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新たな旅立ち

女性陣営は羞恥のあまり身悶えてしまっていた。俺は小さく嘆息する。


「お前ら、人が真面目に悩んでるのにキスのことを考えてたのか?」

『もういっそ殺してーー!』


顔を真っ赤にして泣き叫ぶ女性陣営。しかし、そこで手を緩めないのが俺である。


「ふしだらな」

『うあああああああ!!』


うん。面白い。

しかしこいつらなんで俺にキスをしたがるんだ? 思春期特有の興味か何かか?

 先ほど、アドルフが来たのだが、この惨状を見ると今日は授業にならないと思ったのか、さっさと帰ってしまった。ある意味場の空気の読める奴である。

もうこいつらのライフはゼロの様なので俺はからかうのを止め、ダーウィンスレイブを鞘から抜く。

するとそこには細いがくっきりと剣の根本辺りに一本のヒビが見て取れる。

なんなんだろうなこの気持ちは? 長年共に戦った相棒が瀕死にある。

それゆえの心のざわつきだろうか?


「お兄様」


心配そうにしているアティシアの頭を撫でて、俺は決意する。


「決めた。ドワーフの里にいってくるわ」

「エルフの長老にもらったあの招待状を使うんですね?」

「そうだ」


 俺は頷く。

 どうもこのままでは次の脅威に備えるとか以前に落ち着かない。

 こいつらにはしばらく自習をしてもらって、さっさと行ってくるか。


「そうと決まれば、あたしも行くっすよ!」

「もう居残りはごめんです」

「わたくしもいきますわ」

「ねえ、今回は戦闘とは違うのよね。だったらあたしも行こうかな?」


 前回残ったメンバー達が口々に自分達を連れて行けと言い出した。

 うーむ。まいったな。ドワーフもエルフと同じく人間嫌い。連れて行けるのは半数が限界だろう。

 と、すると確かに連れて行くのならば前回連れて行かなかったメンバーを連れて行くのが面倒が少なくてよさそうだが。


「いや、つーかな。お前ら別に来なくてもいいんだぞ?」


 今回来てもこいつらに特にやることはない。

 まあ、精々ミラに世話をしてもらうことがある程度で。


「何を言いますか。先生のいるところ常に我々も共にあります」


 シルフィーが当然とばかりに胸を張る。

 シャルロッテとステラも頷く。

 なんだろうな。教師と生徒の関係というよりもなんだか親衛隊かなんかみたいになってきている気がする今日この頃である。

 残りのメンバーは前回俺と出かけたので譲る気持ちが生まれたようで――


「ちょっと待ちなさい。それを言うならお兄様の行くところ常に私ありです」

「前回はじゃんけんで公平に決めたんだから、今回もじゃんけんがいいんじゃないかな?」

「先生のそばにいる」


 譲る気持ちは生まれなかったようだ・・・

 アティシア、クレア、セリスは自分達の権利を主張し始める。

 シャルロッテがそれはずるいと主張を払いのけようとする。


「あなた達、この前先生と一緒に行ったじゃありませんか(先生についていけばキスのチャンスも生まれるかもしれません)」


「お兄様のお世話は私の務めです(わ、私がキスする云々はともかくとして、誰がお兄様と親しくなるのかはしっかりと管理しないといけないわ。妹として)」


「あらあらアティシアさん。お世話ならあたしがするから大丈夫よ(普段、戦闘だと一緒に行けないもんね。数少ないチャンス。ここで決めるのよミラ!)」


「お、お世話ならあたしでもできます(先生とキス。先生とキス。あ、あたしもその気になれば。はわわわわ~)」


「クレアさん。お世話をするだけが能ではありません。先生のそばで付き従い、先生の力になるお役目、このシルフィーが見事努めてみせます(わ、私が先生と恋仲になるなど、許されるのか。し、しかし、他のみんなはその気だし。もしかしたら私にもチャンスが)」


「待ってください。ぜーったい、ぜーったいあたしは付いていきますからね(愛は奪い合い。まずはその唇、今回の旅で絶対あたしがもらう)」


「ステラずるい。行くのはあたし(ちゅう。愛し合う行為。聞くところによるとすごく気持ちのいいことらしい。確かめたい。な、なんか考えただけで顔が熱い!?)」


 若干、うぜーな。なんでこいつらこんなに張り切ってるんだ? 今回は剣の修復に行くのが目的だぞ。

 鼻息を荒くして自己主張をしまくるメンバーに引き気味の俺だが、ここはさっさと決めてしまった方がいいだろう。


「あー、うっさいな。前回行けなかったメンバーでいいだろう。そっちの方が後腐れがなさそうだ」

『いやったー!』

『ええー・・・』


 対照的な反応を示す女性陣達。しかし、前回同様に遊びではないのであまり浮かれ気分でいてもらっては困る。


「ドワーフはある意味、エルフよりも頑固だぞ。エルフの里は救援目的だったし、なんか色々あって歓迎してくれたが、今回はそうはいかないんだ。あまり浮かれた気持ちでいるなよ?」

『はーい』


 本当にわかってるのかねこいつらは。

 本当にこのダーウィンスレイブを修復できるかはわからないが、現代の人類の力ではこいつは手に余る代物だ。

 石頭の揃ったドワーフ達が修復してくれる保証はないが、エルフの長老の招待状もあるしな。

 取りあえず、行ってみるか!



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