指名依頼
すでに二月ですがあけましておめでとうございます(´・ω・`)
--指名依頼
「今日も頑張るわねー。怪我しちゃダメよー?」
「もちろんです。怪我なんかしてたら師匠にどやされますし」
「…そう、大変ね」
「では行って来ます」
「気をつけるのよー」
師匠と別れたその日の夜から精力的にギルドで依頼を受けていたら受付嬢のおねーさんに妙に気に入られてしまったルブラです。おはようございます。
リアとマヤはあの日からはいつも以上に張り切っている。
やはり早く師匠の隣に並びたいんだろうね。
ちょっと前にギルドから師匠のことが書かれた本を見せてもらった。
内容はひどいものだった。
いや、そう見えるように書かれていた。
でも結果としてその行動の裏では問題が解決したり騒動が治まったりしていた。
書く人が違えば英雄譚になるぐらいにいろいろと。
冒険者最短Sランクのおじーさんの話も聞いたけどやはり師匠を間近で見ていたせいかあまり興味はわかなかった。
そんな人の隣に立とうというのなら最低でも師匠と同じSランク。
それも全員が。
その為にウォートは訓練所にいた回避盾の冒険者についてさらなる技術の向上を求めているみたい。
一週間しかたってないけど見るたびに動きが精錬されてて身体の芯がぴっと一筋入ったように見える。
もう僕じゃ攻撃当てられないんだろうなぁ。
「ルブラ、今日はなんの依頼?」
闘技場の入り口をぼんやり見ながら考え事をしていたらリアにわき腹をつつかれ「ふぉぉぅ」とか変な声が出てしまった。恥ずかしい…。
「いつものゴブリン退治だよ…と思いきや、今日の依頼は洞窟調査」
「いつもと趣向が違うね?」
「ギルドからの指名依頼だからね。ただの調査なのに指定ランクがCってのはちょっと気になるけど」
「そうね…。戦闘の可能性有、ってところかしら…」
マヤが顎に手を当てて考え込んでいる。
多分師匠と離れて一番急成長したのはマヤ。
精神的に何かが変わったのか、言動や考え方が急に大人びてきていて、たまにドキッとする。
「往復で八日。探索で二日。それ以上は別依頼になるそうだから深入りはしない、といった内容」
「わかった。食料と雑貨見てくる」
リアとマヤカは必要と思われるものを市場に買いに行くのを送り出し、僕は馬車の手配をしておこうかな。
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「もう少しでつくんだっけ?」
「うん、この調子で行けばあと半日もしないでつくみたい」
洞窟に向けて出発し、魔物を狩りながら進んで三日。
あとちょっとと言う所でまた夜になり野営が出来そうな場所を探して火をおこす。
暗闇になる前に明かりと暖を確保できた。
さっき捕まえた首狩り兎の皮をはいだ物をと干し肉を枝に刺して焚き火で焼き、夕食にする。
「さて、依頼のおさらいをするよ。目的は洞窟の探索。探索期間は二日程度。階層と出てくる魔物の種類が調査対象」
「迷宮だったらどうするの?」
「入った直後にそれは確認する。もし迷宮だったらその場で撤収。その後ギルドに報告ね」
「一階くらいは探索しても…いいと思う」
リアが食い下がってくるけど断固としてダメだということを諭す。
「たとえば一階にテレポーターとかの罠があっていきなり最下層に持っていかれたらどうするの?石の中に転送されることもあるんだよ?」
「……」
「常に最悪を想定しろ。これは師匠の言葉だったね…」
「そうだね。迷宮だったら探索は手馴れた人達にしてもらうのがいいと思う。僕らはまだ未熟だから」
「悔しい…」
納得してくれたかな?
