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ドワーフの事情

 ドワーフの言い分に俺は面食らった。


「俺達が先に仕掛けてきたって?」

「すっとぼけやがって。二か月くらい前にお前らが俺達の大事なお宝を盗んだんだろうが!」


 全く身に覚えがない。つーか、人違いだろう。


「お宝ってなんすか?」


 ステラが興味津々といった感じだ。


「あ? 何言ってやがる。お前らが盗んだんだろうが。俺達のお宝オリハルコンをよ!」

「なんだと!?」


 俺はこれまでつかんでいたドワーフの槌を手放す。すとんとドワーフは地面に落ちた。


「ってぇ! くそ、やりやがったな」

「おい、オリハルコンが盗まれたのか!」

「だから、それはおめえらが・・・」

「答えろ! ひねり殺すぞ!」

「お、おう。盗まれた」


 なんてこった。繋がっちまったぞ。エルフの里を襲ったオリハルコンゴーレムと。

 茫然としている俺達にドワーフは怪訝な顔でいる。


「なんなんだおめえ等は」

「言っておくぞ。そのオリハルコンを盗んだのは俺達じゃない」

「今さら何を言って」

「これはエルフの里の長老の紹介状だ」


 俺はドワーフが最後まで言い終わらないうちに紹介状を見せつける。

 ドワーフは訝しみながらもその招待状を読み始めた。


「ふ、ん、耳長野郎の爺の紹介状か。あの人間嫌いの連中がね」


 ドワーフはつまらなそうに鼻を鳴らす。

 そういえば、ドワーフとエルフもあまり仲のいい関係じゃなかった気がするぞ。大丈夫か?


「ま、話は分かったぜ。一応お前らの事は信じてやる。しょうがねーから、うちの爺の所に連れて行ってやらぁ」

「頼む」


 何とも口が悪いが、一応は信じてくれたようだ。

 俺達は洞窟を奥へ奥へと進んでいった。

 洞窟は進むにつれてY字の分岐が増えていき、かなり入り組んだ構造だという事がわかった。これはこのまま、こいつなしに進んでいったら迷ってしまっただろう。


「なあ」

「俺は『なあ』なんて名前じゃねー。デボってんだ」

「デボ。お宝を盗みに来た連中は本当に人間だったのか?」

「ああ、俺達はあまり外に出ないが、それくらいの見分けは付くわな。あれは人間だったぜ」

「何人くらいいた?」

「さあなあ、はっきりとは分からなかったが、まあ、七人は確実にいたな。やつら、手分けしてあれこれ物色していやがったからな」


 ふーむ。いったい何がどうなっていやがるんだ?

 人間はめったにドワーフの洞窟なんかにやってこない。

 潜在意識的に不可侵な領域となった場所には来たがらないんだが。

 俺と一緒にいるこいつらは別にして。俺は後ろの女性陣を見つめながら考えた。

 ステアがひょこっと顔を出す。


「冒険者ですかね? ここをダンジョンだと勘違いしたとか」

「ドワーフがいるのに? 冒険者ならドワーフと魔物の区別くらいつきそうだが・・・」

「ドワーフを魔物と思ったとか?」

「なんだとぉ! 俺達を魔物と一緒くたにしようってのか!」

「うわあっぁ。ごめんなさい!」


 魔物と同一視されて怒ったデボにステラは焦りながら謝った。

 ったく。これから交渉しようってんだから、下手に怒らせんじゃねーっての。

 俺はステラを睨むとウインクしながら拳を頭にコツンとしてテヘっと舌を出すステラがいた。


「お前らはその人間と戦ったのか?」

「おうよ。槌振り回して戦ったぜ。だが、奴ら戦い慣れていやがった。死者こそは出なかったが、こっちは何人かやられちまった。元々俺達はそんなに戦闘が得意ってわけじゃねーからな」


 手練れの人間。やはり冒険者の線が濃厚か。

 この件が終わったら冒険者ギルドに問い合わせてみるか。


「それで? 人間たちは全員お宝を持って逃げたのか?」

「いや、一人捕まえたぜ」

「捕まえたのか!?」


 俺達は驚いた。

 だったら話は早いんじゃねーか? そいつの口を割らせてやればオリハルコンの行方も分かりそうなもんだ。


「そいつは何をしゃべった?」

「それが、うんともすんとも言いやがらねぇ。ずっとだんまりよ。殺すわけにもいかねーから、檻に入れて閉じ込めてるんだが」

「拷問でもすりゃー吐くんじゃねーか?」

「ちょ、ちょっとスティーグ・・・」


 俺の強引な切り口にミラが苦言を呈する。


「強引に聞き出せって? いや、一応縛ってあるしよ。抵抗できない相手を痛めつけるのはどうだかなー」


 ドワーフは口のきき方は悪いが基本的に温厚な種族。拷問という習慣がないらしい。言ってしまえば人間の方がよほど残虐だという事がわかる一面だ。

 と、そこまで話したところで洞窟の穴が広くなって光が差した。

 広大な空間が目の前に現れる。どうやらここがドワーフの村の様だった。


「さあ、ついたぜ。まずはうちの爺の所に案内するからよ」


 デボはそのまま俺達を引きつれてずんずん奥に進んだ。

 村に入るとドワーフ達が次々と現れて俺達を警戒したが、デボが説明をし、なんとかいさかいなく、ドワーフの長老の家まで到着した。


「おう。爺入るぜ」


 デボは乱暴にこれまで歩いて見てきた家よりも一回り立派な家のドアを乱暴に開けるとずんずん中に入っていく。

 俺達は顔を見合わせて中に入った。


「しゃっしゃ。デボ騒がしいぞ。何をしている?」


 そこにはこれまであったドワーフよりも一回り大きいドワーフの老人がいた。

 ドワーフはエルフほどではないが長寿の種族。

 推定年齢恐らく500歳前後か。

 そこまで言って長老は後ろの俺達に気が付いた。

 大きく目を見開いた長老であったが、すぐに目を細め、じろじろ俺達を見つめると次にデボを見る。


「盗人を捕まえてきたってわけじゃなさそうだな?」

「おうよ。まずはこれを見てくれや」

「ああ? なんだこりゃ・・・ち、耳長族の奴らから手紙だと?」


 長老は怪訝そうに手紙を読み進める。そして、最後まで読み終わったようだったが、なんと、読み終わった手紙でいきなりチーンと鼻をかみ始めた。


『いい!?』


 さすがに俺達は驚きを露わにする。そのまま屑籠目がけて手紙を放り投げてしまった。


「ちょっとあなたなんてことを」


 シルフィーが慌てて屑籠の前まで行くが、さすがに鼻をかんだ紙を拾い上げることはしなかった。


「ふん。あの耳長野郎の爺がここまで敬意を払うたぁ。あんた何者だい?」


 俺はひょいと肩をすくめる。


「大したもんじゃない。ちょっとあいつらの頼みを聞いただけだ」

「食えねえ野郎だ。まあ、それじゃあ、この手紙にある剣を見せてみな?」


 どうやら、鼻をかんでも内容はしっかりと把握していたようでほっとした。

 さて、一万二千年前にドワーフが打ったこのダーウィンスレイブだが、今のドワーフは技術を継承しているのか?

 継承していたとして、この剣を打ち直してくれるのか、はたして・・・

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