暴虐理不尽
なんか眠れなかったので書いてみました。
--暴虐理不尽
「あなたが暴虐理不尽なのですか…」
「その二つ名は好きじゃないんだが」
英雄譚とかになっているらしいのに暴虐理不尽って二つ名なのはどういうことよ。
目の前で鑑定結果を手に持ちわなわなと震えているシェリスがこちらに目を合わせてくれない。
別に暴虐でも理不尽でもなかったつもりなんだけどなぁ…
ほら、周りの警備兵もビックリしてお互い顔を見合ってるじゃないか。
その後ろで飲んで騒いでいた冒険者達も何事かとこっちをじっと見ている。
そんなに注目せんといて。
「で、再発行は出来るのかな?」
「は、はい!ですが前回の依頼完了から5年経過していますので依然と同じランクは使用出来ませんっ!」
「ふむ、ならまたFランクからということでいいのかな?」
「申し訳ありませんが…」
なるほど。
まぁまたFからランクは地味に上げていけばいいか。
今度はそんなにランクに固執しないでもいいだろうしね。
「特例試験でも受けますかな?」
どうするかなぁと考えてた所で、さっき受付前にいたおじさまがニコニコした顔でこっちに近づいてきた。
「いえ、いりません」
だいたいこういうのは誰もクリアしていない高難易度の依頼をやらせられたりAランクあたりと立ち会いしろとかなるんだろうしな。
「ほう、ではFランクから再会すると」
「えぇ。面倒ごとはごめんですから」
俺の言葉を聞いて苦笑しているおじさまは絶対お約束的な事を考えていたはずだ。
「じゃあさっさと再発行してくれ。こっちもまだ用事があるんだ」
「しょ、少々お待ちください」
シェリスさんや。そんなにビクビクしないでくれ。
「おうマスター。こいつなんかやったのか?」
唐突に声をかけてきたのは大剣を担いだ偉丈夫。
ほら来ちゃった…
こういうお約束はいらないんだよ…
っつかこのおじさまマスターだったのか。
まぁ関わることないだろうから別にどうでもいいけど。
「いえいえ、心配なさることは無いですよ。ありがとうございます」
マスターのおじさまがやんわりと、何事も無いということを言っているが偉丈夫のおっさんはさっきから俺にガンをつけている。
それを生暖かい目で見ていると偉丈夫のおっさんが急にキレてこっちに絡んできた。
「てめぇ、その目はなんだ!喧嘩売ってんだな?よし買うぞ」
「はぁ」
言いがかりに近い難癖をつけてこられてもねぇ。
子供達が見てるじゃないか。大人な所を見せなさいよ。
「ギルド内での喧嘩は御法度だ。表へ出やがれ」
「はいはい」
その言葉を承諾と取ったのか偉丈夫のおっさんはドスドスと歩いてギルドの外に出て行ってしまった。
「で、再発行は時間かかる?」
「あと10分ほどかかると思います」
「りょーかい。じゃあ出来たら呼んでね」
そう言うと子供達が座っているテーブルに向かい椅子に座る。
「こっちはもう少しかかるそうだ。君らの食事が終わったら訓練のこと聞いてみようか」
「は、はい。でもさっきのおじさんすごい怒鳴ってましたけど大丈夫だったんですか?」
ルブラくん。
大人の世界はいろいろあるんだよ。
「あ、それ美味しそうだな。一個貰っていいかい?」
「は、はい。どうぞ」
チキンナゲットみたいなものを見つけたので一個手づかみで貰う。
うん、うまい。
そんな感じでつまみ食いをしてテーブルの上に残っていた食事を平らげた所でちょうど再発行が終わったようで呼ばれた。
「ではこちらが再発行した冒険者証となります」
「はいどーも。あ、そんで子供らに戦闘訓練させたいって話をさっきあのおじさまに言ったんだけどどうなってる?」
「1時間程いただきたいとのことでした。Aランクの元冒険者で素行のいい方にお願いしているそうです」
「りょーかい。よろしくね」
といったシェリスとの会話をしていたところで入り口の扉がものすごい音を出して開いた。
「てめぇぇぇぇ!!!いつになったら来るんだあああああああああああ!!」
再度こっちにドスドスと足音を立てて歩いてくるおっさんの右手には抜き身の大剣がぶら下げられている。
「(氷槍)え、行くって言ってないけど?」
小声で魔術を発動させ、瞬時に氷槍を具現化する。
目標はおっさんの頭部の周囲。
数は三十。
急に目の前どころか自分を包囲するように氷の槍が宙に浮いた状態で静止しているのを見て武器を振り上げようとしていたおっさんは急に立ち止まる。
「て、てめぇ…」
「もう一度いいます。『行くとは言ってません』よ?」
シェリスさん。カウンターの裏で「やはり理不尽ですよ…」とか言わないでください。
降りかかる火の粉を払っただけですよ。
「だいたいギルドマスターが『何でも無い』と言ったのにそれを無視して俺に喧嘩をふっかけてきたのはそちらでしょう。上司の命令が聞けない部下はいりませんよね?」
おっさんの周りに浮かせている氷槍はそれぞれから冷気を噴き出し刺々しくなっていく。
「第一相手の実力もわからないで争いを仕掛けるなんてあなたランクはいくつですか。そんなんじゃ早かれ遅かれすぐ死にますよ」
酒場としても営業しているギルドのはずなのに今や静寂に包まれている。
それでもまだおっさんは目つきを鋭くしたままこちらを睨んでいる。
「一応問います。『やりますか?』」
威圧を解放し、おっさんだけに向ける。
その瞬間ビクンと体を硬直させ急に冷や汗を出し震え始める。
こうなるの目に見えてたからイヤなんだけどなぁ…
おっさんは唇まで紫にして震えてる。
「…嘩を…ってきたのは………じゃ……か…」
「返事をせんかああああああああああああああ!!!!!」
「すいませんでしたあああああああああああ」
いい加減イライラしたので怒鳴り声をあげるとその場にいた全員までもがビックリしたのか何人かが腰を抜かしたように座り込む。
おっさんまでもが腰を抜かしたのかその場で座り込んでしまう。
「ったく、ちゃんと教育が行き届いていないんじゃないか?」
これまでのやりとりを表情も変えずに見ていたギルドマスターに向かって言うも「そうですねぇ」といって躱される。
腰を抜かし失禁までかましたおっさんはそのまま仲間らしき人らにギルドの外に連れて行かれたからもういいや。
「なんか疲れた。一時間後にまた来るからそれまでに子供らの講師を用意しておいてください」
「承知いたしました」
ギルドマスターは腕をお腹の前にやり礼をする。執事のように。
子供らでも連れて街散策でもしますか。
ギルドを出るときに「あれが暴虐か…」とか「やっぱ理不尽だわ、あの攻撃」とか「五年たっても変わってねぇ」とか聞こえないったら聞こえない。
***:来たかっ(ガタッ
###:まだだ座れ
***:(´・ω・`)
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