異世界の食事
おまたせしました
--異世界の食事
子供らが昇格試験という話を聞いていたが受けてきた依頼が俺ん家の調査とは思わなかった。
子供らもその事実を聞いて本当にこの試験内容でいいのか考えているようだ。
そういえばこの街の近くだったか。最初の拠点は。
俺も近いうちにどこかの拠点には行こうとは思っていたから機会としてはちょうどいいといえばちょうどいいんだが、ついていくと試験にならなさそうだしなぁ。
…どうせギルドの監視員もいるだろうしな。
あの家には子供らですら招き入れるのを躊躇うな。
成長の妨げにしかならないものばかりだしな。
どうしたものか。
「師匠、どうしたらいいですかね?」
ルブラが問いかけてくるがほんとにどうしたもんかね。
「試験内容は変えられないのか?」
「どうでしょう…選ぶ間もなく言い渡されましたから」
「うーん。じゃあしょうがない。とりあえず『調査』をしてこい。結界の中には俺が許可したものしか入れないからその周囲だな」
「…わかりました。あと一応、モスさんにはこの事を伝えても?」
「大丈夫だ。むしろギルドにそれとなく伝えておくように言っておいてくれ」
「わかりました」
子供らはそう言うと一度ギルドへ戻ります。といって路地を走って行ってしまった。
子供らの試験が終わったら一度見に行ってみるかね。
とりあえずは夕食だ。
時間は夕暮れ時。
昼に食べに行った食堂はなかなか旨かったがもう一度行くかと言われればうーん、といった感じである。
せっかく異世界に来てるのに向こうの料理出されてもな。
こっちの人にはものめずらしいんだろうけど俺みたいな向こうからの人間には全然驚きも感動も感じない。
そんなのよりボアの塊ステーキとかディアの塊ステーキとかそういう単純だけど異世界に来たって実感出来るようなものがいいな。
…ステーキばっかりだって?そういう気分なんだよ。察しろよ。
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街ゆく人に数回聞いたところでは南門の傍にステーキの専門店の様なところがあるそうだ。
なのでそこに決定。
店までの通りにある屋台に後ろ髪引かれながら店に向かう。
途中ギルドを通り過ぎる所で歓声が上がったのが聞こえたが無視。
俺には関係ないだろうし。
そして到着したのが看板に『あの肉』が書かれた店。
そう、肉の両端から骨が出ているあのマーク。
これは期待できる。
「いらっしゃいませー!」
店の中に入るとほぼ満席。壁際には何人か立っているから待ちが発生しているのかね。
壁際にいる人の隣に並ぶように立っていると給仕の子が近寄ってきてメニューを渡してきた。
「いらっしゃいませ。こちらがメニューです。あいにく今は満席なのでお待ちください!」
わかった。と返事を返すと笑顔を返してくれ、そのまま空いた席の片付けに走っていった。
元気なのはいいことだ。
店の中ですでに食べられている食事をざっと見回すとやはり注文されているのはステーキが多い様だ。
薄い百グラムくらいのステーキからブロックのまま焼かれたポンドステーキのようなもの。
食材も鳥豚牛羊の様に種類があり、味付けの仕方も様々なものが見える。
ステーキ以外の料理が並んでいるテーブルもあるがサラダだったりローストビーフだったりとほとんどが肉料理の付け合せ的なものだ。
これは…当たりか?
片づけが終わった席にどんどんと並んでいた客が座り、食べ終わった客がひと心地ついた後に席を立つ。
その繰り返しがしばらく続き、すぐに俺の番になった。
席に着いた所でさっきの給仕の子が冷たく冷えた水を持ってくると同時に注文を聞きに来た。
「今日の日替わりはロック鳥のもも肉のステーキです。お勧めはストライプバイソンのステーキです」
「ほう。じゃあ両方くれ」
「はーい。承りましたー。二品で銀貨一枚ですー。はい、頂きました。ではお待ちくださいー!」
先ほどと同じように笑顔になったあと、厨房に走っていく。
ここでドジっ子属性があったら躓いていろいろダメな感じになるんだろうけどそうはならなかった。
待っている間、置いていかれたメニューを見ていると本当に様々な『肉』がそこには乗っていた。
料理としても「ステーキ」という一種類の品目に、それこそ胡椒の量や種類まで細かく選べるみたいだ。
そんなメニューを見ていると、一番下に大きく「挑戦メニュー」と書かれている行があった。
時間無制限(開店から閉店まで)で、ステーキ肉五十キロ。味付けの途中変更なし。
副菜の注文は自由。ただし頼んだものは完食すること。
水のおかわりは自由。
食べきったら金貨一枚貰えて、ダメだったら金貨一枚払うというメニュー。
五十キロって。
さすがに女の子一人ぶんの量を食える奴はいるのだろうか。
いるんだろうな、きっと。
きっとあの壁にかけられている絵に描かれた人たちがそうなんだろうな。
ごつい男、ごつい男、やせている男、小さな女の子、ごつい男、ごつい男……。
…小さな女の子!?
まじかよ……。
「おまたしましたー」
元気な声と共にテーブルの上に音を立てて置かれるステーキ二皿。
じゅうじゅうと音を立てて肉汁を弾けさせているそのステーキはとても旨そう。
付け合せの蒸かし芋もほんのり塩がかかっているようだ。
テーブルの上からはとてもいい匂いがしている。
異世界と言えばやはりこれだろう。
和食?米?白いパン?
読んでいた小説なんかじゃ日本人ならこれを食わなきゃ、みたいな表記が多いが、それを商売にするんであればかまわないと思う。
だが望んで異世界に来ておいて日本食が食べたいとかホームシックか、とか言いたくなる。
異世界に来たなら全力で異世界を楽しめ。
それが出来ないなら来るな。と言ってやる。
そんなことを考えながら目の前に置かれたステーキを切り、口に放り込む。
…熱いわ!
次回は1/27の予定です。




