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同郷人

書き上がりました。

--同郷人(にほんじん)


 さて。不穏な空気を醸し出していると噂のアルファミラの街入り口。

 いつもの様にロタラさんのおまけとしての門番通過。

 護衛っていうだけで審査がザルになるのは商人の信用によるものなんだろうなぁ。と思う。


「では先日も言ったように気をつけてください。出発は三日後となります」


 門を抜けたところでロタラさんが皆に向かって注意を促すと、それを聞いた皆も声に出さずに頷く。


「じゃあ俺らはギルドあたりで様子を見つつ依頼を受けてる。子供らはどうする?」

「どうしましょうか…師匠、この街で僕らやることありますか?」

「いや、俺もこの街では挨拶回りとかが忙しいから好きに動いていいぞ」

「わかりました。ではモスさん、お願いします」

「おう。んじゃいくか。ヒフミ、こいつら預かるぞ」

「あいよ。育ててやってくれ」


 深紅の斧の三人と子供らが連れだってギルドへ向かう。

 さて、俺は久々におっさんの所に顔出ししに行くかね。


----


 ソーン鍛冶屋というガンドルフの店は以前と変わりなく、人気のない様子。

 扉を開けると以前はいなかった女の子が店番をしており、うつらうつらと船を漕いでいる。

 ウィステリアちゃん達よりちょっと上くらいの年か?

 

 女の子が起きるまで店内を見て回り、武器を手にとって見てみる。

 どれもいい武器でガンドルフは未だに鍛冶の腕を上げている様だ。

 

「あ…いらっしゃいませ」


 カウンターの向こう側から寝起きの声での挨拶が聞こえる。


「あぁ、起きたかい。ちょっと武器の整備をお願いしたいのだが」

「はい。承ります」


 カウンターの上に刀を置き、代わりに割り符を貰う。

 おっさんならこの刀見れば察するだろう。


「ではお預かりいたします。見たところ刃が少し欠けているだけなので二時間もいただければ大丈夫だと思います」

「わかった。ではまたその頃に来る。頼んだぞ」


 刀を渡し店を出ると、その途端なにやら一瞬だけ視線を感じた。

 周りを見回しても特に俺を見ている奴はおらず気のせいだったのかと思う。

 

 …はずはないだろう?

 あからさまに敵意の籠もった視線、普通の人なら気づけないほど一瞬の敵意。

 上等だ。誰かは知らんが俺に喧嘩を売るとはいい度胸だ。

 

 索敵をかけても敵さんの反応はなし。

 ちっ。逃げられたか。

 

 しょうがない。次は逃がさない。


----


 むかむかしたまま歩いていると腹が減ってきたのに気づいたのでちょっと遅い昼飯を食べようと食堂を探す。

 中央通りだからか食べ物屋はそこそこ多く、店の前に出ている看板が多く並んでいる。

 

 そのうちの一件を適当に選び中に入るとそこそこの賑わいで店員の元気な声が飛び交っている。

 ふむ。ここでいいか。

 

 空いてる席に座り、店員が来るのを待っていると俺に気づいたらしくすぐに冷たい水を持ってきてくれた。


「ご注文はー?」

「適当におすすめの定食と肉の盛り合わせとエールを頼む」

「はいー。しばらくお待ちくださいねー」


 店員は代金の銅貨三枚を払うとそれを受け取り奥の厨房へと注文を伝えに行く。


 待っている間店の中を見回してみると半分は冒険者。半分は商人っぽい連中。

 その中にふと目に入ったのは…俺と同じ黒髪。

 ターバンの様に布でぐるぐる巻きにして隠しているが襟足や前髪から出ている髪の色が真っ黒だから間違いない。

 

 …珍しいものだ。

 

 そうやって見ていると向こうも俺に気づいたらしく、エールを持って近寄ってくる。

 

「先ほど私を見ていた様でしたが何かご用事でも?」


 立ったままで話を続けるその男に席を勧め、とりあえず座って貰う。


「いや、俺と同じ黒髪を久しぶりに見たな、と思って凝視してしまった。すまない」

「あぁ、これですか。そうですよね。黒髪珍しいですものね。一部の地方では黒髪は悪魔の使いとか言って虐待の対象だったりしますしね」

「あぁそういう地方もあったな。俺もあの時は苦労した」


 俺の所にもエールが届いた所で軽く器を合わせ、一気に飲み干す。


「…やはり冷えてないか。水が冷たかったから期待していたんだが」

「おや。通な飲み方を知っていますね」

「俺の故郷では仕事が終わってから飲む冷えた酒を一気に飲み干すのが酒に対しての礼儀だったんだよ」

「なんとも素晴らしい故郷ですね。私の故郷もそうでしたけど」


 と言ってエールを一気に飲み干しまた店員に同じ物を、と頼んでいる。


「お近づきの印に一杯奢らせてください」

「あぁ。ごちそうになろう」


 店員が持ってきたエールをもう一度軽く合わせ、二人で半分ほどの量を一気の飲み干す。


 すると奥に座っていた少女がこっちに向かって歩いてくるのが見えた。


「お前さんの娘がこっちに来ているぞ」

「あぁ、可愛いでしょうあの子達。いろいろ歩き回ってスカウトした子なんですよ!」


 ふむ?

