カジノの顔役
--カジノの顔役
「お客さんちょっと待ってくんねぇか」
稼ぐだけ稼いだのでとっとと退散しようと入り口に向かおうとした時に強面の黒服を来た男に声をかけられた。
あーあ、来ちゃったか。
「なんだい?」
「随分と荒稼ぎをしたようだがちょっと裏で話せないか?イカサマをしてた疑いが出ているので少し話をしたい」
「ほう?」
魔物闘技場での証拠隠滅はしてあるし、カードやスロットでは目立たない程度に勝ち負けを繰り返していたはず。
となると、これはいちゃもんか。
「おーけい。ただ疑いをかけたんだ。何もなかったときはそれなりの償いをしてもらうぞ」
「わかっている。こっちだ」
黒服に連れられて裏にある小部屋に通される。
部屋は応接室のようなこ綺麗な部屋。
お茶、とまでは行かないがよく冷えた水が差し出される。
自白剤入りのが。
黒服が「待っていてくれ」と部屋を出て行ったところで小声で『浄化』を使い変な成分を無効化し、口をつける。
うん、よく冷えててうまい。
そのままボーっとした状態で待っていると5分ほどでさっきの黒服ともう一人が部屋に入ってきて俺の対面に座った。
「お初にお目にかかる。当カジノのオーナーをしているレンダーだ。このあたりの賭博屋の顔役も受けている」
「一二三という」
レンダーが俺の名前を聞いた時点でほう…と手をあごにあて何かを考えるようなしぐさを取る。
「こいつから話を聞いていると思うが、君にイカサマの疑いがかかっている。提議主はとある貴族だ」
あぁ、そういう流れか。
「ふむ。貴族が負けた分を俺から取り戻そうとかそう企んでいる感じなのか?」
「まぁぶっちゃけるとそうなるな」
レンダーはやれやれといったジェスチャーで手を両手に上げる。
「うちらとしても貴族相手に事を荒立てたくない。と思っていたが…暴虐といわれる君を相手にするほうが大変だ」
「おや、ご存知で?」
「黒髪黒目の一二三という名。それだけでも酷似している所に先ほどギルドで起こした騒ぎもすでに耳に入っている」
背もたれによりかかり足を組む。
普通であれば不遜な態度なのだろうがこういうところで弱気を見せたらやり込められるだろう。
「耳が早いな」
「この業界情報が命だからな」
そりゃそうだわな。
というかどこの業界でも情報は命だろう。
「ふむ。で、この話はどうすると?」
「調べた結果イカサマはなかったと貴族には報告する。実際していないのだろう?」
「してたらカジノつぶす勢いで掻っ攫っていくわ」
だよな。と笑う。
「俺らからの話は以上だ。時間を取らせてしまってすまない。これは詫びとして取っておいてくれ」
「おう」
そういってテーブルの上に出されたのは布の上に置かれた金貨2枚。
俺がカジノで稼いだよりは少ないが金はあるにこしたことはない。
布で金貨を包み懐に入れたフリをして玩具箱にしまう。
「じゃあこれで解放してもらえるのかな?」
「あぁ。あと忠告だが、その貴族からの八つ当たり的なものが行くかもしれない。それまでは俺らの方ではどうしようもないから注意してくれ」
「あぁ、わかった。『まかせとけ』」
黒い笑みでかえしてやる。
黒服に引き連れられて部屋を出た後、そのまま入り口まで同行される。
同行というより連行だよな、これ。
「では。手間を取らせた」
「おう、問題ない」
後ろ手を振ってカジノを去り、宿屋が連なるエリアまで移動をする。
…あぶねかったぁ。
あれ絶対イカサマしてるのばれてたな。
どうやって、まではわからないが。
俺の二つ名でギリギリ回避出来たと思えばこの二つ名も実は使い道があるのかもしれないな。
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宿屋街の入り口のあたりで子供らの分と合わせて部屋を取る。
俺の分、子供らは男女で一部屋ずつ。
とりあえず二日分を取り、朝食夕食をつけておく。
それでトータルで銀貨5枚。
もうちょっと安いところもあるんだけどな…
宿屋外の奥の方なんだよ。
そして色街のそば。
そうなるとな。やはり子供には悪影響なわけだ。
…俺だけそっちでもいいんだがな。
なんとなく後をつけてきているっぽいのが二人ほどいるからなぁ。
さすがに今日は色街にはいけないわな。
とりあえずこいつらどうにかするか。
たしかこっちだったはず…と思いながら宿屋街から商店街を通り、職人街を抜け街の外壁そばにあるちょっと暗めの広場に向かう。
昔の記憶にある広場からだいぶ変わっていて木々が生い茂りよりいっそう薄暗くなっていた。
「さて、追跡者の諸君。何か用があるなら出てきたらどうかね?」
振り向きもせずにそこそこ大きな声で呼びかける。
…
…
聞こえるのは風が流れる音だけ。
…えーと?
