自警団
--自警団
男爵くんとの一揉めもモヤモヤした感じで終わった市場では観客に徹していた一般人も徐々に消えていき、最後には誰も残らずいつも通りの騒がしい通りに戻った。
「…来ると思うかね」
「まぁ来るでしょうな」
「何か協力出来ることがあったら言ってください」
「…俺のケツが」
「おまえはそればっかりだな」
一部おかしいがもう一蓮托生の雰囲気になった俺らはそれぞれ連絡先を教えあい解散する。
その後は気分転換に再度露天巡りを続きいくつか面白い道具を見つけたのでだいぶ値切って買った。
店主は涙目だったけどしょうがないよね。
全ては男爵くんが悪いということにしておこう。
屋台で肉をピタみたいなものに包んだものを買い、食べながら歩き職人街へと向かう。
そろそろ時間もいい頃合いだろうしね。
武器屋に着くとエンバーは他の客の接客をしているようだった。
結構大きい店だからな。客もひっきりなしなんだろう。
あ、あの黒剣持たせてるな。
…やっぱり潰れた。
しっかしあの黒剣、鑑定も効かないとか一体何なんだろうな。
「お、ヒフミか。出来てるぞ。こっち来い」
奥から出てきた職人のおっさんが俺に手招きする。
「そういやおっさん、名前は?」
「おっさん言うな。アロイデスという」
「了解。さっそく見せてくれ」
アロイデスと名乗ったおっさんはカウンターの下から黒樫の様な艶のある鞘にしまわれた刀を出してきた。
「これだ」
刀を受け取り鍔切りをして鞘から抜く。
シャリンといい音をして黒い刀身が姿を現す。
あれから更に研がれたのかミスリル地が出ている波紋は輝きを増して青く光っている。
柄に巻いてあるのはたぶん飛竜の皮に黒真珠蜘蛛の糸かな。
ほう…と見とれていると店にいた他の客も刀に見とれていた。
気持ちはわかるがこれは俺のですぜ。
店の中の広い所で数回振り感触を確認する。
うん、しっくりくる。
柄なんかは俺の手に合わせて作ってるんだからあたりまえっちゃ当たり前なんだけどね。
この刀身の長さと重さが前使っていた刀と似ているおかげで違和感無く使えそう。
「いい出来だ、おっちゃん」
「おっちゃんいうな。これがおまけの腰ベルトだ。そこのフックにぶら下げられるようになっている」
「ありがたい。このままベルトに刺さなきゃいけないと思ってた所だった」
ベルトの位置に腰ベルトを装着し、左腰の所についている金具に刀の鞘についている輪環を通す。
それにより自然にぶら下がる状態が出来上がる。
重量バランスだけできちんと斜めになってくれるところがうれしい。
足短いから90cmとかが真っ直ぐになっちゃったら地面引きずっちゃうしな!
「んじゃありがとうなー。これ代金だ」
カウンターの上に金貨を5枚出し会計をする。
店を出るときにカウンターの方から「俺にもあれと同じのが欲しい!」と叫んでいる客の声が聞こえた。
扱いが難しいから頑張れよー?
その後はギルドに顔を出し、子供らの様子を見に行く。
受付のシェリスは忙しそうなので一人で訓練場まで移動する。
まだ訓練は続いている様で今は実戦形式の訓練のようだ。
ふむ。前より動きはよくなってるな。
後は連携がこなれてくればパーティランクCランクくらいまでは一気に駆け上がりそうだ。
訓練にはもう少し時間がかかりそうなので受付前の食堂に移動し、軽く摘まむ揚げ物とアルコールを頼む。
エールは味が苦手なので蒸留酒の水割り。
空いているテーブルに座り周りの冒険者達を観察しながら時間を潰していると、入り口からゾロゾロと数人の男達が入ってきた。
食堂の中心あたりまできた所で周りを見回した後で、なぜか俺の方に歩いてくる。
座っている俺の周りに囲むように立ち、俺を見下ろす。
まぁ怖い。
「何かようで?」
「キリスという男爵を知っているかね?」
「あぁ、知っていますよ?」
「そのキリス氏から苦情が出ているのだが、話を聞かせて貰ってもいいだろうか」
「あーはいはい。まぁどうぞ空いている席におかけになってください」
「では失礼する」
リーダー格の男が椅子に座るがその他の面子は位置を変わらず俺を囲むように立っている。
なんだこの圧迫感。
ガチムチに囲まれてもうれしくない…。
「リランダールの自警団の隊長をしているクィルという。協力感謝する」
「いえいえ。で、あの豚くんはなんて言ってるので?」
豚くんといった所で後ろから吹き出したのが聞こえる。
うん、笑うなら我慢しなくていいよ?
「…まず確認だが今回揉めたのはそちらがキリス氏の金銭を奪い取ったという話だがそれはあっているか」
「賭場で買った負けたの話はありましたが奪うっていう言い方は心外ですね」
「なるほど。やはりカジノでの話か。では市場での揉め事の原因は?」
「いちゃもんをつけられたので言い返してただけですよ」
なにやら資料を見ながら俺に質問をしてくるがそれに対して答えるとその都度確認のために付き添いで来ていた人が一人ずつ確認のために外に出て行く。
「ふむ…やはり言っていた事とはまるっきり違うな。これはちゃんと調査が必要か」
「あの貴族じゃそんなもんじゃないですかね。完全に平民を見下すタイプっぽかったし」
「まぁそういうな」
今テーブルには俺とクィルの二人だけになっている。
周りの人間はもう全員外に出ていったので誰もいない。
クィルも店員に飲み物を注文しているところを見るとまだ何か話があるのだろう。
「さてぶっちゃけた話を聞くが君はこれから報復などを考えているか?」
「やられたらやり返す。くらいの事は考えているがそれ以上は今のところ考えていない」
「そうしてくれると助かる。あんなのでも王国貴族だからな。めんどくさいんだよ」
口調が砕けてきたクィルからため息と共にそういう言葉が出てくる。
相当こういう件で苦労してるんだろうな。
禿げなきゃいいが。
「心中お察しする」
「自警団なんてやってるとこんなことばっかりだよ」
クィルは店員が持ってきたエールを一気にあおると「では話は以上だ。ありがとう」といい席を立った。
「まったく自警団というのも大変そうだよな…」
そんなことを思いながらつまみで出てきていた冷めたフライを口にいれ呟いた。
この話を投稿する段階で108ptになっていました!
ブクマも30件、PVもコンスタントに700pvは行くようになっています。
評価いただいた方ほんとうにありがとうございます。




