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踊る執事と荒ぶる暴虐

--踊る執事と荒ぶる暴虐


 一瞬で消えたシルヴァと双剣使いが次に現れたのは一瞬すぐ後。

 その立ち位置は入れ替わっており、地面に足がついた瞬間にまた再度消える。

 足のついた地面は一瞬で抉れ、再度消えた後にその音が発生する。


 超高速戦闘すぎて周りには状況が把握できないみたいでじっと目を凝らしている。

 まぁ見えないだろうなぁ。


 シルヴァが双剣使いの『匂い』を追いかけているなんて。


 多分、だが。

 あの双剣使いは、短距離転移(ショートワープ)の様なものを使っている。

 転移し、背後に回って急所を狙うといった暗殺者(アサシン)タイプなのだろう。


 対するシルヴァは単純な超高速移動。

 元が狼である以上、人型になっていたとしても常人より素早さは遥かに高い。

 今のように本気に近い力を出していれば消えたように見える速度で動くことも可能だろう。


 双剣使いが転移して逃げる、それをシルヴァが匂いで感知して追いかける。

 これの繰り返し。

 だいぶ焦った顔になってきているな。


 それにしても短距離転移をあれだけ連続で繰り返せるのはすごいな。

 あの特徴からして草原の民(グラスランナー)だろ?

