現在の冒険者のレベル
--現在の冒険者のレベル
ギルドでの揉め事という些細なことの後は子供達と共に街を散策することにしようとしたが、1時間ほどで講師が、と言っていたので外に出るのは得策じゃないと思い直す。
ギルドの二階には書庫があるらしいので子供らを連れてそこに行く。
子供らには王都周辺の魔物の情報を調べることを課題とし、各自散開させる。
俺は、というと。
書庫内の椅子に座り手に取っていた一冊の本に目を向ける。
「暴虐」
それがこの本のタイトル。
シェリスが言うにはこれが俺についての『英雄譚』らしい。
タイトルだけじゃ絶対に英雄譚とは思えない代物。
本の中は俺がギルド登録したときから突然消えるまでが書かれていた。
唐突に現れ唐突に消える。
その者、暴虐の限りを尽くす。
悪意には悪意を。善意には善意を返すところから根っからの悪人ではないことがわかる。
竜への貢物を強要されていた寂れた村の竜討伐。
枯れかけていた世界樹への治療法の確立。
軍事国家の世界征服戦争への物理介入。
そんなこともあったなぁ。と遠い目をする。
そんな規模のでかいものから、街で迷子になっていた女の子の親を一緒になって一生懸命探した。とか路地裏で強盗をしていた者を理不尽な力でつぶした、とか。
とある王族の態度が傲慢だったから物理的なお話で性格矯正をした、とか。魔方陣学の権威との話し合いで論破して新たなる理論を構築した、とか。
…こんなことあったっけ?
「ヒフミさん、さっきの受付さんが呼んでいますよ」
本を読みながら考え事をしていると、ルブラが声をかけてきた。
ん?もう準備が出来たのかな?
「ぼうg…ヒフミ様。お待たせいたしました。 地下闘技場でマスターと講師の方がお待ちです」
「おい暴虐って言おうとしたろう。まぁいい。おーい、おまえらー。行くぞー」
書庫内に聞こえる程度の音量で声をかけると即座に子供らが集まる。
・・・なんかこの子らビビッてないか。
いや、なんで俺の前に整列するの。
もっとほら、こう最初のようにね。
「では参りましょうか」
階段を下りるシェリスを先頭にそのまま地下まで下りていく一行。
シェリス、子供ら、俺。の順番。
「ここが当ギルドの訓練所です。他の方々も使用されていますので『くれぐれも』他の方の迷惑にならないようにしてください」
「フリですか?」
「違いますっ!!!」
うん、なんかからかうと面白い反応をする子だな。
子供らはシェリスに連れられてマスターの隣に立っている男のところに行ってしまう。
その後は数分話をしていたが、前衛組は武器を構え素振りを、後衛組は瞑想を始めていた。
ふむ。
教え方はまともかな。
これなら安心できそうだ。
「ヒフミ様もどなたかへの教練でもしますか?」
「えー、めんどくさいです」
隣に立ったシェリスが唐突にわけのわからない提案をしてきたが即時断る。
だってさぁ…
周りで組み手とか模擬戦してるやつらってレベル低いんだよ。
「あそこで一々ポーズを決めながら剣を使ってる方がBランクで、あっちで高笑いをしながら弓を使っている方がCランクです。あそこで変な体勢で瞑想をしている方がBランクですね。あっちで模擬戦をしている方たちはまだEランクでしたか」
シェリスが指を刺しながらそれぞれの人のランクを教えていくけど正直そんなに興味がない。
興味が沸いたのは、このBランクやCランクのレベルの低さ。
変人ばっかりなのは気にしない。気にしないったら。
俺の全盛期のときのBランクなら先日の村で卸した熊くらいならソロで狩れるレベルのはず。
それが今ここで訓練をしているやつらはボアですら危ないかもしれない。
「…これが今のギルドの実情なのですよ」
シェリスが呟く様に言葉を出す。
「あそこのBランクやCランクの方々のほとんどが『お金でランクを買った方』です」
その言葉についシェリスに目線を向けてしまう。
「本来ギルドとは権力に屈する場所ではありません…ただ最近の貴族のごり押しがひどくて断りきれていない状態なのです」
「ふむ。でもそれだと本部からの通告とかもあるだろうし、昇格試験なんかクリアすら出来ないだろう」
「そうですね。個人での模擬戦などの場合はクリアできずにランク残留となることが多いです。団体で受けられる試験になるまで我慢して、高ランク冒険者でも雇うつもりなんでしょうね」
「最低だな、そいつら」
もうなんというか、二人してため息をついているのはしょうがないことだろう。
「ヒフミさんどうにかしてくれません?」
「え、やだよ」
「そうですかぁ・・・」
しょんぼりしているシェリスの頭をなでつつ爆弾発言をしてみる。
「つか…いいのか?『どうにかして』も」
「え、いや、駄目!駄目です!!」
首をブンブンと振り否定されました。
解せぬ。




