月夜夢
間に合った・・・(´・ω・`)
--月夜夢
今日も夜の帳が落ち始め、今私がいる娼館、月夜夢が賑わいだす時間になりました。
お客様がいらっしゃる度に玄関ホールの先の部屋でお迎えをして、その中から選ばれた子がお客様と一緒に部屋に消えていきます。
入り口から新人の子が並んで行き、娼館の中で比較的上の方の売れ子なので並ぶ列の後ろの方にいます。
そういった並びの中、私の立ち居地は奥から二番目。
列は左右に分かれている為、三番目か四番目という立ち位置になります。
人族だけに関わらずいろいろな種族の中でのこの立ち位置はうれしい限りです。
こういった並びなのは理由があって、目当ての子がいるのであればその子の所まで迷わず進むでしょうが、その途中にいる新しい子や他の子の紹介にもなります。
…まぁ途中の子を連れ出したら、懇意にしている目当ての子の目の前で別のその子を選ぶ訳ですからその後はないと思ったほうがいいでしょうね。
逆にそういった誘惑に負けずに目当ての子のところまで辿り着いて選ばれれば、選ばれた子の方もサービスはよくなるでしょう。
そういった『人の気持ち』を利用した指名の仕組みを作った娼館のオーナーは頭がいいですよね。
まぁ私のお得意様だった人たちは…先日入った新しい子に乗り換えられてしまったわけですが。
そんな中、一人、また一人と今日の相手の子を見つけ、部屋に移動していきます。
今日もお客さんはなしですかね。
ここ数日、月も綺麗だし、また一人でお茶会でもしましょうか。
…そういえば昨日いらした黒髪の方。
不思議な方でした。
一緒にいるのが苦痛にならない雰囲気を持っていて、お互い話を聞いたり聞いてもらったりが出来ました。
確かに女性を欲する熱い視線はありましたがそれは男女が一緒にいれば必ずしも出てくるものですし、不愉快な物ではありませんでした。
また来て貰えませんかね…。
出来ればお客様として。
あぁまたお客様ですか。今日は繁盛していますね。
私の所にも新規のお客様が来てくれればいいんですが。
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その後数人のお客様がいらっしゃいましたが私の所には一人もいらっしゃいませんでした。
主任さんも今日はこれで終わりかねぇ、と言っている所で多分最後になるであろうお客様がいらっしゃいました。
玄関ロビーを抜けて私たちが待つ小部屋に入ってきたのは昨日の黒髪のヒフミさんでした。
ヒフミさんはキョロキョロと誰かを探している様でしたが私を見つけてまっすぐこっちに向かってきました。
もしかして私をご指名なのでしょうか。
そうであればとても嬉しいです。
そしてヒフミさんは私の前に立ち、手を取って「君が欲しい」と少し照れながら指名をしてもらえました。
私も「お相手させて頂きます」と指名を受けた時のいつもの返事を返すと、ヒフミさんは主任さんの所へ戻りなにやら話をし始めました。
今晩も楽しくなりそうです。
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「一目惚れした。結婚して欲しい」
「ごめんなさい」
部屋に入るなりヒフミさんは私の前に跪いて急にプロポーズしてきました。
つい咄嗟に断りの返事をしてしまいましたが。
どうしたのでしょう、急に。
あぁ、そういう演技だったのかもしれませんね。
悪いことをしてしまいました…。
目の前で両手をついてがっくりしている様子を見たらやはりそういう事だったのでしょう。
「あの…ごめんなさいね?」
「いや…唐突すぎたこっちが悪い。また話をさせてもらっていいだろうか」
「はい、それはもちろん」
そうして部屋の灯りを落として月明かりだけで照らされた部屋で今日も静かなお茶会が始まります。
「そういえばヒフミさま。今日はお客様として来て頂けたのですね」
「あぁ。毎回忍び込むわけには行かないからな。招待状手に入れるのに苦労したぞ」
「苦労、で済むレベルじゃないと思うのですが…」
「それだけ君に会いたかったんだ。ロザリア」
直球で言われるとこの年になってもやはり照れますね。
ほんの少し自分が赤くなっているのがわかります。
部屋が薄暗くてよかったです。
「嬉しいです。私も会いたいと思っていたんです」
「それは嬉しい」
心底嬉しそうな顔で笑いかけてくれた。
ちょっとドキっとしますね。なかなかに破壊力のある笑顔です。
「それでさっきの話だが…。もう一度言わせて貰う。俺と一緒になって貰えないだろうか」
「本気だったんですか?」
「本気だ。身請けという形で君を俺の物にしたい」
…これは本気ですね。
…どうしましょう。
「先ほども言いましたが…ダメなんです」
「何がダメなのか教えて貰えないだろうか。俺にダメなところがあるなら直す努力をする」
「ヒフミさまがダメな訳じゃないんです」
「じゃあ…」
…理由を言うといつものように、離れていってしまうでしょうか。
「私は……吸血鬼なんですよ。」
次回は2/22の予定です。




