幼女愛好者登場。そしていつの間にか終わっていた緊急事態
-幼女愛好者登場。そしていつの間にか終わっていた緊急事態
結局その後は二戦ほど繰り返し、子供らは一切攻撃が当てられず模擬戦は終わった。
「影渡り」や「影法師」など使わされていたのは結構追い詰められていたんだろうな。ミシェル。
「っはー。やっと終わりか。どんどん成長していくってのは怖いもんだなー」
「うちの娘らを侮っているからそうなるんだ」
「まぁな…ってさっきから娘って言ってるけどほんとの娘なのか?」
ミシェルが急に深刻な顔で言ってくるが「さぁどうだろうな?」とだけ返しておく。
悶々としておくがよい。
「まぁなにはともあれお疲れさん」
「ほんとに疲れたよ…こういうのはやめてくれな」
「だが断る」
「うぉぃ!」
「褒美に飯でも食いに行くか。奢ってやるぞ」
「よし!肉がいい!肉!」
「うるさい奴だな。おまえらもそれでいいかー?」
子供らを見ると地面に突っ伏してぶっ倒れてる。
魔力欠乏症かね?二人とも結構魔力使ってたしな。
しょうがない。抱えていくか。
二人を脇に抱え、訓練場を出てギルドに戻り出口へ向かう。
ギルドの職員や飲んでいた奴らはギョッとした顔をしているが、無視だ無視。
「おい、お前そのお嬢ちゃん達をどうするつもりだ」
正義感を振りかざした青年が唐突に声を掛けてくる。
茶髪でピアスをし、細マッチョ程度の体つきにショートソードをぶら下げている175cm位の男。
「魔力欠乏症になったみたいだから休ませにいく所だが?」
両腕の子供らはまだ目が覚める気配もなく大人しく抱えられているがどうやらそれが連れ去る様に見えたんだろう。
まったくもってめんどくさい。
「そうは見えないから声をかけたんだが?どう見ても気絶している幼女を連れ去ろうとしているようにしか見えない」
「そうは言ってもなぁ…。じゃあギルド職員にでも預ければ満足するのか?」
「いや、お前らが信用ならないから俺が面倒見る」
…そろそろこいつうざいな。
…潰すか。
「まぁまぁ。お二人さん。この子らはこいつの連れなのは確かなのよ」
「はぁ?お前誰だよ」
「ミシェルっていうんだが、知らないかな?」
「知らないな。有名人なのかもしれないが男に興味はない」
「お、おう…まぁあれだ。俺らから見たらお前さんの方が子供らを奪い取ろうとしているように見えるわけだが?」
ミシェルが両手を広げギルドの内部へ問いかける様に大げさに喋っている。
こいつこういうことは得意だからな。まかせちまおう。
ギルド内で飲み食いしてた奴らの中には「ミシェルってあれだろ、影人」とか「あぁ、Aランクの…」という声も聞こえる。
「そんなことはどうでもいいんだ。その子らをこっちに預けるのかどうかはっきりしてくれ」
「だからさぁ…お前さんに預けるくらいならギルドの診療所に預けると言ってるんだけどわからないかな」
「そんなこと言ってもごまかされないぞ。その幼女達を解放したまえ」
俺もミシェルももうため息しか出ない。
後ろで飲み食いしてた奴らも手が止まりこちらの動向を気にしている。
すまんな。引き続き飯を食っててくれ。
「あの…ギルド内での揉め事は困ります…」
後ろから受付嬢の子が恐る恐る声を掛けてくるが「わかってる」と返事をする。
「めんどくさい奴だな。あー、そこの受付の子、この子らを診療所で寝かせておいてくれ。多分魔力欠乏症だ」
「は、はい!」
奥から出てきたギルド員数人に子供らを預けて手を空ける。
「一応こっちも保護者という扱いなのでな。お前みたいな得体の知れない奴に子供らを任せると思うか?」
「保護者という事も本当かどうか…」
「これが証明書だが?」
村を出る時に渡されたギルド公式の依頼書を玩具箱から出し近くにいたギルド員に確認させると「本物です」と認定を貰える。
さすがにちゃんとした依頼書もあればそれ以上何も言うことが出来なくなり近くの椅子に座り込んでしまう。
「さて…誤解は解けたのかな?」
「あ、あぁ…すまない」
「ほう。きちんと謝れるのか」
ミシェルからは程ほどになと声を掛けられるがそんな酷いことするわけないじゃないか。
「で、本音はどうだったんだ?聞かせてみろ。自白」
自白剤の様な効果を持つ魔術を掛け椅子に座っている青年の前に立つ。
「…あの子らが可愛かったから愛でたかっただけだ…一緒にご飯を食べ、服を買い着替えて貰ってもっと可愛くなって貰いたかった」
「…幼女愛好者か、お前は」
「あわよくばお兄ちゃんと呼んで欲しかった…」
「真性だな、こいつ」
ギルド内でも騒然としている。そりゃ当たり前だな。
正義の人かと思ったらただの変態だったんだから。
「…ヒフミさんや。どうするんだこれ」
「ギルドに任せる。まぁ衛兵行きだろうな」
後ろで話を聞いていたギルド員がこっちが声を掛ける前に進んで出てきて青年を拘束し裏に連れて行く。
「さぁみんな。茶番で場を乱してすまなかった。俺からエールを一杯ずつ奢るから楽しんでくれ」
ミシェルがギルド給仕の子に銀貨を三枚ほど渡すと、冒険者達は「うおおおおお!」と叫び始める。
「あんたは神か!」とか「ごちになりやす!」とか至る所で声が上がる。
もう飯もめんどくさいからここで食っちまうか。
空いてる席に座るとミシェルも座り、給仕の子に食事の注文をする。
給仕の子の顔がちょっと赤かったのはなんだろうな?
ミシェルにでも惚れたか?顔はいいからな、こいつ。
周りの冒険者達と騒ぎながらエールを飲み騒いでいると、途端に耳に付けていた魔道具からルブラの声が聞こえる。
「師匠、師匠、聞こえますか…」
「聞こえているぞ。どうした」
だいぶ焦っている様子のルブラの声と話し始めた所でミシェルが周りを静かにさせてくれた。
「師匠、大変です。依頼先で豚王が現れて討伐隊の半数以上が壊滅。かろうじて死んではいないみたいですが…」
耳輪から聞こえる声はギルド内にも聞こえるように音量調節をしている。
すると冒険者達が武器を装備し始める。
うん、対応の早さは素晴らしい。
「つーかオークロード位狩れるだろう。そんなので手こずっているのか?」
「いえ、豚王はとっくに狩ったのですが、ギルド長以下5人が重傷なんです。さすがに僕らだけじゃ運びきれなくて」
あぁ、そういうことか。
後ろじゃ冒険者達が「え、もう狩られてるの?」とか「緊急事態じゃないのか」と安堵して装備を外している。
「ちょっと待ってろ。ギルド員に人を出せるか聞いてみる」
「お願いします」
ギルド員を手招きして呼び、お宅のギルド長が怪我してるらしいんだが回収出来るか?と聞くとその場で回収依頼が発行される。
酒を飲んでいた冒険者の内がたいのいい数名が名乗りを上げ、回収に向かう。
「今ギルドで募集がかけられ数名がそっちに向かった。それまでその場の維持。いいな?」
「はい、師匠」
ルブラとの会話も終わり再び静寂が訪れる。
…んー、これは帰ってくるの夜になりそうだな?
次の更新は1/7予定です。




