山脈越え、そしてグランジの街
--山脈越え、そしてグランジの街
レンが荷馬車ごと空間倉庫にしまいこみ、馬には転移魔法のマークを刻む。
商人達、深紅の斧、子供ら、そして俺が竜の形態になったレンの背中に乗り、一気に山脈を越える。
上空5000m程度まで一気に上昇し、次に下降する。
するともう山脈は越えており、後は遊覧飛行のような滑空となった。
次に寄る予定のグランジの街というらしいが、上空から見ると後は馬車で4時間ほどの距離まで来ていた。
頑張りすぎだろう。
あまり街に近づくとパニックを起こす可能性があるので離れたところで地面に下ろされる。
そしてレンの竜語魔術で先ほど置いてきた馬達を転移召還する。
現れた馬達を再度馬車に繋ぎ止め、出発の準備が出来た頃にはすでに日は天辺まで来ていた。
「随分と一気に進んだな…たしか次の街は訪れる日程決まってるんじゃなかったっけ?」
「そうですね、一週間くらい短縮されちゃいましたね。安全を買ったといえば文句はないんですがどうしましょうね」
次のグランジの街はあと一週間ほどで収穫祭になるらしく、それにあわせて商売をしにきていたという話のはず。
その街に一週間も前から滞在するということになると商人達には赤字かもしれない。
「師匠、次の街はどういう街なんですか?」
竜の背に乗ったという興奮からやっとさめてきた子供らから質問されると俺ではなくロタラさんが変わりに答える。
「次のグランジの街は農耕や放牧が主体の街です。あと一週間もすると実りに感謝する収穫祭が行われます」
「農耕畜産が主体とはいえ、町並みはしっかりしているぞ。一通りの施設はあるし、なにより温が湧いてくる泉がある」
子供らの生活じゃ温泉文化なんかなかっただろうからこの際しっかり教え込まないとな!
「注意点としてはこの街にはスラムという一角がある。そこに入り込んだものは命すら自己責任で守らなくてはならない危険なところだ。うかつに踏み入れるなよ?」
ブンブンと首を立てに振り怖がっている子供らはまたギルドに放り込んでおけばいいだろう。
『じゃあわしはこれで帰るのじゃ。一二三は近いうちにドラゴニアに顔を出すんじゃぞ』
『へいへい。近いうちになー』
レンはそのまま大きな布に包んだ食料を持ち飛び去っていく。
俺以外の全員がその姿を惚けるように見ているがそんなに珍しいもんかね。
まぁ珍しいんだろうな。竜の背中に乗るとか。
「さて、いつまでも惚けててもしょうがないので街へ向かいましょう」
ロタラさんが手を叩きながら他の連中の準備を促す。
俺は…といっても特にやることがないので馬車の上に座りボーっと周りを見ている。
目で見える範囲のほとんどが小麦や野菜、唐黍や米のような一年生作物で埋め尽くされている。
…ん?…米!?
おい前回来たときには米なんてなかったぞ。
いつのまに米文化が根付いたんだ…でもこれでうまい飯が定常的に食える!!!!
飯について考えているといつのまにか馬車は出発していたらしく、道の起伏に合わせて揺れ始めていた。
これは収穫祭の前でも楽しめそうだ。主に腹が。
運動もしっかりしないとな…。
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グランジの街の入り口門に着いたところで大体日が沈みかけくらいの時間になった。
意外とかかったのはなぜかわからない。
門番にギルドカードを見せ、問題ないことを確認してもらい、街へ入る。
農耕、放牧の街といわれるグランジの街だが、人口は約15000人、第一次産業としての生産量はこの大陸の半分を賄えるほど。
作物を作っている範囲は日本の総作付面積の六分の一程度あるらしい。
…ほぼ原初の森の半分だな。
人口と収穫量が釣り合っていないかのように見えるだろう。
だがこの世界ではこれはおかしいことではない。
魔術による植物育成の促進、そして作物の収穫はゴーレムが無休で動いている。
人手がいらなく、術者の魔力が続く限り時間ほぼ無制限で稼動し続けるゴーレムがいるからこその広大な土地から得られる生産量。
あっちの世界じゃ無理だわな。
そんな街なので…
「師匠、全然のどかなイメージじゃないですね」
といわれてしまう程度にかなりしっかりした街並みなのである。
「建物はほとんどがレンガ作りで二階から三階建て。木造の家もあるけどそれはそういうスタイルの店みたいですね」
「歩道もちゃんと舗装されていて歩きやすいです」
「…おいしそうな匂いがする通り」
ウィステリアちゃんはぶれないな…
「まずはギルドに到着報告かな。しばらく世話になるんだろうから顔見せしておこうか」
さっきロタラさんに「収穫祭が終わるまでこの街に逗留します」と言われているが今回の分の費用は想定していなかったそうなので出来るだけ自腹でお願いしたいと。
別に俺は宿代くらいなら全然出せるのだが子供らが手持ちが少ないため、ギルドで数回依頼をこなさないと金がないだろう。
宿を先に…と思ったがそんなに時間もかかるわけじゃないだろうしさくっと行って終わらせてこよう。
フラグじゃないぞ!