 ドワーフに次ぐ魔力のない種族として有名なのに。

 持って生まれたものか努力のなせる業なのかは知らないが賞賛に値する。

 さすがはSランクと言った所か。


 まあでもシルヴァの方は正直心配はしていない。

 勝てなくても負けはしないだろうし、このままお互いの体力が尽きるまで追いかけっこが続くんだと思う。

 それよりかは俺の相手になるあの神官だな。


 見た感じやはり武器を持っているようには見えない。

 暗器の様なものであればわからないが、別段服に膨らみがあるわけでもなく。

 …うん。残念なほどに膨らみがない。


 とか思っていたら神官からものすごい殺気を感じた。

 心を読まないで欲しい。


 その殺気でシルヴァと双剣使いの追いかけっこも中断…というか終了してしまった。

 シルヴァの方は息一つ乱していないが双剣使いの方は肩で息をしている。

 これどうするんだろ。


「た、体力と瞬発力のテストは合格。次は技量と力量を見るよ」


 シルヴァにそう言った瞬間に双剣使いが武器を構えて懐に飛び込む。

 その速度は短距離転移を使ってないとはいえ相当の速度で一瞬の間で間合いはゼロになっている。


 喉元を狙って突き出された短剣は首を後ろに仰け反らせる形で回避され、伸びきった腕をシルヴァが掴む。


 反対の手で持っている短剣でさらに追撃をしようとしたが掴まれた腕を捻られ、後ろ手にされ、地面に捻じ伏せられる。


 ぐえっという蛙が潰れたような声と共に地面から衝撃が伝わる。

 ん、終わったな。


 地面に押さえつけた衝撃で起こった土煙が晴れたと同時にシルヴァの腕をポンポンとタップしている双剣使いの姿が見えた。


「いやー、まいった。躊躇せず腕折られちゃったよー。クリン、後で直してねー」

「おおステラよ。負けてしまうとはなさけない。神はお布施を待っていますよ?」

「えー、お金取るの?同じSランクってことでどうよー」

「神は甘いものを求めている様ですよ?」

「わかったよー。治してくれたら後で甘味でもおごるさー」


 どうやら目の前の神官はクリンというらしい。

 向こうの双剣使いはステラ、かな。


 Sランクの二人は和気藹々と話している。

 もう終わったという雰囲気だな。


 うん、ちょっとイラッとした。


「では冒険者ランクF、シルヴァをBランク昇格試験合格とする」

「ありがとうございます」


 ダンが正式に終わりを告げると、シルヴァは腕を胸に当てて執事の様に礼をする。


「さて次はヒフミ、おまえさんの番だ。まぁあれだ。壊さないでいてくれると助かる」


 ダンが申し訳なさそうに言ってくるのを聞いて、検討する、とだけ答える。


 訓練所の真ん中に歩いていくとさっきのクリンという神官も後を追うように歩いてくる。


「じゃあもう言うこともないが、一つだけ。殺しは禁止だ。では開始!」


 ダンの開始の合図は声高らかに宣言がされたが二人とも動かない。

 クリンは未だに武器を構えずにベールの下でニコニコ笑っている。


「武器は構えないでいいのかい?」

「お気になさらず。神は全ての道筋を見せてくれています」


 …こういう神がどうこうって言う奴、なんかむかつくんだよな。


「じゃあ怪我しても知らない…ぞ」


 クリンの頭上に氷槍を百五十程展開し、一気に降らせる。

 逃げ場がない位の密度で落としてるのを見ると、氷で出来た剣山がさかさまになって落ちてきた様に見える。


 その氷の群れを…あろう事かこぶし一つで粉砕した。


「ほう…そりゃ武器いらないわけだ」

「神は人に手を与えました。その手は慈しむ癒しとなり、生み出す道具となり、そして傷つける武器となりました」

「さよかい。こっちも素手で相手した方がいいかい?」

「神は仰っています。『好きにするといい』と」

「わかった。では好きにさせてもらおう」


 さすがに素手相手に刀を出すのは大人気ないので同じように素手で立ち向かう。


 クリンもやっと構えを取ったのを見て気合を入れなおす。


「では行くぞ」


 身体強化(ブースト)対衝撃鎧(リアクティブアーマー)を自分にかける。

 さらに拳の回りが揺らぐほどの濃密な魔力を拳に纏う。


 その拳を一度荒く振るうと、衝撃が空を裂き、クリンの近くの地面を抉る。


 クリンはいつの間にか拳にナックルをはめており、ガツンと両拳をあわせる。

 その拳は、俺の拳と同じように揺らぐほどの魔力を纏っている。


 お互い戦闘態勢は整った。


 一触即発の状態がしばし続いた所で、観客の中の誰かがくしゃみをした。


 それを合図に、訓練所の中央から金属が激しくぶつかり合う…よりひどい、とても人同士の争いでは出ない、何かトラック同士がぶつかった様な音と衝撃が響き渡る。

 お互いの拳同士がぶつかった結果、俺の拳がクリンの拳に押し勝ち、跳ね上げていた。


 驚愕の表情をしているクリンのがら空きになった胴体に今度は左拳をねじり込む。

 しかしその身体を撃った衝撃は肉を叩いた衝撃でなく、何か鉄柱を叩いたような感触を感じる。


 その直後、首の後ろがチリチリするのを感じしゃがみ込むと、頭の上をクリンの拳が通過する。


 しゃがんだ状態から足を掴もうとするがその足に蹴られそうになり、手を添えることによって向きを変える。


 空振った足は空を切るがかすかに俺の髪を掠り、切れた髪の毛が数本地面に落ちる。


 軸足になっている足をしゃがんだ状態で払う様に蹴るのをクリンはジャンプしてかわす。


 宙に浮いているクリンに下から突き上げる様に拳を振るい、その場から弾き飛ばす。


 弾き飛ばされたが宙をくるっと一回転し、少し間合いの離れた所に着地する。


「神は貴方の技術、力量を高く評価しています」

「そりゃどうも」

「貴方の神はどのような神ですか?」

「神?俺は俺自身しか信用していないし信じない」

「残念です。では語らいはこの辺にして終わりにしましょう。私が張った結界を越え、私に攻撃を加えられたら合格とします」

「そんなのでいいんだな?」


 クリンが自身の周りに幾重もの魔方陣を展開し、結界を張る。

 ダンとかステラが驚いているくらいだからたいした結界なのだろうな。


 まぁ一撃で壊すけども。


 魔力を更に纏わせた拳を腰にためる。

 拳の通る道に多重構造の魔方陣を展開する。

 一枚通過するごとに拳を加速させる術式を仕込んだ魔方陣を突き破る様に正拳突きの様に拳を出す。


 拳は音を置き去りにし、音速を超えた衝撃を拳の周りに纏い、そしてクリンが張った結界へ到着すると同時に。


 結界がガラスが割れた音と同時に破砕し、その拳がクリンの腹に届く。


 大砲が撃たれたときのような音と同時にクリンの身体がくの字に曲がり、その次の瞬間に後ろへ吹き飛んでいく。


 …ぜったいこの感触、人体を殴った感触と違う。


 吹き飛んでいったクリンが訓練場の端にある壁に当たり、地面に崩れ落ちた所で、ダンから終了の声が上げられる。


 やっと復活したか。


「冒険者ランクF、ヒフミ・サクラザカをBランク昇格試験合格とする!」


 こうして俺は、Bランクとなった。

 

次回は2/15の予定です。

バレンタインスペシャルは残念ながらありません(´・ω・`)


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