尋問
俺は囚われた人間に会うことにした。
牢屋の前で女性陣を待たせる。
「お前たちはここで待て」
「ス、スティーグあんまり無理しないでね」
ミラに釘を刺された俺はニヤリと笑いながら牢屋の中に入っていった。
牢屋の中は意外なほど清潔で囚われの身としてはなかなか悪くないと思われる待遇のようだった。
何では一人の人間が鎖に繋がれていた。
その男は人相は悪かったが中々の面構えをしていて歴戦の猛者と言って良かった。
俺は男に近づく。
男は俺を見ると驚いて声をあげた。
「おいおい、どうなってるんだ。なんで人間がここにいるんだよ? もしかして俺を助けに来てくれたのか?」
男は本気で自分が助かると思ってはいないようでニヤニヤと笑いながら、俺を迎えた。
俺は静かに腰を下ろし、囚われの男を見つめる。
「お前は何者だ? なぜ、オリハルコンを盗んだ」
「俺は盗む前に捕まっちまったけどな」
男はおちゃらけた風に答えた。真面目に答える気はないようだ。
俺は質問を変える。
「お前は冒険者か?」
「さあねえ」
「誰に依頼された?」
「何を言っているのかわからねーな」
「お前は何を盗んだのか、わかっているのか?」
「どうだかねぇ」
全く話にならない。何を質問しても答える気はさらさらないようだった。
「お前の仲間がお前を助けに来てくれるとでも思っているのか? もう襲撃から大分経つようじゃないか。お前は一生ここで過ごすことになるぞ」
この一言にはある程度の力があったようで男はわずかに動揺した。
しかし、それも一瞬のことですぐにまたニタニタと笑う。
だめか。一応もう少し粘ってみるか。
「俺が口を利いてやってもいい。話せばお前を解放することもできる」
無論ハッタリだ。俺にそんな権限はない。
しかし、こいつが吐いてしまえばこいつを守ってやる義理はない。
男は俺をじっと見つめるが、すぐに目を瞑る。言う気なしということだろう。
「ご立派なプロ意識だが、一生ここで過ごしたんじゃそれも無駄に終わるんじゃないか?」
「わかってねえな」
男はふんと鼻を鳴らす。
「ここを出ても信用を失ったやつを誰が雇うよ? 誰も雇わねえ。ここでヘマをやった時点で俺の人生は終わったのさ」
男は自虐的な笑みを浮かべた。
なるほど、こいつは半場自棄になっているのか。
「なるべく穏便に済ませてやろうと思ったんだけどな」
俺はため息をついて、予め借りておいたトンカチを取り出す。
男は不審に思ったのか怪訝な顔をする。
「なあ、このトンカチ一つでどんな拷問ができると思う?」
男の顔が明らかに変わった。
「俺はここの連中のように甘くはないぜ?」
その後、しばらく男の絶叫がドワーフの村に響いた。