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大宴会

珍しく連日更新!

--大宴会


「ここか…?」


 屋台を冷やかしつつ情報収集をしてたどり着いた猪食亭という食堂。

 …という噂の建物の前にいる。


 街のやつ等はあくまで食堂と言っていたがどう見ても高級旅館だよな、これ。

 しかも和風建築の。


 なぜここだけ和風なのかは知らない。

 入り口にある門扉をくぐると日本庭園的な庭を抜ける白砂利の道。

 両脇にはさすがに日本での植物はないが出来るだけ似せている松もどきや紫陽花もどきが配置されている。


 懐かしい雰囲気を感じながら庭園を歩き、奥まで進むと建物の入り口にたどり着く。

 そこには女将と思われる妙齢の女性が両手をお腹の前に組み、立っていた。


 こちらに気づくとそのまま会釈をし、「いらっしゃいませ」と挨拶をしてきた。


「あぁ、こちらで今日、ロタラ商隊が打ち上げをすると聞いてきたのだが」

「はい、すでにみなさんお揃いですよ。失礼ですがお名前を伺ってもよろしいでしょうか」

「一二三という。商隊の護衛をしていた」


 護衛じゃないけどな。


「名簿を確認してまいります。中の待合室で少々お待ちください。」

「はいよ」


 女将に連れられ玄関をくぐり、(ブーツ)を脱ぐ。

 そろそろこの和装にブーツっていうのをどうにかしたいもんだ。

 脱いだ靴を足場の横に寄せ、玄関を上ると女将が驚いた顔をしていた。


「当店は初めてでございますよね。履物を脱ぐという所作はどこかで聞いてこられたのでしょうか?」

「あぁ、いや。俺の故郷にも似たような所があってな。そこでは靴は脱ぐもんなんだが違ったか?」

「いえ、脱いでいただくのが正しい所作でございます。大抵はそのまま上がろうとするので注意するのですが…」

「あぁ、まぁ、そうだろうな」


 よく外人さんが旅館とかに来たときに靴のままで上がろうとするとか親父の所でもぶつくさ言ってたな。


「ではこちらでしばらくお待ちください。すぐに確認してまいります」

「わかった」


 通された部屋は四畳半くらいの広さで、椅子が数脚置いてある。

 テーブルなどはなく、ただ単に待合室、といった部屋になっている。


 ただそのような部屋の隅には盆栽のような物もあり、畳敷きだったりしたら普通に茶室として使えそうな感じになっている。


「あっちの人が作ったのかね…?」


 部屋を見渡していると先ほど案内してくれた女将とは違う女性が「お待たせしました」といって部屋に迎えに来た。

 その女中らしい女性に着いていくと到着したのは百人は入れると思われる大広間。

 その広間には畳らしきものがひかれ、すでに集まった面子が座り、すでに酒を飲んで騒いでいる。


「畳だと…?」


 もうこれは確定だろう。

 俺らの世界から来たやつの店だ。


「あ、師匠!こっちです!こっち!」


 上座に近い方に座っているルブラが俺を見つけたらしく手を振っている。


 上座にはロタラ率いる商隊の上役連中、護衛として動いていた深紅の斧の面子とルブラ達小僧ども。

 中座には見慣れない顔が多いが聞こえてくる話から察するに商会の管理職達かな。

 下座には丁稚とか見習いとか新人達だろうか、若い連中が多い。


 コの字に配置された座卓の後ろを壁沿いに歩いてルブラの方に向かうと座る位置を指定される。

 ちょうど角に当たる部分が俺の席らしい。


 隣にはルブラ達小僧共が陣取っている。


「では主役も揃いましたので始めます!」


 ロタラがグラスを掲げ、立ち上がる。

 それにあわせて座っていた連中は皆立ち上がり、同じようにグラスを掲げる。


「長い話は抜きにします。今回の商取引ではいろいろ得がたいものが手に入りました。今後もよい取引が出来ることを願って。乾杯!」


 うん、非常に短く簡潔でいい挨拶だ。

 こういう場で長々と話する上司とか嫌われるもんな。


 皆、各々隣り合った者同士でグラスを合わせ、乾杯をしていく。

 小僧共はまだ酒は飲みなれていないのか、軽い果実酒とジュースを飲んでいる。


 目の前に並んでいる料理は、と目をやると並んでいるのは懐石料理に似ている和風料理。

 てんぷらや刺身、魚の煮付け、澄まし汁なんかがお盆の上に並んでいる。

 …いや、美味しそうなんだけどさ。

 ステーキ屋の時も思ったことだけど、違う世界に来てまでなんで向こうの料理食わなきゃいけないのよ。


 そして懐石料理ならフォークとナイフじゃなくて箸を用意しろよ…。


「おや、ヒフミさん、何か不手際でも?」


 微妙な雰囲気を醸し出していた俺の気配を察したのだろう、ロタラが声をかけてくる。


「いや、なに。懐かしい料理だな、とおもってな」

「ほう、以前に食べた事がおありで!」

「あぁ。そのときは箸というものを使って食べていたんだがここでは用意されていないのか?と考えていたところだ」

「ハシを使えるのですか。さすがですな…。女中に持ってこさせましょう」

「あるのかい…」


 ロタラは近くで使用済みの皿を片付けている女中に声をかけ箸を持ってこさせている。


「師匠、しばらくの予定を聞いてもいいですか?」


 隣に座ってフォークで器用に魚を食べていたルブラが聞いてきたが「次に行くところがある」とだけ伝える。

 残念そうな顔をしている小僧共だが…すぐに俺のことなんかかまってられなくなるぞ。


「そういやお前ら、そのうち王城から指名依頼が来るぞ」

「「「「えっ」」」」

「俺の弟子ってことで紹介しておいた。依頼の内容は聞いてないがまぁ、おまえらならなんとでもなるだろ。というか、しろ」


 小僧共は俺の言葉に開いた口を塞げない者、気にせず飯を食べている者、「弟子…」と感極まっている者、半分寝ている者、と様々なリアクションを返してくれた。

 というかリア。寝るな。


「師匠がやれない事をぼくらで出来るわけないじゃないですか…」

「やれないんじゃない。やらないんだ。めんどくさいから。まぁがんばれ」


 がんばりたまえ、若者よ。


 その後は俺も酒を飲みつつ、箸で飯を食べているところをロタラや商人達に羨望の目で見られ、程よい感じのほろ酔いになったところで宴会場を出る。

 家で小娘の様子を見ているシルヴァの分の料理をかなり多めに包んでもらい、帰路につこうとすると宴会場の人間すべてが俺に礼をしていた。


 さて、家はどうなっているかね。

 


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