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狐の小娘

こっそり(´・ω・`)

--狐の小娘(もふもふ)


 宴会の後のほろよい気分で買った家まで歩く。

 夜の風は火照った身体にちょうどよく、首元を冷やしてくれる。


 家まで歩く頃には酔いも抜けてしっかりしてきた。

 さて、あの駄犬、ちゃんと大人しくしてるだろうかね。


「帰ったが?」


 扉を開けすぐ目に入る部屋には昼前までとは違い、テーブルや椅子、簡単なベッドやタンスのような物が置かれ生活するに不便がない様になっていた。


「お帰りなさいませ、主様。室内で必要と思われる物は揃えておきました」

「ご苦労さん。これが宴会の土産だ」


 先ほどの宴会で包んでもらっていた食べ物をシルヴァに渡すとそれをテーブルの上に置いてまたこちらに寄ってくる。


「主様、例の娘の件ですが」

「おう、気がついたか?」

「はい。しばらくは怯えていましたが同じく獣を元とする者とわかってからは少しだけ警戒を解いてもらえたようです」

「ふむ。続けろ」


 椅子に座り、顎で先を促す様にすると、シルヴァも向かいに座り続きを話始める。


「出身はよくわからないということですが、小さい村だったようです。両親は人族。突然変異か先祖がえりかはわかりませんが半獣人(ハーフビースト)として生まれた瞬間、親に捨てられたみたいですね」

「それでよくいままで生きてられたな」

「村を訪れていた商人が見世物としてでしょう、その夫婦から買い取って王都までつれてきたそうです」

「ふむ?それだとなぜここに一人でいるんだ?」

「王都につく寸前にその商人は盗賊に襲われ命を落とし、盗賊に連れ去られ、しばらく盗賊の住処で育てられたと言っていました。その後盗賊は討伐され、ギリギリで逃げ出した所でスラムに住み着いた、と」

