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王都での新しい拠点

--王都での新しい拠点


「主様、王都ではなにを?」


 行商隊と別れた後、しばらく歩いた後にシルヴァが尋ねてくる。


「まずはアルファミラの屋敷と繋げる拠点を作る為の『小さな家』を買う」

「根に持っておられますね…」

「あれだけでかい拠点だとあそこがメイン拠点になっちまうだろうが。気分的に」

「奥方様に旅をさせるわけにもいかないでしょうしあの屋敷がメイン拠点でいいのではないでしょうか」

「まぁそうなんだがな…」


 もう買ってしまったからには有効活用するしかなかろう。

 返品してもいいんだけどな。


 そうすると一度俺の庇護可に入ったランクスやメイド達を放流することになる。

 それはなんか心苦しい。


 そうなると活用するしかないだろう。

 …後でシルヴァにはちゃんとお仕置き(やつあたり)しないとな。


 そうこうしているうちに王都でそこそこの大きさの商会の前に着く。

 たしかこの商会が小さめの不動産なんかを扱っていたはず。


 違っていたら違う所を探せばいいか。と思い、扉を開けて中へ入っていく。

 するとすぐに商人が手揉みをしながら近寄ってくる。


「いらっしゃいませ。本日はどのようなものをお求めでしょうか」


 他の商人を押しのけて近づいて北商人は肥え太っており、額には常に汗を浮かばせている生き物。

 シルヴァは生理的に受け付けないのか、臭いでなのかわからないが、ものすごく顔を顰めている。


「家を探している。小さな家だ。予算は金貨十枚だ」


 相場よりだいぶ低い額で、小さな家を求めている事を告げると「ちっ、貧乏人か」と小声で言いながら他の担当に変わると言ってまた奥へ引っ込んでいった。


 …よし、今後あいつからは買わないようにしよう。

 替わりに、まだ少年から青年に移り変わる位の年齢のが台帳を持って来た。


「担当を替わります。リィフォンと申します。よろしくお願いいたします」

「一二三だ。こっちはシルヴァ。建坪が少なく、部屋数の少ない隠れ家の様な家が欲しい。いわくつきでも構わないから安く買いたい。モノはあるか?」


 自己紹介がてら欲しい家の要望を告げると「少々お待ちください」と台帳を捲り始める。


 出された紅茶を飲みながら待っているとリィフォンと名乗った少年が数枚の羊皮紙を差し出してきた。


「ご要望に答えられそうな物件が数件ございました。ご紹介させていただいてよろしいでしょうか」

「頼む」


 きちんと丁寧な言葉で接客をしてくるリィフォンに好印象を持ち、ある程度の範囲なら融通を利かせてもいいかと考える。


「まずは一軒目、城壁外の物件です。部屋数は二、一階建て一軒屋、背の高い建物に囲まれている日当たりは最低です」

「城壁外という事は…スラムか?」

「スラムではないですが、色街の中となります。娼館の裏ですね」

「ふむ。大きさなんかは希望通りだな。次は?」

「二軒目は、中央通りの道沿いにある店舗となります。部屋数は四、二階建ての一軒屋、以前は食堂をやっていたようで一階部分が店舗となり、二階に三部屋ある物件となります」

「なんでそんな立地がいい所が安いんだ?事故物件か?」

「事故物件とは言いえて妙ですが、問題がある建物ではあります。周りに住んでいる人達が…なんというか、その」

「なるほど。大体理解した。他の物件はあるか?」


 一軒目と二軒目の話を聞いた時点できちんとこちらの要望を汲んでいてくれていることが判ったので他にも物件があるなら紹介してもらおうと思う。


「ご紹介できる最後の物件です。場所は北の城壁内のギリギリ壁沿いです。部屋数は一、一階建て一軒屋。広さは今ここのフロア位の大きさです。特筆点として、地下室があり、その地下室であれば拡張可能とのことです」

「条件的には一番いいな。金額によるが」


 部屋割りとしてはシルヴァがいた森の拠点と同じ間取りだ。

 部屋の広さも十六畳程はあるから申し分ない。

 ふむ、金額によるが、即決だな。


「金額は、最初のが金貨十枚、店舗が金貨八枚、最後のが金貨十二枚となります」

「よしわかった。最後のを買おう。手続きをお願いしたい」


 金貨十二枚なら有りだな。

 シルヴァの魔法鞄から金貨を出させ、机に積み重ねる。


「え、物件の実物を見ないのですか?」

「リィフォン。君を信用している。なのでそのまま契約で構わない」

「え…。傷の付き具合とか周りの雰囲気とか確認頂きたかったのですが…」

「とはいえ、リィフォンが薦められる物件なのだろう?」


 黒い笑顔をリィフォンに向けると、若干泣きそうな顔で「はい」とだけ答える。


「まぁ傷が付いてようが崩れそうだろうがそういうのは気にしない。気になったらこっちで立て直す」

「か、かしこまりました。ではこちらが物件の契約書でございます」


 机の上に新しい羊皮紙とペンとインクを用意され、契約書の内容を確認した上で、サインをする。

 本紙と写しとで二部作られた契約書をそれぞれで保管し、最後に鍵を渡される。


「急ぎのお取引になってしまいましたが良いお取引をさせていただきました。またのご利用をお待ちしております」

「あぁ、いい物件を紹介してもらった。また必要になったら声をかけさせてもらう」


 商会を出て手に入れた家に向かって歩いている最中、シルヴァが「本当にそのような小さな家でよかったのですか?」と聞いてきた。


「転移門しか置かないんだから小さい家で十分なんだ。今回はいつも使っている拠点とほとんど変わらない間取りだったから選んだんだが」

「商会に行って『一番いい家を頼む』と言えば用意されますのに…」

「それが無駄なんだろうが。この駄犬」


 駄犬と言われ耳や尻尾を垂れ下げている雰囲気のシルヴァをそのまま放置して歩き続ける。


 南の正門から入って中央南の商会で紹介されて北の城壁まで歩くこと約二時間。

 やっと目的地に着いたその場所にあったのは、白い石を積み上げて出来た、小さな家だった。


次回は3/2の予定です。


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