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平穏なギルド

--平穏なギルド


 グランジの街のギルドはすぐにわかった。

 至る所に看板が出ており、案内役まで立っている。


 他の街と同じような両開きの扉を開けるとやはり同じようなレイアウトのギルド。

 酒場エリアを通り抜け、カウンターへ向かう。


「さぁ腕のいい受付を選ぶのも大事だぞ」


 美人ぞろいの受付嬢達の前に来て子供らにそう言うと数人は俺を睨み、数人は気を引き締めた様に背筋をぴっとする。

 はい睨んだ奴は減点。


「自分で『これからお世話になりたい』受付の所に行って、挨拶をしてこい」


 子供達は一番奥にいる、一番年齢の若い受付嬢のところへ移動をしたようだが、あの受付嬢はたぶんここにいる受付の中で一番出来る子だと俺も思う。

 そういう受付を一発で引き当てたのはただのカンなのか年齢が近いからなのかはわからないが、これからしばらくあの子らの相手は必要なさそうだ。


「さて…俺はどの受付さんにお願いするかな」


 子供らが相手をしてもらっている受付を除くと残りの受付は5人。

 そのうち3人はさっき俺を睨んでいた子だから除外。


 あぁ言われて睨むってことは私は仕事できませんって言ってるようなもんだろうしな。

 そういった受付に限って他の冒険者への勝手な情報漏えいなんかをやらかすし、贔屓している冒険者の言うことしか聞かないとかいう事態になることが多い。


 人だから好き嫌いあるのはしょうがないだろうけどな。


 そうすると残りの選択肢は二人。

 二人とも身長小さめの受付嬢で、受付の正装である、白い制服と白い帽子をかぶっている。

 顔は『美人』という子と『可愛い』という子で、二人並んで街を歩いていたら大量に事案が発生しそうである。


 今も並んでいる冒険者達の依頼処理をこなしているが、その手さばきはスムーズである。

 ふむ。たいしたものだ。


 二人してちょこまかカウンターと裏の部屋に動いている様子は…ハムスターのようだ。

 見てるとほっこりする。


「あんた並んでるのか?そうじゃないなら先に行かせてほしい」

「あ、あぁ。すまない」


 いつの間にか俺の後ろに数人並んでおり、邪魔になっていたようだ。

 声をかけてきた冒険者やその他大勢は俺が仕事が出来ないと判断した見た目だけの受付嬢の所に集まっている。


 その先にいる受付嬢のこっちを見てのドヤ顔がむかつく。

 おまいは見た目だけで世の中渡り合えばいいさ。


 さて、子供らが帰ってくる前に俺も挨拶だけしておくか。


 ちまい受付嬢の空いてるほうに並び順番が来るのを待つ。

 5分もしないで前の人がはけて俺の番となった。


「いらっしゃいませ。 冒険者業務斡旋組合(ギルド) グランジ支部へようこそ。ご用件を承ります」

「到着報告だ。リランダール支部所属の一二三だ」


 そういってギルドカードを提出する。


「ご丁寧にありがとうございます。担当はリットが行わせて頂きます。よろしくお願いします」

「こちらこそよろしく」

「今回の届出は普通の到着連絡でしょうか。当支部への移籍となるでしょうか」

「到着連絡で頼む。まだこの先向かう場所があるので移籍ではない」

「かしこまりました。では他ギルドからの連絡がないか確認してまいりますので少々お待ちください」


 そういうと裏の小部屋に小走りで走っていってしまった。


 受け答えは完璧。

 ないとわかっている移籍の届出かどうかも念のため聞く所も間違っていない。

 そして簡潔な質問と受け答え。

 これはかなりの好感触だ。


「おまたせしました。ヒフミ・サクラザカ様への手紙が各支部に届いていましたのでこちらに集めさせて頂きました。お受け取りください」

「おお、助かる。…ってまた随分とあるな」

「人気者なのですね?」

「そうだといいんだがな」


 クスッと笑っているリットに苦笑いで返す俺。

 手紙の束を受け取り「ではしばらくよろしく」とカウンターを離れ、空いてるテーブルに座る。


 手紙の束だけで百科事典くらいの厚みになっているのをバッグに入れるふりをして玩具箱(トイボックス)にしまう。

 ざっと30通か…読むだけで一苦労だな、これ。


「ヒフミさんおまたせしました」


 ルブラを筆頭とする子供らがカウンターから戻ってきてテーブルの空いてる席に座る。


「無事出来たか?」

「はい。到着連絡と移籍の違いもきちんと教えてもらいました」

「それでいい。こういう風に街から街へと拠点を移す場合、短期間なら到着連絡、長期間なら移籍といった感じで届出を出すんだ」

「はい」

「到着連絡さえきちんとしておけば今どこのギルドの近辺にいるかを知りたい人に伝えやすいからな」

「はい。さっき説明を受けました」

「移籍も同様だが、その後1年は他の街へ移籍できないという縛りがあるが、その代りに移籍したギルドの管轄の商店で買い物をするときに割引になるという利点もある」

「はい。僕らの最終目標は王都なので王都に着いたら移籍しようと思っています」

「お前らはそれでいいと思うぞ。俺は移籍はしないがな」


 王都に縛られたくもないしな。

 王都所属とかになったら絶対指名依頼とかで遊ぶ時間なくなりそうだし!


「さ、終わったなら次は宿探しに行くぞ」

「「「「はい」」」」


 子供らのよい返事を聞きながら席を立ち、ギルドを後にして、道を歩いている人に宿屋の場所を聞き、子供ら主体で決めさせた上でそこに向かう。


 そして着いた宿屋の扉を開け、一番に目に入った宿屋の主人を見て…


 何も言わずにそっと扉を閉じた。


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