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古竜「レン」

----古竜「レン」


 今俺の目の前には見上げるほどでかい竜がいびきをかいて寝ている。

 何を言ってるかわからねーと思うが…っていうネタをしている場合ではない。


 ロタラさんをはじめ、他の商人たちやモス達深紅の斧のメンバーも酔いつぶれて寝ていることから危険な状態ではないとは思う。


 周りの確認や酔いつぶれた各員の様子を見て状況把握をしていると、テントから子供らが這い出てくる。

 そして目の前の竜を目にするとびっくりして腰を抜かしている。


 まぁそうなるだろうなぁ…。


「師匠、こ、これってどういう状況なんですか…?」

「俺にもわからんよ。起きたらこうだった」


 ルブラが声を震わせながら俺に聞いてきても俺にもわからんて。


「このままみんなが起きるまで周りを警戒して待機だ」

「「「「はい」」」」


 (こいつ)がいるから魔物は近寄ってこないだろうけどな…。

 とりあえず俺は朝食の準備でもしますかね。


 焚き火のところに放置してある鍋を水生成(クリエイトウォーター)で出した水で洗い、さらにそこに水を張る。

 荷馬車から野菜と干し肉を用意し、干し肉の湯戻しを行う。

 干し肉に染み込んだ調味料が鍋の水に溶け出してきたら一度干し肉を取り出し、大まかに刻んだ野菜を鍋にいれ茹でる。

 野菜から出る灰汁を掬い取りながら干し肉もサイコロ状に切り、再度鍋へ投入する。


 鍋が煮立つまで荷馬車から持ってきた卵を使い目玉焼きを人数分焼き上げる。

 当然半熟だ。


 その目玉焼きに塩をちょっとだけかけてパンの間に挟む。

 今回使うパンはコッペパンのようなパンで、一応小麦の白パンだ。


 鍋が煮立つにつれ、あたりにはいい匂いが立ち込め始める。

 そこに持ってきた卵の残りを溶き卵にして鍋に流し込む。


 うん、よい感じだ。


 食べ物の匂いが焚き火跡の周りに充満するにつれ、酔いつぶれてた連中の意識が戻っていく。

 …みんな頭を押さえているが。


 どれだけ飲んだんだか。


 それにあわせていびきをかいていた竜も目を覚ますがまだまどろんでいるようだ。


「そこに竜がいるのに平然としている理由を聞いていいか?」


 頭痛がひどいのであろうしかめっ面をしているモスに聞くとあぁ…といって昨晩のことを話し始めた。


 俺がテントに引っ込んだ後しばらくして小さな女の子がふらふらと近づいてきたそうだ。

 最初は盗賊なんかの囮や罠かと思い警戒をしてたが目の前で倒れてしまい、さすがに放置は出来ないだろうと近寄ったら、空腹で倒れただけという。

 辺りを警戒しても他に人の反応はないということで焚き火にあたらせご飯を分け与えるとやっと元気になったのか、自分の素性を話始めたらしい。

 自分は人化した竜でこの先の山脈に住んでいる。最近山脈に危険な魔物が生まれたのでそれが街や森に行かないように見張っている。そこを通ろうとしている商隊を見つけたから忠告しにきたとのこと。


 皆、酔いが回っていたからか、その場では人化した竜であるという話は信用されず冗談や笑い話となってしまったのに気分を害したのか、突如離れ、人化を解いたらこのサイズの竜だったという。

 だが酔っ払いにはそれも宴会芸のひとつとしか捕らえられず、お嬢ちゃんすごいね!とかもっとやれーとか火ふけーとかいうテンションだったらしい。

 