出てきてもらえないと恥ずかしいんですけども?
ほら、そこの家の角に隠れている人。
あとそこの木の上の方の枝に乗って隠れている人。
出てきてよ…
出てこないから…こっちから行っちゃうよ?
自然体からの地面がめり込むほどの力をこめた踏み出しによる瞬歩を使いまずは家の影に隠れている人の後ろに立ち首根っこを掴む。
そのまま広場の中央まで移動し、もう一人も同じように木の上から引き摺り下ろす。
広場の中央には暗殺者っぽい服装の二人が何が起こったのかわかっていない表情で座り込んでいる。
「さて、諸君」
二人の前に腕を組んだ状態で仁王立ちし見下ろす。
あ、当然二人の周囲には氷槍配置済みです。逃げられないようにね。
「誰の指示で何をしようとしていたのか。素直に吐いてくれるとおにーさん嬉しいなぁ」
きっとこの時の俺の顔は歴代3位以内に入るくらい黒い笑みだったと思う。
自分でもわかるくらいだからきっとこの二人にはそれ以上に凶悪に見えたかもしれない。
二人とも硬直しちゃった。てへ。
「正直にしゃべってくれた先着一名さまだけ命を助け「指示したのは男爵位のキリスだ。」「指示されたのは殺害及び所持している金銭の強奪だ」…ようか」
せんせー、二人同着の場合はどうしたら。
なんにせよ男爵位なわけね。キリスっていうのか。ふむふむ。
「その男爵はいつまでこの街にいるんだ?」
「俺らはそこまでは知らない。金貨を渡されて黒髪黒目の男をつぶして金を奪い返して来いとしか言われていない」
「そうだ。奪い返してきたうちの2割を俺らが貰えるという話だったから乗っただけだ」
あのさぁ…
「おまえら、それ本気で信じてるの?持ってったら持ってったで殺されてたぞ。よくても罪人扱いで奴隷にさせられた後に鉱山強制連行コースだわ」
「それくらいはわかってる。俺らもそこそこ腕に自身はあるからそうなったら逃げる気ではいた」
「その前に攻撃する間もなく失敗するとかほんとなんなんだよ、おまえ…」
人ですよ?
「まぁその辺はどうでもいいや。じゃあ俺はその男爵に仕返ししてくるからお前らはどっかいけ」
「…いいのか?」
「自分で言うのもなんだが俺らはお前を殺そうとしたんだぞ?」
「実際出来てたのは後をつけてただけじゃん。悪意をもった一般人と一緒だわ」
向こうじゃ包丁持ってはぁはぁしてただけで殺人未遂とか罪状がつくんだろうけどな。
「ま、気が変わらないうちに行け。出来ればこの町からは出て行くことをお勧めする」
「…わかった。恩に着る」
「…すまない。故郷の嫁さんと子供に今度こそ孝行するんだ」
「おい、まて。それはフラグだ」
危ない発言をするんじゃない。
さ・て・とー。
男爵さまー?
待ってるんだよ?くす




