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気づいちゃった。

お待たせしました。

--気づいちゃった。


 おっさんが一本の刀を持って奥の部屋から戻ってきた。

 まだ鞘に入ったままだが、意匠といい刀が持つ雰囲気といい、とても出来のいいものなのがわかる。


「また随分奮発したな」


 渡された刀を鞘から抜いて刃や、刃紋を見る。

 ふむ。綺麗な紋が出てるな。心鉄は黒魔鉄で刃金が黒鉄かな。

 刀身が真っ黒で厨二心がうずくが元々の俺の刀に嫉妬されそうだな。


「生半可な武器渡して死なれても寝覚めが悪いしな。見てのとおり黒鉄と黒魔鉄の合成素材で作った刀だ。強化とか銘入れも出来るぞ」

「銘入れるのは俺のにヤキモチ妬かれるからやめておくわ。強化も…そうだな。特に必要はない」

「そうか。んじゃこのまま持っていけ」

「いいのか?代金は?」

「お前がいままで使ってた奴と交換でいい。お前の魔力で変質してていい具合の魔刀になってるからこれはこれで売れば金になる」

「それは俺がいくらか戻してもらう必要があるな?」

「贅沢ぶっこいてんじゃねぇ。それで満足しとけ」


 いままで使っていた刀を抱きかかえるようにしているおっさん。非常に見苦しい。

 まぁいいけど。こいつをこっちで魔改造すればいいだけのことだ。


付与(エンチャント)切れ味強化、付与(エンチャント)自動再生、付与(エンチャント)重量軽減」

「おい何をしている」

付与(エンチャント)だよ。俺の刀になったのなら何をやってもいいだろう?」

「そりゃそうだが店から魔力を漏らすな。嗅ぎつけてきた輩の相手をするのがめんどい」

「だが断る」


 そんなもんは自分でどうにかしたまえ。


「そういえば五年程前になるか。お前と同じ刀使いが来たぞ。二人も」

「ほう。それは珍しい」

「中々に出来がよい奴らだったぞ。すぐに見なくなってしまったがな」

「それは残念だ」


 カウンターの前に椅子を持ってきて座りおっさんと話し込む。

 おっさんが持ってきた軽めの酒を飲みながら近況報告をする。

 こういうまったりとした時間は好きだ。


「そういやさっき話した二人な。ユーゲンの弟子らしいぞ」


 …あのじーさんの弟子なのか。


 まだ俺が向こうにいて、こっちへの未練を断ち切れない頃、戻ったときの事を考えて身体を作るのとあわせて技術を高めるために刀術の道場に通っていた。

 そのとき師事したのが今おっさんが言った小鳥遊幽玄というじーさんだった。


 こっちでじーさんの名前を聞いたときは実際に会うこともなかったしそんなのもいるのか、といった具合だったが、実際に会い、そして師事すると化け物度合いがわかる。

 

 そのじーさんの弟子も異世界(こっち)経験者だったのか。

 

 …そりゃ強いはずだ。向こうでのうのうと刀を振ってるだけの奴とは覚悟が変わるしな。

 

「そーか、あのじーさんの弟子か」

「なにしみじみとしてるんだ。知ってる奴なのか?」

「一時同じ道場で稽古を受けていたことがある」

「なんだそうなのか。でもお前さんのことは知らないようだったぞ?」

「一緒に稽古をしていたのはここに来た後だろうからな。知らなくて当たり前だ」


 なお向こうでの稽古ではまったく勝てなかった。

 身体強化なしだと完全に技量だけになるしな…。


「まぁなんだ。ヒフミはもうしばらくこっちにいるのか?」

「今回は王都に行く予定だから三日後には街を出る。その後気が向いたらまた寄るさ」

「そうか。まぁ今度はいなくなる前にちゃんと顔出せよ?」

「善処はする。だが期待はするな」


 まぁ今回はいなくなる=死だろうからな。

 早々感嘆にはくたばらないさ。


「最近この街も物騒だからな。早めに出るに越したことはない」

「なんだ、おっさんも知ってるのか?」

「お?ヒフミも何か聞いてるのか?」


 カウンターから乗り出してきたおっさんを押し返し、椅子に深く腰掛ける。


「さっき酒場で聞いた程度の情報しかない。そっちは?」

「似たようなもんだな。最近うちの店にもそのイカツイ奴らってのが来るようになった」

「ほう。武器か何か買いに来てるのか?」

「そうだな。武器を買いに来ているんだろうが、何も買わないで帰る奴が多い」

「なんだそりゃ…」

「しかも帰り際に筋肉を見せ付ける様なポーズをつけて帰るんだよ」


 うんざりする顔をこちらに向けてきたって知らんがな。


「それは…来た奴全員か?」

「…あぁ、全員だ」

「災難だな」


 俺だったら三人続いた時点で切るわ。

 むしろ一人目で斬るかもしれん。


「さすがにそういう奴らが来たら俺が表に出るしかない。だがそいつらはどうもそうなるのを待ってる様に思える」

「…それ、おっさんに筋肉を見せ付けに来てるんとちがうのか?」

「なん…だと…」


 今気づいた!といわんばかりの顔で驚いているがそこはちょっと考えればわかると思う。

 ガンドルフもマッチョだから同類と思われているのかね。


――――『筋肉はどこにでもいる』


 …ちょっとまてよ。

 なにかが頭をよぎった。


 …まさか、なぁ。


 ありえない考えを否定するかのように頭を振って思考を飛ばす。


「頼もう!」


 大声をあげながら店の扉を壊す勢いで入ってきた男は…やはりガチムチなおっさん。


「いらっしゃい」


 おっさんはしょうがなく接客を開始するが…どことなくイラついているのがわかる。


「主人!この筋肉を隠すことなくさらに輝くような武具を用意してほしい」

「そんなものはない」

「そうだろうな…わが筋肉の前にはすべての武具は無価値。やはりわが筋肉は素晴らしい」


 そうじゃない。そうじゃないんだよ。

 自分の筋肉を褒めつつポージングをしている暑苦しい筋肉。

 正直見たくもない。


「そこな御仁も中々にいい筋肉をしているが、主人ほどではないな。もっと精進せねば筋肉は答えてくれないぞ」

「別にどうでもいい」

「どうでもいいとは何事だ。筋肉はいいぞぉ。育てれば育てただけ答えてくれる素直な奴だ。そして見てもらう事で喜ぶ羞恥プレイも楽しめる」

「それは絶対違う」


 暑苦しくポージングを続けるマッチョを横目で見つつおっさんの方を見るとこっちもげんなりしている。


「どうするんだ、これ」

「いつもはこのままほっとくと帰っていくんだがな。今日はおまえさんがいるからもう少し時間がかかるかもしれん」

「まじか、俺のせいなのか」


 …もうぶっ飛ばすか。


「おいそこの筋肉。暑苦しいから帰れ」

「ぬ?筋肉を褒めてくれてありがとう」

「そうじゃねーよ」

「そうだ、お主も我が筋肉協会に参加すればいい」

「なんだその暑苦しい名前の集まりは。集まってるところに氷魔術ぶち込めばいのか?」

「我らが筋肉には魔術など通用せんぞ」


 両手を首の後ろで組み、胸筋からの逆三角形を見せびらかす様なポーズで挑発をしてくるが、めんどくさいのでのってやらない。


 …そういや街をうろついてる変質者たちってこいつらのことなんじゃねーの?


次は1/19予定です。


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