王都への到着と別れ
--王都への到着と別れ
出発の朝になってシルヴァを伴い、集合場所へ行く前にギルドに顔を出してダンに手続きをはやくしろとせっつく。
「後達の育成が済んでいることを確認できた。これでお前さんはSランクに返り咲きだ」
「ご苦労さん」
子供らは昨日も依頼を受けてBランク級の大物を仕留めていたらしく、先が期待出来るとべた褒めだった。
近いうちにあの子らにも二つ名が付くだろうと笑っていた。
せいぜい厨二な二つ名をつけてやるといい。
その後は街を出て王都に向かうことをダンにつげ、ギルドを後にする。
ダンがシルヴァに餞別といいながらショートソードを二本渡しているのは見なかった事にする。
変に恩着せがましくされても嫌だしな。
集合場所に行くと他のメンバーは既に全員揃っていた。
今回は俺達が一番最後だったようだ。
皆にシルヴァの紹介をすると、深紅の斧のメンバーが妙に食いついていた。
まぁBランク冒険者という紹介をしたから報酬的なところで気になったのかもしれんな。
「というわけで王都までこいつも付いてくることになった。俺の従者だから護衛料はいらない。そういうことでどうだろう?」
商隊主のロタラさんにそう聞くと「問題ありません。むしろ何かあったらご協力お願いします」と返答が帰ってきた。
自分達の報酬が減らないこともわかった深紅の斧のメンバーはほっと胸を撫で下ろし改めて歓迎の挨拶をし始める。
現金な奴らだ…。
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アルファミラの街を出発し、道程は約五日。
特筆することもなく、本当に何もなく王都についてしまった。
そうだな、それでもあえて言うと、襲ってきた盗賊の回数は一回。
これはシルヴァが速攻でダンに貰ったショートソードで首狩りをしていた。
所要時間五分。
子供らとの模擬戦闘は一対一の物が三回、俺vs子供らが二回。
一度だけひやっとしたタイミングあったがまぁ対処は出来た。
まだ負けんよ。
深紅の斧の面子もシルヴァと模擬戦をしていたようだがことごとく敗退し、モスなんかが自信喪失して田舎に帰ろうかなとか呟いていた。
後は…ロタラさんがシルヴァに防具を売りつけようとしていたが「執事は防具を着けません」の一言でぶった切っていた。
…うん、ほんとに何もなかった。
王都の正門での検問もギルドカードを見せるだけですんなり入れたし、Sランクということで騒がれもしなかった。助かる。
「では皆様。最終目的地の王都に到着致しました」
正門をくぐったところにある広場の端にある馬車置き場で商会の手伝い達が来るまでロタラさんが最後の挨拶を始める。
「約一月の道のりでしたが皆様には本当に助けていただきました。感謝いたします」
深紅の斧の三人、子供ら四人、俺、シルヴァ。
その他の商隊の商人達。
そのみんながロタラさんの言葉を静かに聞いている。
「まずは王都を出発する時から護衛頂いた深紅の斧の皆様。ありがとうございました。依頼達成表はこちらです。報酬は増額をしてありますのでご確認ください。また依頼がありましたらお声かけさせていただきますね」
「こちらこそありがとう。今回の護衛はいろいろ思う所があった。いい経験になったことに感謝する」
代表としてモスが前に出てきてロタラさんから達成表と報酬を受け取る際、握手をする。
「次に途中からですが、ルブラさん、ウォートさん、マヤカさん、ウィステリアさん。最初は護衛見習いという事で同行頂きましたが途中からの成長は目まぐるしく、将来性を感じられる程になりました。これからの活躍に期待すると言う事で少ないですが報酬を渡させて頂きます」
子供らにも報酬を渡すというロタラさんを子供らは目を涙ぐませながらルブラが代表して受け取りに行く。
「何かありましたら当商会を頼ってくださいね」
「あ゛り゛が゛う゛ご゛ざ゛い゛ま゛す゛ぅぅぅ」
涙をボロボロ流しながら報酬を受け取るルブラ以外も涙を流している。
それに釣られて商人達やモス達もちょっと涙目になっている。
なんだこれ。
「最後に、ヒフミさん。王都までのお客様という事で同道頂きましたが途中での様々な講習、教え、今までにない考え方。大変に感謝しております。当商隊の商人達皆の考えが一新されるほどの知識、経験は私達の中で今後も生きていくでしょう」
「そんな大げさな」
「いえ、大げさではありません。また、護衛の方々と併せての警護や夜営の際の見張り等もとても助かりました」
「気にするな。やりたくてやったことだ」
「そうもいきません。商人というのは恩を売っても売られるな、というのはヒフミさんのお言葉ですよね」
…そんなことも言ったな。
「なので…ヒフミさんにも報酬をお渡しします。少ないですが。ヒフミさんも何かご入用がありましたら当商会をご活用下さい」
そういって俺の前まで歩いてきて報酬が入った小袋を渡してくる。
おい結構重いぞ、これ。
ロタラさんを見ると目配せをして元の位置に戻っていく。
「つきましては一人も欠けることなく無事に王都に到着した打ち上げを今晩行いたいと思います。|六の刻がなるころ(18時)に『猪食亭』に集まっていただけますか?」
打ち上げと聞いて商人達やモス達は喜び、子供らもいままで食べたことのない食べ物に夢を抱いている。
俺は…まぁ時間が合えば出るか。
「ではこれにて挨拶を終了させていただきます。皆様お疲れ様でした」
挨拶の締めに深々と礼をしたロタラさんに拍手をすると、周りのメンツも拍手をし始める。
広場にいる周りの人が何かと振り向くが特に興味も持たずすぐに視線を戻しているが、一瞬でも注目されたロタラさんは恥ずかしそうにしていた。
「じゃあ他の奴らにも挨拶だけして俺らは別行動するぞ」
「わかりました」
シルヴァに軽く声をかけてモス達深紅の斧や子供らに挨拶をする。
子供らはまだ俺に着いてきたがっていたが「お前らは冒険者なのだろう。いつまで弟子の気分でいるんだ」と喝を入れると「すぐに追いつきます」と意気込んでいた。
まぁがんばってくれ。
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「行ってしまいましたね…」
ウォートが寂しそうに師匠の背中を見てそう呟いた。
「いろいろすごい人でしたね」
マヤが感慨深く呟く。
「あれ以上の師匠はいない…やはり着いていくべき」
リアの呟きにみんなが顔を見合う。
「いや、それはダメだ。師匠を絶望させる」
「…なんで?」
「師匠は僕らが『冒険者として』大成することを期待している。それを裏切るわけにはいかない」
そう告げるとリア以外は頷いたのが見える。
リアは不満そうにしているが、「後を着いていくより横に並べたほうがよくない?」と言うと急にやる気を出す。
「…早く師匠の横に並べるようにギルドに行く」
そう言ってリアはスタスタとギルドに向かって歩いていってしまった。
…師匠風に言うなら「ちょろい」だね。
でもリアだけじゃない。
僕らも早く師匠に追いついて師匠のチームに入るのではなく、師匠達をチームに迎え入れられるようにならないとね!
そう決意すると、リアに置いていかれない様にみんなでギルドへ走り出した。
やっと王都に着きました(長かった
次回は2/29の予定です