「波乱万丈だな、ずいぶんと」


 見た目はやせ細っていて正確な年齢はわからないがまだ五~六歳だろう。

 そんな年齢でこれだけ人の生き死にに関わってきてるのも珍しいものだ。


 しかし…それにしてもずいぶん情報がしっかりしているものだな。


「その話は本人から聞いたのか?生まれてすぐの話なんて普通は理解できていないだろう」

「いえ、盗賊近辺の話からは本人ですがそれ以前の話は情報屋を使いました」

「だよな。赤子の時からのことを理解してたらすごいわ」


 しかし…まともに受け答えできる程度の会話を仕込まれていたのか。

 その盗賊達、案外まともだったのかもしれないな。


「それで…その本人はどうしているんだ?」

「はい、まだ地下の部屋で寝かせてあります。一応再度清潔(クリーン)をかけておりますが匂いまではまだ取れていません」

「ふむ、まずは風呂、そして飯だな。湯屋はこの辺にあったかな…」

「地下は拡張していいとのことでしたので地下室の隣に作ってしまうのもありではないでしょうか?」

「そうだな。頼んでもいいか?」

「喜んで!」


 命令されて喜ぶとは…やはり性根はわんこか。

 その間に俺は転移門でも作るか。


 入り口の扉の内側に魔力線で魔方陣を刻んでいく。

 位置名はそうだな、「王都」でいいか。

 つなぐ場所は…アルファミラの家と竜谷とオアシスの拠点でいいか。

 めんどくさいが商国はオアシスを経由すればいけるから登録拠点を増やさなくてもいいだろう。

 誰だ登録できる個数は三個までって決めた奴は。

 あ、俺か。


 この後ロザリアを迎えに行くにはあの家は繋いでおかないとな…。

 そういえば今日でロザリアと離れて六日目。

 明日には返事を聞きに行かなくては。


 了承してくれるだろうか…。

 今夜は寝れるといいが。


 一時間ほど扉の前で作業をしながら物思いに浸っていると地下からシルヴァが上がってきた。


「主様、確認と最後の仕上げをお願いしてもよろしいでしょうか」

「わかった。ずいぶん早かったな」

「気合を入れましたので」


 ドヤ顔で胸をはる残念執事を放置して地下に降りると小さなベッドの上で小娘が大人しく座っているのが見える。

 俺の姿を見て一瞬逃げ出そうとしたがその後ろにシルヴァの姿を見たからか逃げずに我慢している。


 俺、そんなに怖いのかねぇ。


 部屋の一角にあいた綺麗に整えられている四角い入り口に向かう。

 ここは今度扉を付けないとダメだな。


 穴に入ると二十メートルほどの通路が出来ており、その中間にまた、入り口があった。

 中に入るとすぐは脱衣所のような小部屋。

 その奥にまた入り口があり、奥は浴槽スペースになっていた。

 なんという土魔法の無駄遣い。


 石で出来た浴槽は十人程が同時に入れる大きさのになっており、周りは大きな岩で囲われており、その下は彫られた彫刻が飾られている。

 その口から湯が吹き出るような作りになっているように見える。


 …どこの王侯貴族の風呂だ、ここは。

 まぁ石像がマーライオンとか人魚の壺とかそういうのじゃないんだがな。ガーゴイルって。


「シルヴァ」

「はい」


 褒められるのを待って幻覚視出来るほど尻尾を振っている駄犬。


「…やりすぎだ」


 褒められると思っていたが褒められなかった事にまたもや愕然としている残念執事は放置して、どのように機能を追加していくかを考える。

 まずは給水と排水。

 給水は…そうだな。地下まで穴をあければ水でも出てくるかね。

 排水は…部屋の隅に転送路でも作って近くの川に転送するか。


 部屋の隅の壁を少し低くなるように堀り下げ、、そこに転送路の魔方陣を刻んでいく。

 その上に人が乗らない様に岩で塞ぐ。

 排水は岩の隙間から壁際に流れ込み、そこから川へ転移されていく仕組みの出来上がり。


 後は給水だな。

 風呂場の奥の方にある大きな岩の上に乗り、範囲を狭め貫通力を上げた爆裂魔光(バースト・レイ)を数回唱える。

 これで湯が出てくれば大岩の上から流れ出る感じの風呂になるだろう。


 せっかくだからシルヴァが作った石像も有効活用しようか。

 根元で切り離して口まで通る穴をあけ、同じように地面にも穴をあけ穴を合わせて配置する。


 石像の配置が終わったところで大岩の天辺から湯があふれ出してきて徐々に湯船に溜まっていく。

 湯船がいっぱいになってあふれ出た湯は転送路に向かい流れて行き、排水されている。


「よし、これでいいだろう」

「さすがです、主様」

「んじゃ後は石鹸とか桶とかタオルとかそういう小物を買って来い。ロタラ氏の所あたりに行けば売ってるだろう」

「わかりました。すぐに」


 そう言って風呂部屋から飛び出していくシルヴァ。

 迅速なのはいいんだが…。


 さて、俺は俺であの小娘と話さなきゃいかんか。


 風呂部屋を出て小娘のところに移動をし、向かい合って座るように置いた椅子に腰掛ける。


「さて、自己紹介だ。俺は一二三という」


 シルヴァがいないからかわからないが怯えながらゆっくりと口を開き始める小娘。


「ニルという」

「わかった。ニル、君は今後どうする?」

「???」


 質問の意図がわからないのか首をかしげるニルを見てちょっと言葉が足らんか、と思い聞きなおす。


「君が居座っていたこの家は俺のものになった。そこで選択肢を出そう。この家を出て行くか、…それともこの家に雇われとして居続けるか」


 甘いなぁ、俺も。


「え…と、居てもいいの?」

「関わってしまったものはしょうがない。ただ俺がいない間、この家を任せるにも技能もないだろうしそもそも年齢が低すぎる。だから君は別のところで一度仕事を覚えてもらう事になる」

「わか・・・った?別のところ?」

「俺の別の家だ。そこには君の先輩たちとなる人たちがいるからそこで家事や家を守るための技術を学ぶといい」

「う…ん…。シルヴァおにーさんは?」

「シルヴァは多分俺に着いてくるだろうから一緒には居られないだろうな。ただ時たま戻らせてやる」

「なら…それでいい。よろしくおねがいします」


 ベッドの上に座ったままだが土下座に近いような形で頭を下げてくるニルの頭を撫でる。

 一瞬ビクっとなったが撫で続けてたら諦めたのか力を抜き始める。


 …もふもふだ。


 狐耳や首元、後頭部や顎下等を調子にのって撫で回してると大きな袋を抱えたシルヴァが戻ってきた。


「主様…。さすがに幼女相手にそれはどうかと」


 目の前のニルを見るとすでにぐったりとして力尽きていた。

 やりすぎたか…。

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