「さて、じゃあ今晩はゆっくり寝て明日、頑張ろう」
見張りは僕がやるからね。
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日が昇る前に起きて半日移動。
その間見張りをしてて寝てなかった僕は馬車でぐっすり。
途中で岩を踏んだらしくて揺れたのがなければね…。
目標の洞窟の前に到着して、準備をする。
岩山に掘られたような洞窟でよく山賊とかの住処にされていそうな見た目。
中から饐えた匂いとか血の匂いは感じない。
明かりは奥まで届いておらず二十歩ほど先からは真っ暗になっている。
武器や防具を装備し、近くで生け捕りにした首狩り兎を洞窟の中の見えるところに投げ入れる。
それをリアが弓で射抜いて絶命させて様子を見る。
迷宮だった場合は一刻程度で吸収されて魔石のみが残るはず。
「さてどうなるかな」
ウィートが腕を組んだ仁王立ちの状態で見ている後ろでリアとマヤが兎を見ている。
…一刻たっても兎は消えない。
念のためあと半刻。
問題なさそう。
「大丈夫そうだね。一応罠とか崩落に気をつけて中に入ってみようか」
「りょうかいー」
念のためリアとマヤが『閃光』と『炸裂』を洞窟の奥の方で発動する。
遠くの方で眩しいと思えるほどの明かりの後に少し遅れて乾いた破裂音が反響して聞こえた。
ざっと二百歩程度はまっすぐだね。
動物や魔物がいれば今ので洞窟の外に出てこようとするだろうけどそういった気配はなにもない。
何かが住み着く前に発見できてたのかな。
薄暗い程度の明かりを頭上に浮かべて洞窟の中を進む。
迷宮のように踏み慣らされた地面ではなく、岩肌むき出しの歩きづらい路面。
ところどころの壁に亀裂が入りいつ崩落してもおかしくない状態になっている。
入り口から入ってまっすぐ二百歩。
さっき明かりが炸裂したところまでついてあたりを見回すとあと三十歩ほどで岩が積み重なっていて突き当たりになっている。
突き当たりを調べてみると、横の壁や地面自体には何もないが、ちょうど岩の足元に隙間があり、中を覗くと向こう側に空間があることがわかった。
「さてどうするかな…。ギルド依頼としてはここで終わって帰っても達成だと思うけど」
「行くべき」
「行かないの?」
「…へたれ?」
なんかさらっとひどいことを言われた気がする。
「うーん。じゃあとりあえずこの隙間の周りを崩して状況判断。岩が崩落したら撤収。いい?」
「問題ない」
岩がある突き当たりから離れてリアが弓を構えて岩と向かい合う。
僕らはその後ろで待機。
リアが弦を引き絞ると同時に弓自体が淡く光っていく。
その光が弦をとおり、矢に集まり、鏃に集約される。
それを数回繰り返して鏃の部分は見ることも出来ないくらい眩しくなっている。
…あの、威力高すぎませんか、それ。
「弓術技能彗星乱舞」
弦から手を離した瞬間、弓のしなりが戻る甲高い音と同時に彗星のように光が帯を引いた状態で岩に突き刺さる。
その伸びた尾が徐々に矢に追いついたその瞬間に。
岩が轟音と共に爆ぜた。
押し寄せてくる爆風と石つぶては矢を放った直後にマヤがリアの前で風で壁を作ってくれていたので影響はなかった。
でも……たしかこれ、前に屋台で使ってなかったっけ?
こんな危険な技なのね…。
「…またさっきの確認する」
「いや、ちょっとまって」
またマヤとリアとで『閃光』と『炸裂』を唱えようとしているが、目にギリギリ見える奥の地面に青白い光があるのがわかった。
「んー、よく見えないけどなにかあるよね。あの光ってるやつのあたりに明かり出せる?」
「やってみる」
マヤが手を翳して魔術を発動させると白い光が出た瞬間に青い光の地面に渦を巻きながら吸い込まれていってしまった。
「……」
何が起こったのかわからない状態でみんなで見合わせる。
…こうしてても終わらないか。
何があってもすぐ対処できるように恐る恐る近づいて、その青い光に近づく。
特に何事もなく青い光まで到着し、よく見ると、地面にあったのは魔術陣だった。
「魔術陣…だね…」
「魔術陣…だな…」
地面に書かれた魔術陣は線に沿って脈打つように青白く光り、陣の周りで魔力が渦巻いている。
「なんの魔術陣か、わかる?」
「…まったく見たことない。陣が細かすぎ」
魔術が得意なマヤとリアでもわからないものなのか…。
師匠ならわかるんだろうなぁ。
「よし、何があるかはわかった。なんかわかんないけど。とりあえず戻って報告して終わろう?」
「そ、そうだね…。首を突っ込むとなんか嫌な予感がする」
「異議なし」
「…撤収」
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「では口頭報告は以上です。後ほど書面にて起こしたものを提出します」
「はい、お疲れ様でした。こちらが報酬です」
「ありがとうございます。では後はお願いします」
銀貨がそれなりに入った小袋を渡されカウンターを後にし、仲間の下へ戻る。
テーブルの上にはそれぞれ頼んだ飲み物が置いてあり、僕の分も用意されていた。
「おかえりー」
「報告おわったー」
「おつかれー。でもあれ、なんだったんだろうねぇ…」
「まぁ調査してくれるでしょ。周りには『優秀な先輩たち』がいることだし」
わざと回りに聞こえるように少し大きめな声で言うと回りで飲んでいる先輩たちの数人が「見所あるじゃねぇか!」とか「まかせとけ!何の話はわからねぇがな!」と言って騒いでいる。
…ちょろい。
でも…なんか変なものを見つけてしまった、とかじゃなきゃいいんだけどね。
そして何でこれが僕達への指名依頼だったんだろう。
謎ばっかりだ。
今年はできるだけ隔週くらいで投稿していこうかなぁ。と思っています。
応援のほどよろしくお願いします。