 ふと何かが違和感を持ち少し考え込んでいる間にその少女は青年の後ろに立ち首に抱きつく。


「団長…飲み過ぎはよくないよ?」

「ステラ…く…苦しい…ギブ…ギブアップ…」


 …こいつ…まさかな。


 団長と呼ばれた男は若干顔を青くしている。

 だいぶ綺麗に決まっているな。


「あー、お嬢さんや。そこら辺にしておいてあげるといい」


 声を掛けると俺の方に初めて目をやったのか、すぐに手を離す。


「団長がご迷惑をおかけしております」

「いやいや、楽しい酒を飲ませて貰っているよ」


 ゲホゲホと咳き込んでいる団長を放置して、空いてる席に座りこむステラと呼ばれた子。


「団長と同じ黒髪…団長と違ってとても綺麗…」

「ステラさん?同じ黒髪じゃないですか?」

「団長…色は同じでもそれ以外の質と量が違う」

「うっ…確かに薄毛ですけども!細いですけども!」

「自覚するといいよ?このおにーさん位の髪だったらもう少しモテてた」

「ぐはっ」


 痛いところを突かれたのか机に突っ伏してしまうが、ちょうどその時に店員が持ってきた食事を置けないと声を掛けるとすぐに起き上がる。


 なんだか軽い漫才を見ている様で微笑ましい。


「仲がいいんだな」

「そりゃ愛する娘ですから」


 即答で、しっかりと自信を持って言えるのは立派だな。

 ステラも若干顔を赤くしているのが俺にだけ見えた。

 よかったな。少しは好感度あるみたいだぞ。


「あぁ、名乗り遅れました。私レンズと申します。旅の一座を運営しております」

「一二三、一二三・桜坂だ。久々にこの地方に来たので気軽な旅をしている」


 挨拶をするとレンズと名乗った青年は目を見開いて俺を見る。


『日本の方ですか?』


 ふといきなり違う雰囲気の言葉で話しかけられる。

 …やはりか。

 

 チケットを玩具箱にしまい込み、翻訳の機能が有効にならないようにする。


『やはり同郷人か。お察しの通り日本人だ。そちらも?』

『はい。向こうでは植原(うえはら) (むつみ)という名でした。』

『チケットを使ってこっちに来たのか?期限は?』

『お恥ずかしい話ですが、滞在期間をオーバーしてしまいましてね。帰れなくなったんですよ』

『ほう。そういう技もあるのか。強制帰還にはならないんだな』


 そういう仕様なのか…。そうと知っていれば滞在一日とかにして無視すればよかったのに。


『一二三さんはどうしてるんですか?』

『俺は帰還日を書かないで強引にこっちに来た』

『なんとまぁ。もう向こうへ戻る事は?』

『ないな。仕事も辞めてきたし親とも決別してきた。未練もない』

『私は…残してきた母と、何も言わずに行かなくなってしまった会社が気になります』

『まぁ戻れないならしょうがないだろう。こっちでやることも出来たんだろう?』

『はい。眼鏡の普及とこの子らに歌って貰って娯楽を各街に提供することが今の生きがいですね』

『立派だ。しっかりやるといい』


 急に日本語で会話を開始したからか、テーブルに座っているステラが頬を膨らませて俺らを睨んでいる。


『ご令嬢が不満げだぞ?』

『この言葉はこの子らにはわからないですからね。元の言葉(共通語)に戻しましょうか』


 玩具箱から再びチケットを取り出し懐にしまい込む。


「団長、内緒話はよくない」

「すみませんね、同郷の方だったのでつい」


 同郷という言葉を聞いたステラが珍しげに俺を見た。


「あの、質問させてもらっていいですか?」

「ん?答えられることならいいぞ」


 ステラはさっきと同じように顔を赤くして俺の側に近寄ってきて耳打ちする。


「あの…団長の故郷では十五歳になるまで一緒にお風呂に入るしきたりがあるんですか?」


 …うわぁ。


「あとあと、下着を選んだり洗ったりするのも男親の仕事なのでしょうか?」


 …うわぁ。


「朝起きた時のほっぺのチューとか…」


「衛兵さんこいつです」

「おまわりさん、違うんです!!!」


 うん、こいつ変態だったんだな…。


ちょっと身辺がゴタゴタしていてPCに向かっている時間が取れない状態です。

次回1/13・・・と言いたいところですがその日に親族の手術があるので。

続きは今週中になんとか、といった感じでお待ちください。

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