精霊使いと久しぶりの拠点
--精霊使いと久しぶりの拠点
ベッドに寝転がった状態で各街にある色街を制覇するという方針決めをしていたら気がついたら朝になっていた。
いつのまにか眠っていたらしい。
…方針が違うだろって突っ込めよ。
子供らも今日の昼には戻ってくるだろうし、そしたら俺も拠点に行ってみるかね。
ギルドに顔出して簡単な依頼をこなしながらなら暇も潰せるだろう。
色街に行く為にも小金も稼いでおかねば。
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朝食を食べ、ギルドに向かい適当な依頼を受ける。
カウンター傍の席に腰掛け、子供らの帰りを待っていると程なくして子供らがギルドに現れた。
思っていた以上に早かったな。
「師匠、お疲れ様です」
「ほいお疲れさん。どうだった、俺の家は?」
「やはり結界に拒まれて入れませんでしたね」
「だろうな」
早々簡単に敗れる結界じゃあないからな。
あの結界を通れるのは『異界人であること』、もしくは『悪意を持たない人でない生物』が条件として組み込まれている。
まぁ俺ら異世界人か動物とか魔に犯されすぎていない魔物くらいしか入れないはずだ。
子供らは「そのうち招待してくださいね」と告げるとカウンターに依頼報告をしに行ってしまう。
さぁ次は俺の番だな。
子供らに「俺も依頼に行ってくるからお前らは今日は休め」と伝えてギルドを出て森へ向かう。
道中、受けた依頼の標的である森狼を仕留めながら進んでいる。
依頼は五匹だったがもうすでに十五匹狩っている。
なんでこんなに多いかね。
森に入り畦道の様になっているところを進む。
森の中ほどに入った所で開けた所に出る。
そこは一面凍りついた氷の世界だった。
はて。こんなところあったかね。
木々どころか、岩や流れている小川の表面まで凍りついており、その氷の下を水が流れている。
中央に座する大きな岩を見ると上に女の子が座っているのが見えた。
その女の子が俺に気づき、こっちを向く。
細めの眼鏡をかけた十歳くらいで茶色の長い髪の毛をし、身の丈より大きな杖を持っている。
魔術師系か。
「…こんにちわっ!」
目の前の女の子から大きな声で挨拶をされたので「こんにちわ」と返事を返す。
岩の上からふんわりと飛び降り、こっちにゆっくりと近寄ってくる。
「おじちゃんだーれ?」
「おじちゃんか…まぁ三十歳にもなればそりゃおじさんだよな…」
少し。ほんの少しだけ落ち込んでいると目の前の少女は「ごめんね?」と謝ってきた。
「あぁお嬢ちゃんが悪いわけじゃないよ。俺は一二三という。Fランクの冒険者だ」
軽い自己紹介をするとお嬢ちゃんが首を傾げて俺を見てくる。
「おかしいね?Fランクの力じゃないよね?蒼ちゃんわかる?…あーそうなんだー。なるほどー」
お嬢ちゃんが一人で悩んで一人で納得してうんうんと頷いている。
「あっ、ごめんね!私はノエル!」
ひょこんという擬音が合うようなお辞儀をして体勢を直した後に笑顔を向けてくる。
「それでおにーさん、どうしたの?」
「ん?いや、俺ん家がこの先にあるんだわ。そこに向かってる最中」
「この先…なんか結界があるところ?」
「そうだな。そこだ」
「あそこ、前から気になってたんだよねー。私も行っていい?」
目をキラキラさせて尋ねてくる。
完全に好奇心の目だな。
まぁ俺が一緒にいれば大丈夫かね。
「しょうがない。来てもいいけど何もないぞ?」
「やった!」
そうして凍り付いた場所から離れ、森の奥へと進み始めた。
「そういえば嬢ちゃんはなんであそこにいたんだ?」
「うん?お父さんと話してただけだよー」
「お父さん?」
「うん。あそこの場所を作ったのがお父さんなの。だからあの場所にいるとお父さんとお話できる気がするの」
「へぇ」
「お父さんすごかったんだよ。一週間で一気にCランクになって、その後もね。魔獣討伐でBランクになって」
「ふんふん」
「でね、でね!お姫様と結婚して!…でももう会えないの」
「もう会えないのか」
「うん。お母さんはそう言ってた」
「そっかー」
しょんぼりとしているお嬢ちゃんの頭に手をのせ、グリグリと撫でる。
「ま、なんだ。そのうちいいこともあるさ」
こういうときなんて声をかけたらいいのかわからなくなる。
苦手だなぁ…。
「そういえばさっき俺の事を見て何か言ってたけどなんだったんだ?」
「んーと、蒼ちゃんにおにーさんの事を聞いたの。元Sランクの冒険者で暴虐って人だよ。って」
「蒼ちゃん?」
「うん、私のお友達。精霊さんなんだよ!」
「ほー。お嬢ちゃん精霊使いなのか」
世の中には精霊と心を通じ合わせ、精霊に力を借り、精霊と共に生きていく。そんな人がいるのは知っていた。
ただ、大抵がエルフだったりドワーフだったりという亜人種が多く、人族だと高齢ばっかりだった記憶がある。
こんな小さな子が精霊と契約しているのは正直初めて見たので驚く。
「そっか。大事にしてあげないとな」
「お友達だもん!もちろん!」
ニパーッという気持ちのいい笑顔で微笑んでくるお嬢ちゃんの頭を撫でながら森を歩く。
お嬢ちゃんは頭を撫でられる度に目を細めている。
しかし、もうそろそろのはずなんだがな。と思っていると結界の端に到着した。
「おにーさん、ここ。結界があって入れないの」
「ふむ。おいで」
手を差し出してお嬢ちゃんと手を繋ぐ。
そしてそのまま結界の中に入りお嬢ちゃんを引っ張り込む。
わわっ、という声と共に結界をすり抜け転びそうになる。
「ほえー。結界の中だー」
「ほれ、行くぞ」
結界自体は家を中心に一キロ程度の範囲で張っている。
結界を越えたということはもう家はすぐそこだ。
茂みを掻き分け、生い茂っている木を手で避けながら先に進むと急に開けた場所に出る。
そして目の前に現れたのは見覚えのあるログハウス。
ここのは最初に作った所だ。
「懐かしいな」
「久しぶりなの?」
「そうだな。ほぼ五年ぶりだ」
実際は五年以上たっているが。
ここの拠点は作ってからしばらく住処にしていたが活動場所を変えてからとんと来なくなっていた。
その割には全然汚れてもおらずあの当時のままを保っている。
『主様。無事のお帰り真に喜ばしく思います』
家を見ているとふいに声をかけられる。
お嬢ちゃんはふとかけられた声にびくっとし、身を強ばらせる。
そして…その家の後ろから現れたのは銀色の毛並みを持つ大きな狼だった。
次回 2/1 の予定です。
最近PVが減ってきているのはやはり盛り上がる見所がないからですかねぇ・・・
感想欄ででも忌憚なきご意見頂ければと思います。




