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元仲間

--元仲間


 とりあえず宿は大きいところが一件しかなかったので必然的にそこになった。

 子供らの部屋は4階の高い部屋にしてやった。

 一部屋で一晩銀貨二枚ですぜ。

 俺はまた夜いないかもしれないので一番安い部屋。銅貨五枚。

 

 もう少しで夕飯の時間だから子供らも戻ってくるだろう。

 それまで自分の部屋でぼーっとしてますかね…。

 



「師匠?ししょー?」


 …いつのまにか眠っていたらしい。


「おう、おはよう」

「もう夕飯の時間だからおはようじゃないですよ…」


 ルブラがため息をつきながら肩を落としているが眠るつもりじゃなかったんだ。


「もう下に食事が用意されていますので早く行きましょう」

「おう」


 一階の食堂では他の子供らもすでに席に着いており、食事もテーブルの上に用意されている。


「すまん、待たせたな」

「いえいえ。どうせ師匠、これから色街に行くんでしょう?俺らの相談があるので先に聞いて貰っていいですか」


 給仕のおばちゃんに定食を頼んで席に着いたところでウォートが真面目な顔で言ってきた。


「真面目な話っぽいな。どうした」

「僕とルブラはこの食事の後ギルド長に連れられて一泊の依頼に行ってきます。その間、マヤとリアが暇してしまうので…」

「あぁ、俺がなにか課題を出せばいいのか?」

「あ、いや。そうではなくて面倒を見てていただけると…」

「えー」


 面倒見てるのはめんどくさいなぁ。

 色街にも行けないし。


「ししょー、私たちが相手、する?」

「…優しくして下さいね」

「まてまてまて。さすがにお前らに手出す程飢えてないぞ」


 何を言い出してるのか、この子らは。

 周りの客も一瞬ざわっとしてこっちを見てるじゃないか。


 さすがに俺はお子様属性はないぞ。


「ルブラとウォートに付いていくのは出来ないのか?」

「ギルド長が女性が苦手とのことで…」

「あぁ…」


 …そっちの属性なのか?

 まぁ関わらない方がいいな。


「わかった。こっちは適当にやっておく。お前らも気をつけろよ」

「師匠…わかりました!」


 ウォートが感動しているが感動するようなこと言ってないだろう。

 むしろほんとに気をつけろよ。後ろに回られないようにな?

 そうじゃないと思いたいが。


「では食事も終わったので買い出しに行った後ギルドに行ってきます」

「おう。あぁそうだ。これを持って行け」


 そう言い二人に渡したのは金で出来た耳につける輪環。

 野営の時に商人から買ったアクセサリに付与(エンチャント)した物。


「これは?」

「遠隔で念話が出来る魔道具だ。そんなに魔力量が入ってるわけじゃないから長時間は出来ないが」

「え、これって高いんじゃ…」

「気にするな。帰ってくるのが遅くなりそうだったり身の危険を感じた時には遠慮なく使え」


 …危険を感じた時に連絡を貰っても何も出来ないかもしれないがな。


「万が一の時は使わせて貰います」

「おう。大事に取っておくものじゃないからな。道具ってのは使ってなんぼだ」

「わかってます」


 ルブラとウォートの耳にそれぞれつけてやって宿から送り出す。


「さて、お前らは明日の朝から俺と特訓だな。いいか?」

「はい」

「今度こそししょーに勝つ」

「おう。頑張れ。そういうわけだから今日はもう寝ろ。そして体調を整えろ。明日は本気出すぞ」


 本気を出すといった所で二人が少しビビっていたがどうせやるならしっかり鍛えよう。

 男共に負けないくらいにな。


 二人が部屋に戻っていったのを見送ってから…俺はいつものように色街へ。

 今日はどんな子にしようかなぁ。


「おう、どこに目つけとんじゃ」


 色街へ向かう最中の路地で肩がぶつかった男に肩を掴まれ、そう、喧嘩を売られた。


「あぁん?」


 振り返ると目の前には拳が。

 ちょっと頭を下げ、頭突きでその拳に対抗する。

 

 …っつぅ。

 ドカンという拳と頭突きのぶつかる音とは思えない音が路地に響く。

 

