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和装と防具

--和装と防具


「そういえば服装変えたんだね。似合ってるよ」


 馬車の上に座ってボーっとしているとふいにリシアから声をかけられた。


「俺の故郷の服なんだ。ただこれに合う防具がなくてなぁ」

「見たことない服だからよほど遠くの故郷なんだろうね。防具とかどういうのをつけるんだい?」

「そうだな、胴を包むようなものを首からぶら下げる感じかな。後は手甲とか脛当てとかくらいか」


 そんな話をしているとロタラさんが「似たようなものならありますよ」と商売人の顔をしだす。


「手甲と脛当て…というより、プレートメイル用のガントレットとブーツ型のグリーブですが、その服でも使えそうな物があります。胴体は弓師が使う胸当てを流用してはいかがでしょう」

「ふむ。後で見せてもらってもいいかい?」

「ぜひぜひ。正直売れ残っているものなのでお安くしますよ」


 売れ残り、と聞くとちょっと引いてしまうが、なんでもフルプレートメイルの胴体破損品らしく手足の分だけを買い取らされたらしい。

 ご愁傷様、といいたいところだったが、それでも俺みたいな買い手が付くんであればよかったのか?


 その後は半日ほど何事もなく、昼の休憩地点まで進めた。

 その間子供らに技術的な事を口頭で教えてたりとかはしたけども。

 一番食いついてきたのはマヤカちゃん。

 魔術の構築理論とか術師の近接戦の話を食いつくように聞いていた。

 ウィステリアちゃんは弓というよりは、付与(エンチャント)の手法についてに興味を持っており、ウォートは身体強化のうまいやり方と回避から攻撃へのうまい繋げ方。

 ルブラは純粋な剣術と武技についてと、それぞれ興味分野が違うが向上心がある質問が多かった。


 向上心高いのはいいことだ。うん。

 おじさんもう向上心なんてものどこかに行っちゃったよ…。


「ヒフミさん、こちらへどうぞ」


 ロタラさんから広場の端のほうに呼ばれると、そこにはさっき話をしていた防具一式が地面にひかれた布の上に置かれていた。

 黒光りしている金属に所々金の刺繍模様が入っているガントレットとグリーブ。

 そして湧き上がっている黒いオーラ…。

 所々に飛び散っている血の跡…。


「ごめんなさい」

「いや、早くないですか」


 いや、だってねぇ。

 これどう見ても呪われた武具でしょう。

 装備すると *ひふみはのろわれてしまった* ってなるだろう、確実に。

 というか血の跡くらい拭こうよ!!!


「えーと、これ呪われた防具ですよね。つけると大事なときに体が動かなくなるとかそういう類の」

「違いますよ。そう見えますけど。血の跡は磨きに出せば取れますが売り物になると考えてなかったので…」

「はあ…この黒いオーラは?」

「オー…ラですか?私には見えませんがそういうのが?」


 まじか。見えないのか。


「まぁ鑑定してみればいいか…解析(アナライズ)


 そこに表示されたのは…ひどいステータスだった。


----

防具:黒鬼の篭手(破損品)

重さ: 片方5kg

特殊:攻撃の際の重さにプラス補正有り。素早さにマイナス補正有り。

自身の魔力量より多い魔術をはじき返す効果有り。

鬼族が装備する際、基本ステータスが倍増。


鬼族の無名の鍛冶屋による最後の品。

黒鉄を混ぜ込み硬度と重量を上げた上で魔法反射の特殊効果を付与(エンチャント)した一品。

ただし魔法回路が壊れているため特殊効果は一切反映されない。

----


----

防具:黒鬼の具足(破損品)

重さ: 片方5kg

特殊:攻撃の際の重さに補正有り。素早さにマイナス補正有り。

鬼族が装備する際、基本ステータスが倍増。


鬼族の無名の鍛冶屋による最後の品。

黒鉄を混ぜ込み硬度と重量を上げた上で魔法反射の特殊効果を付与(エンチャント)した一品。

ただし魔法回路が壊れているため特殊効果は一切反映されない。

----

  

 そもそもがまず破損品というところがまず。

 破損しているからこその黒いオーラか。

 魔力漏れしてるんだな、これ。


 そして鬼族専用装備じゃんかこれ。


 両手両足で計20kgかぁ…。

 さすがにちょっと重いかなぁ。


「いかがですか。物としてはいいものだと思うのですが」


 ロタラさんが伺うように聞いてくるが…これは正直に断ったほうがいいだろうな。

 魔法反射という効果は面白いが、魔法剣士の俺には正直どこから跳ね返せるのかわからないから危ない。

 ルブラみたいな純剣士なら無双できそうだけどルブラにはまだ重たいだろうなぁ、これ。


解析(アナライズ)した結果としては、これは壊れている武具です。さすがにこれは買えません」

「壊れてるんですか、これ。見た目はぜんぜん平気そうに見えるんですが・・・」

「見た目というか防具部分は正常だけど組み込まれている魔力回路が駄目ですね。というか鬼族専用装備ですよ、これ」

「ほうほう。では人族には勧められませんね…」


 さすがに種族専用装備なのを売られてもね。

 申し訳ないがこれはお断りだ。


「他に…となるとこの辺ですかね」


 荷馬車をガチャガチャやって引っ張り出してきたのはいたって普通のガントレットとブーツグリーブ。

 普通に鋼製で一般兵士がつけているようなもの。

 こういうのでいいんだよ…。


「あぁ、こんなので十分ですよ」

「となると胸当てはこちらの革製のやつがいいですかね。金属の胸当てもありますが」


 出してきたのは解析(アナライズ)の結果では赤竜の革の胸当てらしく、火耐性があるらしい。

 うん、それは出物だね。


 一応見せてもらった金属の胸当てのほうが形は好きだったけどね。

 ミスリル銀は魔力との親和性は高いけど、合金にしないと強度がいまいち不安なのだよ。


「では先ほどの手足と、この革の胸当てということでよろしいでしょうか」

「そうですね。それでお願いします」

「ではあわせて金貨3枚です」


 おおう、意外と高かった。

 主に胸当ての値段なんだろうけども。


 そして普通に金貨単位での買い物をしているといつの間にか近くに寄ってきていた子供らから「すげー」とか「金貨だよ、金貨」とか「さすが師匠」とかいう声が聞こえる。

 すごいだろう。お前らもすぐこうなるんだぞ。


 受け取ったガントレットとグリーブを装着し、胸当てを和装の上につける。

 うん、動きづらいとかはなさそうだ。


 体をひねったり飛び跳ねたりしてみても特に問題はなさそう。


 踏み込んで刀を抜いて振る。

 振り返ると同時に逆袈裟で掬い上げ、軸足を中心にくるりと回り袈裟で切り下ろす。


 そんな型をどんどん速度を上げてこなしていく。

 最後には刀が空を切る音も鋭くなっていき、その音が繋がる。


 そして型を一通り流した所で動きをぴたりと止める。


 ふむ。


 ちょっと脇が当たるが許容範囲かな。



 そして…なんか子供らに凝視されている件。

 その後は興奮した子供ら、主にルブラに賞賛されまくってしまった。


 照れるがな…

 褒めても何も出ないんだからね!

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