「あー、するとなにか。この竜は敵ではない、と」

「そうなるな。一応こちらに危険を知らせに来てくれた善意の竜となる」


 うーむ。

 幼女の姿に人化…青い竜…まさかな。


『おまえ、レンか?』


 竜語で目の前の竜に話しかけると急に目を見開いた状態で俺を見る。

 そしてその後、急に俺に対して威圧を放ちながらこちらを威嚇してくる。


『お主、竜語が使えるとは珍しいの。そしてなぜわしの名前を知っている』

『やはりお前か。こんなところに出てきて何やってんだ。街はほっといていいのか?』

『質問に答えておらんな。なぜ竜族の長しか知らんわしの名前を知っているのかと聞いている』

『…わからんのか?ロリババア。吊るすぞ?』


 威圧には威圧で。威嚇には威嚇で返す。


 そう、こいつは竜族の街の長の一人。レン。

 人化した姿が幼女の竜って所で気づけばよかったんだが…ロリババアである。

 長の中でも一番の年長者であるのに姿は一番若い…というか幼竜より幼い姿をとることが多い。


 他の長と呑んでいるときに一緒になって呑み始め、そして絡み酒になり、場で暴れる。

 その都度俺が大木に吊るす。ここまでがいつもの飲み会の風景だった。


『そのロリババアという言い方といい吊るすという発言といい…お主、一二三か?』

『やっと気が付いたかばか者め』


 俺の素性にやっと気づいたレンは威圧をすぐにやめ人化をし、小さな女の子の姿になった後に俺の腹に突撃してきた。


「一二三じゃあああああ。一二三なのじゃあああああああああ」

「そぉい!」


 涙を流しながら俺に抱きつきたかったであろうレンは俺の裏投げでそのまま後ろに投げ飛ばされる。

 ズサーという地面をする音で着地に失敗したであろう事が把握できる。


「なにをするんじゃ!せっかくの久しぶりの熱い抱擁を投げ飛ばすとはまったくもってなっとらん!」

「あ、ババアにサービスする気はないんで」

「なん…だと…見た目は可愛らしい幼女じゃろ!」

「見た目だけじゃなく中身も幼女なら考えた」

「衛兵さんこいつじゃ」

「やめい」


 俺とレンとでこんな感じで言い合いをしていると周りの人らがドン引きしていた…。


----


「というわけでこいつは俺の古い知り合いだ」

「レンと申す。どうぞよしなに」


 俺の隣で幼女形態で両手を揃えてお辞儀をするレンを見て商人たちは自分の娘を思い出したのかほっこりしている。

 だがな…こいつの中身は御年んー千歳だぞ。


「その、レンといったか。昨晩はすまなかった」

「よいよい。我らが人の前に出てくることは普通は少ないからな。若いものは街には結構頻繁に遊びに行っているみたいだが」


 「そうなのか!?」とか驚いているモスを放置して話を先に進める。

 子供らも驚きすぎててフリーズしっぱなしだしな。


「で、このレンが言うには、この先の山脈に危険な魔物が住み着いているそうだ」

「そうじゃ。魔物の名前は猿王(キングエイプ)。配下含めて大体200くらいの群れじゃ」


 そう言い胸を張るレンだが、小さい体に似合わぬ巨乳のためか、洋服のボタンがはじけ飛びそうになっている。

 あぁ、ルブラ。そんなに凝視したら…ほらマヤカちゃんに抓られた。


「それにしてもその猿王(キングエイプ)という魔物は聞いたことがないがどれくらい危険なのだ?」

「そうさね、猿王(キングエイプ)単体でAランク。100体程度の群れならSSランクって所かの。今回は200以上おるからもっと上じゃな」


 SSランクと聞いて深紅の斧及び商人達は身震いをする。

 子供らはすごさがわからないのかポカンとしているが、そうだな。こっちの基準で言えばSSランクってのはソロで成竜を相手にするようなものだな。


「そんなのが巣食ってる今、山から下りてきてしまってよかったのか?」


 商人から当然の質問がされるが「結界を張ってあるから数日なら問題ない」と返すレン。


「…それで。それだけを言いに来たわけじゃなかろ?」


 レンに対して本題を問いかけるとレンはギクッとした顔でこっちに振り返る。


「いや…あの…な?山脈を越える手伝いをしてやる代わりにな…食料となにか珍しいものをよこせ、といった交渉をだな…しにきたのじゃ…」

「食いしん坊かおまえは。なんだ、竜便の真似事でもしてくれるのか?」

「一二三が乗ってくれるのならいくらでも下になるぞよ…」


 そういう意味深な発言はやめれ。

 まぁ山脈超えが楽になるのは助かるが。


「んじゃロタラさん、お言葉に甘えてこいつに山脈越え手伝ってもらいましょうか」


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