 男の拳は赤くなっている程度。

 俺の額も赤くなってヒリヒリしている位。


 目の前の男の容姿は金髪ロン毛でバンダナを頭を包むように巻いている。黒のぶかぶかズボンに黒のYシャツに灰色のベスト。

 目つきは悪く口にはタバコっぽい物を咥えている。

 年齢は同じくらいか。


 …あれ、こいつって。


「ぶつかっておいてなんもなしかゴルア」


 …やっぱこいつ、あれだよな。


「あ゛ぁ?さっきからなんだいちゃもんつけおって」

「いちゃもんじゃねぇだろ。俺様にぶつかっておいてなんもなしか?」

「ぶつかってきたのはそっちも同じだろう?…せっかくこれからねーちゃんとイチャイチャしようと思ってたのに削がれるな」

「あぁ?」


 完全にガンをくれてくる目の前の男にガンをつけ返す。


 一色即発という所で後ろからカランという何かが落ちる音が聞こえる。


 男がそっちに気を取られた瞬間に腹に一発入れ、しゃがみ込んだ所に顎への一発を入れる。

 仰け反ったところに蹴りを入れ俺自身も少し後ろに下がり間合いを取る。


「てんめぇ…やるってことでいいんだな?」

「あの程度の攻撃、大して効いてないだろう?観客が来る前に終わらせるぞ」


 その言葉と同時に男はショートソードを二本、腰の後ろから抜く。


 …やっぱり。


「抜いたって事はもう命はいらんな?」


 俺も玩具箱から刀を出す。

 刀を腰に構えたところで男も何か思うところがあったのか一瞬首をかしげる。


「お前…まさか…」

「問答無用。行くぞ」

「ちょ、まっ」


 刀を鞘から滑らせ居合い一刀。上段からの一撃。

 その刃は男が十字に構えたショートソードにギャリンという音を立ててぶち当たる。


「まてまて。お前さんもしかしてヒフミか!」

「だとしたらどうした」


 なにやら話しかけてきているが俺は刀を振り続ける。

 その全ては二本のショートソードで逸らされ弾かれる。

 その攻撃のたび、お互いの刃が欠け、削れていく。


「ちょっとまてっつってんだろ!俺だよ!俺!」

「お前なんか知らん。俺の知り合いなら肩がぶつかったくらいで因縁をつけるような心の狭い奴はいない」

「ったく!相変わらずだな!お前は!」

「馴れ馴れしい。いいからとっとと切られろ」

「相変わらず理不尽だな!お前!」


 誰だっけこいつ。名前が出てこない。

 刀を振りながら思い出そうとしているんだが…この喉まで出てきているんだが…このもどかしい気持ち。

 あぁ気持ち悪い。


「俺だって言ってんだろ!いい加減思い出せよ!」

「知らんって言ってんだろ。早く切られろよ。俺の刀が血を欲してるぞ」


 …ほんと誰だっけ。こいつ。


「5年前まで一緒に旅してたろう!…はっ、まさかお前、俺の名前忘れてるんじゃねーだろうな」

「…覚えているに決まっているだろう」

「ならその刀止めろよ!そして俺の名前を言ってみろ!」


 …世紀末な弟の方でしたっけ?


「ジャ…」

「ちげぇよ?やっぱりわかってねぇじゃねぇか。ミシェルだよ」

「あぁ、ミシェルだった。うん、つっかえが取れた。じゃあ死ね」

「なんでだよ!」


 …ったく、しょうがねぇな。


「んで、そのミシェルくんはいつもこうしていちゃもんをつけてるのかな?」

「うるせえな。今日はたまたま期限が悪かったんだよ」

「うるせぇ?お前誰に向かって口きいとんじゃごるあああああああ」

「…すまん」

「相変わらず口がなってねぇなぁ、お前は。正座するか?」

「あれはやめてくれ!身体的にも精神的にクル!」


 ったく。

 久々にあったと思えば。


「知り合いだった奴がクズになり果てたのかと思ったわ」

「クズは言い過ぎだろう、クズは」

「そうだな。ゴミかと思った」

「もっとひでぇな!?」

「おお、そうか。ゴミに失礼だったな」

「まさかのもっと下の評価!?」


 相変わらず弄りがいがあるな。


「そんでお前、こんな所で何やっとんじゃ」

「聞いてくれるか」

「長くなるなら聞かない。三行で」

「三行?」

「あぁ、いや。んじゃどっかで飲みながら話聞いてやる。お前の奢りな」

「ひでぇ…全然変わってねぇこの男」

「おい、早く行くぞ。置いてくぞ」

「あー、はいはい。今行きますよー」

「はいは一回だ馬鹿たれ」

「へいへい」


 そして酒が飲める店へ向かう。

 こいつのせいで行く気が削がれてしまったがせめておねーちゃんがいる店へ。


 せめて大量に飲んでやる。


今年の投稿はこれでひとまず完了です。

次回は年が明けて1/3あたりを予定しております。

みなさま良いお年をー!

来年も『暴虐と呼ばれた出戻りさんは異世界で更なる理不尽を繰り返す』をよろしくお願いいたしますっ

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