後で個別指導だ。覚悟しろ」

「うへぇ・・・」


 さて、お次は。


「で、セリスだが」

「・・・う」

「なんで、最初は連携に加わらなかった?」

「それ、は・・・」

「大方どのタイミングで加わっていいか分からずに固まってたんだろう」


 セリスは驚きを露にした。

 お? こいつあまり喋らずに無表情なイメージだったが、全くって訳でもないらしい。

 セリスは俺への投げかけに答える。


「う、うん」

「昨日の自主練の時もしばらく動かなかったのは、俺が自分で考えろって言ったから、ずっと考えてたのか?」


 コクコクとセリスは頷く。

 俺は頭を掻きつつ。


「もしかして、成績が悪いのはペーパーテストで考える時間が多すぎて、最初の方しか答えを埋められずに、空欄ばかりで提出してるからじゃないか?」


 今度こそ、セリスは目を見開いた。こいつ、意外と分かりやすいぞ。


「・・・これからはお前にも特別メニューだ。最後、シャルロッテ」

「申し訳ありませんでした!」

「あ?」


 説教する前にいきなり謝られたぞ。早くね?


「先生の実力を疑ったことを謝罪いたしますわ。先生は噂通りの実力者です。わたくしが、愚かでしたわ」

「・・・」


 そういえば、これまで挑んできたやつらで、負けた後にここまできちんと詫びを入れた奴はこいつが初めてだな。

 アドルフの方を見ると気まずそうにそっぽを向かれた。大人になれない奴め。


「それはもうどうでもいい。それより、乱戦になったら魔法を使うタイミングを気をつけろよ。危うくクレアを巻き込むところだったぞ」

「「あう」」


 項垂れる二人。


「ご、ごめんなさい。シャルロッテさん。あたしがすぐに離脱しなかったから」

「いえ、そんな。わたくしが悪いのです。焦っていたのですわ。なかなか先生に一撃を入れられるずにいたので・・・」

「チョイスした魔法も悪かったな。炎は範囲は広いから周りを巻き込みやすい」

「すみません・・・」


 四人とも説教を食らってしゅんとしていたが、こちらとしてはそれほど怒っているつもりはないんだがな。

 むしろ、言うことがなければ俺が指導する必要もないわけだし。


「反省できているならいい。それだけでも一歩前進だ。おかげで課題が見えてきた。そんじゃ、今日はこれで解散」




*******


 特別授業を終えて、四人は帰路に着いていた。

 帰る方向はもちろん別々だが、ほんのわずかでも話がしたかったのだ。

 これまでほとんど関わる事のなかった四人が、今日初めて同じ目標に向かって協力した。

 昨日までクラスも学年もバラバラだった四人の関係が変わり始めている。


「先生すごかったね」


 クレアは尊敬の念を込めて三人に話しかけた。


「せめてもう少し、戦いたかったですわ」

「うーん。それはこれからの課題じゃないかな? 先生も考えてくれるって言ってたし」

「不思議な人ですわ。いい加減で何も考えてないように見えましたけど」

「・・・でも、見ててくれた」

「セリスさん?」


 セリスが珍しく話しに加わってきたので、二人は軽く驚いた。

 しかし、クレアはすぐにほほ笑む。

 きっとこれまでセリスは何を考えているのか分からない奴というレッテルを張られてきたのだろう。

 愛くるしいし嫌われている訳ではないだろうが、理解してくれる人物はいなかっただろう。


「そうだね。昨日の自習も、今日も見ててくれたね」


 今回の件で四人にはスティーグに対して不思議な信頼感が芽生えた。


「でも、セクハラ教師っすけどね!」

「「「「ねー」」」」


 ステラが笑い話の落ちにしてみんなで笑いあった。四人に芽生えた友情こそが今回の一番の収穫となった。

ファンタジー世界にペーパーテストがあるのか?

色々疑問もあるでしょうが、気にしないでください。

なんちゃってファンタジーなので。

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