嫁を手に入れる為の第一歩
--嫁を手に入れる為の第一歩
いつの間にかついていた眠りからも覚め、身体を起こすとシルヴァがテーブルの上に朝食を用意してくれていた。
「おはようございます。主様。なにやら良いことがあった顔をしていらっしゃいますね」
「あぁ、おはよう。嫁に迎えるべき女性を見つけた」
「それはめでたいですね。いつものように強引に連れてきますか?」
「いつもって…一度たりとも強引に連れてきたことはないぞ?」
「それは失礼致しました。『合意』でしたね」
「なんか引っかかる言い方だが…まぁいい。シルヴァにいくつかやっておいて欲しい事がある」
テーブルについて用意された朝食を食べながらシルヴァにも勧める。
失礼します、と言いながら椅子に座り同じように朝食を食べるシルヴァを見ながら満足する。
「まずはこの街の色街の側に一件家を買っておいて欲しい。大きさは小さくていい」
「『拠点』を作るのですね。承りました」
「それが終わってからでいいのであの娼館に必要な紹介状とやらがどのように手に入れられるか調べて欲しい」
「領主やギルドマスターにでも恩を売れば手に入るのではないでしょうか?」
「その線はこちらから攻めてみる予定だ。それ以外のルートを探って欲しい」
「承りました」
用意された朝食も食べ終わり、食後の紅茶を飲み干したら席を立つ。
「では頼む」
「いってらっしゃいませ」
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宿を出てギルドに向かう最中に俺自身がやる事を頭の中で纏める。
期限は今日一日。夜にはもう一度ロザリアの所に顔を出すつもりなので夕方までだな。
その間にギルドのランクを上げられるだけ上げる。
…となるとギルドマスターへの直の交渉が必要か。
考え事をしながら歩いているとすぐにギルドには到着する。
昨日やった森狼の依頼報告も必要か。
時間は有限だ。とっとと行こう。
カウンターの空いている受付嬢の所に向かい、依頼報告をする。
素材受付の窓口で玩具箱の中に入っていた森狼を全て出す。
その数二十。
「状態の確認をするのでしばらくお待ちください」
「わかった。別の依頼を見ているから終わったら呼んでくれ」
窓口の子が若干引きつりながら奥に素材を持って行くのを見て、俺もさっさと動く。
「なぁちょっと聞きたいんだが。お前の用事はいつになったら終わるんだ?」
朝だというのに列の人数が少ない所にずっと居座っている奴がいるので後ろから声をかけるとものすごい形相で振り返ってきた。
「何だお前。俺が今口説いているのが見えないのか?」
「そんなのは業務時間外にやれ。迷惑だ」
「業務時間外に誘う為に今口説いてんだろうが。そんなのもわからねぇのか?」
「いいからどけ。邪魔だ」
くっとか言いながら列から離れていく男を横目で見ながら受付嬢に向かって話を続けると「ありがとうございました」と礼を言われる。
「礼はいい。それよりかはギルドマスターに面会したいんだが手順を教えてくれ」
「…ご用件を承ってよろしいでしょうか?」
「手っ取り早くランクを上げたい。手段はないか」
「ギルドカードをお預かりしていいでしょうか。お伺いを立ててきます」
「なるべく早く頼む。そこらで座っている」
受付嬢の子が二階に走って行ったのを確認して空いてる席に座ろうとする。
すると座ったテーブルの向かいに三人の男が無造作に座る。
一人はさっきの男だ。
「よう。さっきは「うるさい。喋るな」…てめぇ」
なんかクズ虫が目の前で喋った気がしたので無視して給仕の子に水を頼む。
すぐに水は持ってきて貰えたがテーブルの雰囲気を察したのかすぐに逃げるように行ってしまった。
目の前のクズ共を無視して水を飲んで考え事をしているとやっと無視されているのがわかったのかテーブルを蹴り上げて喧嘩を売ってきた。
ふぅ、やっとか。
「喧嘩はやめてください!ヒフミさま、ギルドマスターがお呼びです」
先ほど二階に上がっていった受付の子がいつのまにか横に立っており、こちらに話しかけていた。
「はいよ。このゴミの処分もきっちりしておいてくれ」
「てんめぇ…」
後ろでなんか叫んでいるが無視してそのまま二階へ進む。
あんなのに構っている時間はない。
「はいるぞ」
「おう、入れ」
ギルドマスターの部屋っぽい所の扉の前で声をかけると部屋の中からも声が帰ってきた。
扉を明けて中に入ると見慣れた顔がそこにはあった。
「おう。久しぶりだな。暴虐よ」
「おう。相変わらず禿げてるな」
「禿げじゃねぇ。剃ってるんだっつってんだろうが!」
うむ。相変わらず弄ると面白い奴だ。
「とうわけでダンよ。とっととランク上げたいんだが」
目の前のダンというガチムチハゲという暑苦しい組み合わせの男がこのギルドのギルドマスター。
「なんだ、ランク下がってたのか?」
「再登録したらFになった。とっととSまで戻したい」
「また無茶言い出したな…。昇格試験でも受けるか?」
「今日の夕方までで終わるならそれでもいい」
「お前今が何時だかわかってるのか?あと鐘二つもねぇじゃねぇか」
まだ鐘二つもあるじゃないか。
「最短で行けるルートで頼む」
「最短なぁ。なんでそんな急なんだ?」
「惚れた女が出来た。それを手に入れるためにランクを上げる必要がある」
「ほう!お前に女が!どこの誰だ!」
ニヤニヤしながらダンが机を乗り出してくるが恥ずかしいことではないのではっきり答える。
「娼館の娘だ。ロザリアという」
「どこの娼館だ?」
「色街の一番奥のだ。紹介状がないと入れないところだ」
「…あぁ。月夜夢か。どこで紹介状は手に入れたんだ?」
「いや?持っていないが?」
その言葉を聞いた途端机に突っ伏したダンは「そうだよ、こいつはそういうやつだった」とブツブツ言っている。
「そういうことなら全面協力しよう。まずBランクまではSランクとの戦闘試験でなんとかなる。その後指名依頼を出す。Sランク級の依頼を二つもすればSに推薦出来る」
「わかった。それでいい」
こうしてSランクに返り咲く為の試験が始まった。
次回は2/10予定です。




